特集 2011年10月3日

もっとベジタブルなミックスベジタブル

本気で「ベジタブル」のミックスベジタブルを模索します
本気で「ベジタブル」のミックスベジタブルを模索します
ミックスベジタブルという商品がある。ニンジン、グリーンピース、トウモロコシが混ざったあれだ。料理にオレンジ色、緑色、黄色の3食を見れば、ああミックスベジタブルだなと思う。食べ物としてその組み合わせは定着している。

けれど、ちょっと疑問には思わないかい。

確かにニンジンもグリーンピースもトウモロコシもベジタブル、野菜だ。でも、グリーンピースやトウモロコシは考えようによっては野菜というよりも主食、穀物っぽくないか。

「ミックスベジタブル」。直訳で「混合野菜」である。「混合野菜」といって野菜の代表選手のような顔をし断りもなく堂々と2品が穀物というのはどうかと常々思っていたのだ。
東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

前の記事:粉々の甘いお菓子を食べながら(古賀及子総集編)

> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

野菜やさいしたミックスベジタブルを作る

というわけで、今回は「それって穀物じゃないの?」なんて文句を誰にも言わせない、ガチンコで野菜! 誰が見ても野菜! というミックスベジタブルをつくりたい。
おなじみミックスベジタブルはこれですな
おなじみミックスベジタブルはこれですな
昭和っぽい食材で、ヘタすると入れることで料理が安っぽくなる危険のあるわけだが、買いに行ったら売り切れで脈々と続く人気を思い知った
昭和っぽい食材で、ヘタすると入れることで料理が安っぽくなる危険のあるわけだが、買いに行ったら売り切れで脈々と続く人気を思い知った

そもそも「野菜」とは

はじめる前に、まず そもそも豆やトウモロコシは野菜なのか? それを確認したい。これで「野菜じゃないっす」となったら、ミックスベジタブルの歴史とその根幹をゆるがす一大事だぞ。

調べてみたらこれが結構にややこしいことになっていた。

wikipediaによると 「穀物(トウモロコシ含む)、いも、豆は野菜に含めないことが多い」(!)。が、「それを主食としない文化圏では野菜として扱われることがある」、というのだ。

日本ではグリーンピースもトウモロコシも主食ではないので、両者ともに「野菜」として扱われているというわけである。

あ、やっぱ野菜なんだ。

(逆に外国でよくお米がサラダに入っているらしいが、あれは彼の地でお米が野菜とされているからなのですね。)

ん? ということは、ミックスベジタブルを見て豆とトウモロコシについて「これは野菜というより穀物なんじゃないの?」と感じた私の野生は外国の感覚だったということか。

オー! ワタシニ ソンナ ソヨウガ アタのデスね~。
とはいえ、日本人だってイモばかり食べて「野菜食べたー!」という充実感は感じないと思う
とはいえ、日本人だってイモばかり食べて「野菜食べたー!」という充実感は感じないと思う
やっぱり豆、いも、穀類は「ザ・野菜」とはちょっと違うと思うのだ
やっぱり豆、いも、穀類は「ザ・野菜」とはちょっと違うと思うのだ
というわけで、やはり真のミックスベジタブルを追求するため、今日はひとつグリーンピースとトウモロコシには心静かにご退場いただこう。

スイカは野菜か果物か論争

寄り道になってしまうが、野菜の定義で思い出したのが「スイカ論争」だ。

小学校くらいのころ、スイカ(メロンやイチゴでもいい)は果物ではなく野菜だという主張と、いや果物だという主張が給食の時間教室でぶつかり合い、ちょっとした揉め事になることがあった。

同じような覚えがある方はスッと手を挙げて欲しい。おお、たくさんの挙手ありがとうございます。そのまま静かに下ろしてください。

あれは結局どういうことだったんだろう。
これが野菜ってどういうことだ
これが野菜ってどういうことだ
調べると、学問、生産、統計、法律、流通などそれぞれの分野で野菜と果物の定義はいろいろあるらしい。

そんななかで植物として、一年生の草木類で育成されるものを「野菜」、木本類(1年じゃ枯れない木ってことでいいと思う)で作られるものを「果物」と分類するそうだ。

この分類でいくと、スイカもメロンもイチゴも「野菜」というわけなのだ。
スイカ、メロン、イチゴ、植物としてはベジタブル
スイカ、メロン、イチゴ、植物としてはベジタブル
ということは、これも立派なミックスベジタブルということだ
ということは、これも立派なミックスベジタブルということだ
クラスでこの「スイカ論争」が起きたときは、人並みはずれて大人な風貌をし皆に「村長」と呼ばれていた清水くんの「甘けりゃ果物でいいんじゃない?」 の一言で騒ぎは静まった。

確かに、生きていくうえでは甘くてデザートとして食べるのだったら果物、ということでいいと思う。

のだが。
ん? なんか野菜っぽいぞ
ん? なんか野菜っぽいぞ
たわむれで作ってみたスイカ、メロン、イチゴの理屈上のミックスベジタブルが、食べてみるとどこか野菜っぽかったのだ。

メロンの独特の青くささとイチゴの酸味に全体の甘さが負けて、これは理屈ぬきでも野菜なのかもと思わせる味だった。

メロン、スイカ、イチゴの野菜性がミックスすることでゆるやかに浮かび上がったのだった。

クラスの論争に俄然油が注がれる形だ。この発見が大人になった今でよかった。
あわててヨーグルトがけアイスに乗せて食べたら、そうだよ、やっぱり君らは果物なんだよ
あわててヨーグルトがけアイスに乗せて食べたら、そうだよ、やっぱり君らは果物なんだよ

直感で野菜を感じるミックスベジタブルを!

寄り道が長くなった。今日の本丸はもっと分かりやすく野菜を感じるミックスベジタブル作りなのだった。

スイカ、メロン、イチゴのミックスベジタブルが理屈のミックスベジタブル なのであれば、直感、直球でで野菜! というこれぞベジタブルなミックスベジタブルを作りたい。

ミックスベジタブルの特徴である色使いを残しつつ、いかにも野菜らしい野菜を使って作れるだろうか。

と思って黄色やオレンジ色の野菜を探すのだが、これが結構ない。
あ、あった!
あ、あった!
ミックスベジタブル、できました
ミックスベジタブル、できました
できました
できました

ミックスピーマンだ

オレンジ要員としてカボチャはどうかと思ったものの、食べられるようの火を通すと崩れてしまいそう。黄色は黄色ズッキーニを探したが近所のスーパーにはない。

行き着いたところはオールピーマンのピーマン好きにはたまらないミックスベジタブルだった。いや、これじゃあミックスベジタブルじゃなくてミックスピーマンだ。
おさらい、こちらが本家ミックスベジタブル
おさらい、こちらが本家ミックスベジタブル
なにしろ製作会場(うちの台所)が青くさい。これが野菜の底力なのだと思い知らされているようで、どっちみち全身で野菜を感じることはできた。
ポテトサラダに入れたが、味はピーマンの主張がえらいことに
ポテトサラダに入れたが、味はピーマンの主張がえらいことに
さらに赤ピーマンも入れてたら色とりどりすぎて落ち着かない。食材の色とりどりは3色が限界なのかもしれない
さらに赤ピーマンも入れてたら色とりどりすぎて落ち着かない。食材の色とりどりは3色が限界なのかもしれない

和のミックスベジタブル

色にとらわれていては素材が難しい。色へのこだわりは捨ててコンセプチュアルなミックスベジタブルはどうだろう。

ミックスベジタブルは、混ぜたり添えたりすることで料理をむりやり洋食にする力がある。では、逆に和のイメージになるミックスベジタブルなんていいんじゃないか。

ごぼう、れんこんあたりで作れないだろうか。
にんじん、れんこん、ごぼうのミックスベジタブル
にんじん、れんこん、ごぼうのミックスベジタブル
和の素材、と思っていたら自然と根菜祭りになってしまった。和、というよりもただただ渋い。根菜、おそるべし。

そして根菜の渋さに恐れおののきながらハッとした。

これは……。まんま筑前煮の材料ではないか!
すみやかにこんにゃくと鶏肉を入れて煮た
すみやかにこんにゃくと鶏肉を入れて煮た
和風のミックスベジタブルを作ろうとすると、その延長線上に見えてくるものは煮物。

なるほど、納得のいく結果だ。ただ、小さな角切り野菜(とこんにゃく)で作った筑前煮はお箸では食べづらかったのだった。
そして筑前煮丼になった
そして筑前煮丼になった

指定野菜14品というのがあるそうな

野菜を求めているはずが、作ったものは今のところミックスフルーツにミックスピーマンに筑前煮材料セットか。どうしたもんか。

もう、数も3品にとらわれずじゃんじゃん増やしたらいいんじゃないか。パッケージにこまごまたくさんの野菜が描かれている野菜ジュースのように。

そこで、「指定野菜14品」というものがあることを知った。
野菜界の一軍選手たちといったところか
野菜界の一軍選手たちといったところか
農林水産省で定める国民の消費生活に影響する野菜たちで、生産と出荷について特に安定がはかられている野菜だそうだ。

選ばれし14の野菜は大根、にんじん、白菜、キャベツ、ほうれん草、ねぎ、レタス、きゅうり、ナス、トマト、ピーマン、じゃがいも、さといも、玉ねぎ。

カボチャを押さえての白菜のエントリーなど意外な部分もあるが、なるほどおなじみかつ野菜らしい野菜ばかりが並ぶ。これはおあつらえ向きだぞ。

ありがとう、農林水産省!
霞ヶ関的にも文句なしのミックスベジタブルですよ
霞ヶ関的にも文句なしのミックスベジタブルですよ

餃子を作っている気持ちになる

素材の野菜が決まればあとは黙ってもくもくと野菜を刻むだけなのだが、ミックスベジタブルを作っているのに気持ちがどんどん餃子に持っていかれるのが困った。

野菜を切って混ぜるというそれだけの行為がやけに餃子作りを思わせるのだ。

我が家では餃子を作るときくらいしか使わないかねのボウルが登場したのも要因かもしれないが、混ぜ進めるうちに、ボウル内部はいよいよ餃子作りっぽくなってきた。どうしよう。
もう今日はこのまま餃子を作ろうかと思った瞬間
もう今日はこのまま餃子を作ろうかと思った瞬間

「餃子の具」が、「野菜」になっていく!

ほうれん草、白菜、キャベツ、レタス、さといもまでは完全に餃子路線だったミックスベジタブル作戦。実際これをタネにしてあとで餃子を作ろうか、とも思った。

でも大丈夫。中にニンジンやナスが加わり始めたあたりでボウル内の様子が変わってきたのだ。

野菜だ。これは野菜だぞ。

ひとつひとつの食材というよりも全体が雰囲気で野菜を主張しはじめたのだ。

そこに現れたのは、もうどうしようもなく「野菜」だった。
野菜
野菜

概念としての野菜の具現化

お気づきかと思うが14品の中にはさといもとじゃがいも、2種類のイモが入っている。これが3種のミックスベジタブルだったら「あなたは野菜というより芋類じゃなくって?」とつまはじきにしていたメンバーだ。

それが14品の中でイモとしての穀物力は完全になりをひそめた。ただ静かにそしてし力強く野菜の一部になっている。

イモの協力もあり、「ひとくちに野菜といってもいろいですけん」という個々の性格がひとくくりになった。

これは何かと聞かれたら、胸を張って「野菜です」と言おう。概念としての野菜が今、目の前にあらわれた。

野菜嫌いの子どもなら5秒で泣き出す、これぞハードコア野菜。気持ちも荒ぶり、泣いた子どもは放っておく気概である。
そのままだとボロボロして異様に食べづらいので卵でまとめた
そのままだとボロボロして異様に食べづらいので卵でまとめた

味もきわめて野菜的である

そのたたずまいだけでずいぶん人を感動させてくれた指定野菜のミックスベジタブルだが、恐れ多くも味見しなくてはいけない。オムレツの具に使ってみた。

これがまた、いたく野菜なのだった。

まず、全体が葉っぱっぽい。酸味があって(トマトか)最後にさといものねばりが来る。野菜のミックスジュースのミックス感とは全く違う荒々しさ。見た目よりは1品1品がしっかりしているが、食べ終えた感想としてはやっぱり「野菜だなあ」の一言だった。

目の前に筆と墨汁と半紙があったら食べながら「野菜」そして「健康」と書いていたと思う。

冷凍保存したら普通に便利

カラフルじゃなくてもいい、食べにくくてもいい、もっと荒々しく野菜っぽいミックスベジタブルを作りたい。その願いは願った以上に叶った。「野菜」という名前の野菜があったらこんな感じだろうという全身全霊のミックスベジタブルだ。

たくさん残ったので冷凍保存しておいたのだが、ちょっとした料理に混ぜるだけで野菜を食べている気持ちが高まって使い勝手も妙にいい。

商品化するとしたら名前はなんだろう。悔しいが「ミックスベジタブル」ではないのだろう。
ピーマンミックスを入れたポテトサラダに本家ミックスベジタブルも混ぜたら、ピーマン味が一気にミックスベジタブル味になった。さすが御大
ピーマンミックスを入れたポテトサラダに本家ミックスベジタブルも混ぜたら、ピーマン味が一気にミックスベジタブル味になった。さすが御大
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