かなり広い範囲が廃道になる
場所はこのへんだ。
あたりの建物にはこんな看板が掲げられていた。
この赤い部分の道が廃止になると書いてある。
簡単に言うけどそれってすごいことだ。家の肩たたき券制度を廃止するのとは訳が違う。渋谷駅前の、道を、なくす。へー!
対象となる道を改めて地図に書くと、こんなふう。
けっこい広い。この道がぜんぶなくなるのだ。
といってもただ道がなくなって不便になるという話ではない(そんなはずがない)。あたり一帯(青い部分)が再開発されるのに伴って確かに道はいったんなくなるんだけど、そのあとには代わりとなる新しい道ができる。
赤く塗った部分が新しくできる道だ(都道補助18号線)。廃止される道も緑色に描いてみたけど、一部重なっているのが分かる。
現場は落書きだらけだった
というわけでさっそく現場に行ってみよう。廃止される前日のようすはこんなふうだった。
渋谷の駅前だけあって、おおぜいの人が歩いている。見えている場所の左側と奥が、再開発の対象になっている場所だ。分かりやすく色をつけてみた。
このオレンジの奥のほうに行ってみよう。
人はちらほらと歩いていたが、当然ながらあらゆる店が閉まっていた。たとえば奥に見える楽器店にはこんな張り紙がしてあった。
すでにここは閉店し、ここから徒歩30秒の場所に移転したそうだ。このあたりでは、これを機に廃業したお店ももちろんあるものの、多くのお店が去年のうちに近場に引っ越したようだった。
あらゆる店舗の壁にスプレーで落書きがしてあるのも印象的だった。
去年の後半からほとんどのお店が閉まっていて、ある意味シャッター街になっていた。そこに渋谷の文化が合わさってスプレーだらけになったんだろう。
これまでにも再開発直前の街をいくつか訪れたことがあるけど、ここまでなのは渋谷くらいだと思う。
たとえばこれは、再開発される直前の東京の府中駅前。左側のドラッグストアはずいぶん前に閉店してシャッターが降りているけど、とくに落書きはない。
同じように東京の国分寺駅の再開発前の例。寿司屋の建物はがらんとしているけど、スプレーの跡はない。
いい悪いじゃなくて(悪いけど)、文化が違うんだろうなと思った。
廃道当日のようす
そして次の日の朝、現場に行くと廃道のための準備が始まっていた。
といっても前日と比較したほうが分かりやすいと思うので、まずは前日のようすから。
ここは左側の低いほうの道だけが廃道になるので、そっち側の入り口だけがふさがれている。将来は幅15mの広い道路に生まれ変わる予定だ。
このあたりは地上39階、高さ180mの高層ビルができる予定。
こっちの入口には単管バリケードだけでなく、重そうな鉄骨が置かれていた。これどうするんだろうと思っていたら、こうなった。
足元がトラ柄の、いかにも工事現場を象徴するフェンス。さっきの鉄骨がどうなったかと脇から覗いたら、こうなっていた。
あ、なるほど。フェンスの支えにするために鉄骨を置いていたんですね。
こうやって封鎖した道の内側では電線の工事をしているのが見えた。
作業をしている方の右側にある(見にくいけど)黒い箱はクロージャーといって、通信回線を束ねる箱だ。
なので電信柱につながった電話線か光ファイバーを取り外しているところなんだろう。
さっきの楽器屋の隣でも、同じように電線(通信線)の工事をやっていた。なるほど、まずはそこからなのか。できるならいろいろと段取りを聞いてみたい。
廃道になるけど歩行者は通れる道があった
線路沿いの道は、確かに廃道になって車は通れないんだけど、歩行者だけは通れるようになっていた。
足元にある二本の赤い棒(ガイドポスト)が、車の侵入をいちおう防いでいる。ここも分かりやすいように色をつけてみた。
先日、「ここ通れなくなるの? どうしよう〜!」と言っている人を見かけた。「廃道のお知らせ」という看板にはたしかにここが廃道になるとあるからだ。
でもそれは誤解だったのだ。通れないのは車だけ。駅への通り道として使う人が多いから歩けるようにしたんだろう。
再開発後は、この真上の高いところにデッキができてそこを歩けるようになる予定のようだ。その高さのまま線路を超えて反対側にも行けるらしい。すごい。
その奥には、まだ営業中の美容院があった。落書きされ放題のシャッター通りのなか、ここだけがまだ気を張っていてすごい。エクステ付け放題。
この前の道が人だけは通れるということから、まだ行けるとふんでいるのだろうか。応援したくなる。
ところで、再開発でどんな建物ができるかについては、イメージ図が公開されている。隣にある文化総合センター大和田という建物から見た図だ。
なので、実際にこれを持って行って文化センターから同じようなアングルで見てみた。
おお。そこそこ面白い感じになった。分かりやすいかどうかは置いておいて、なんとなくこういう高さの建物が立つのか、という感じはつかめる気がする。
夜になると工事関係者を含めて誰もいなくなるので、渋谷駅徒歩3分とは思えないもの寂しさがある。
この道自体はなくなるけど、ここが都道補助18号線として生まれ変わるんだと思うと不思議だ。
坂の上から見下ろすとこんな風景。この木造家屋のあたりは、坂の上へつながる歩行者用のデッキなどになる想定のようだ。
廃道になった後はどうなるのか
この道が廃道になってから2日後まで見に行ったけど、まだアスファルトをひっぺがすところまでは行かないようだった。そりゃそうか。
一般的に、再開発に伴って廃道になったあとのようすってどんななのか。料理番組の「こちらが一晩寝かせたものです」にならって、すでに再開発が終わった別の場所を見に行くことにしよう。
2013年から2014年にかけて、日本橋高島屋の新館建設を含む一帯の再開発に伴って一本の道が廃道になった。
すごい光景でしょう。奥には「みどり」と書かれたスナックが見える。昭和の路地だ。
この道には当時「廃道反対」の看板も出ていた。お店の移転先などがうまく見つからない人たちもいたんだと思う。
それがいまどうなったか。
まずは遠巻きに見てみる。さっきのスナックの路地は矢印のあたりにあったはずだ。跡形もない予感がする。
それでも、だいたいこのへんだったはずだという場所を見つけて、同じようなアングルで写真を撮ってみた。
比較のために廃道前の写真をもう一度。
なるほどなるほどー。
松坂屋新館の中にスナックが残るのもむずかしそうだし、そりゃこうなるよねという感じか。
その一方、この場所で生まれ変わった道もある。
ここが今ではこんなふうになっている。
あら素敵。
もともと車道だった道が歩道になり、歩きやすくなった。それに屋根もできた。
廃道になった場所は、もともとどこに道があったか分からないようになる。でも新しく生まれ変わる道もある。渋谷のあそこもきっと同じようなんじゃないかと思う。