解明された、余裕のヨッちゃんの人物像
検証の結果、余裕のヨッちゃんは童心を忘れず、負けん気が強く、多少無理をしてでも「やる」と言ってから行動する有言実行、ただし、結果に対して責任は持たないという人物であることがわかった。
また責任感同様、金も持たない人物であることもわかったのである。そこんとこヨロシク。
誰でも一度は使ったことのある言葉、余裕のヨッちゃん。この言葉が使われ始めてから50年以上は経つと思われるが、誰一人それがどういう人物なのかを知らない。
いい加減ここらで余裕のヨッちゃんの人物像を明確にさせ、全員で意識統一させておきたい。
私ひとりによるプロファイリングの結果、余裕のヨッちゃんは後先を考えず「余裕でできる」と虚勢をはってしまうところから、自己顕示欲が強く、束縛が苦手で、行動が稚拙である点から小学五年生の男子と推測された。
そこから導き出された彼の服装がこちらである。
これを身につけてみると
ということで、余裕のヨッちゃんの見た目はこうなることが推測できた。
以上です。
と記事を終わってしまう訳にはいかない。
なぜなら我々が知りたいのは、余裕のヨッちゃんという人物の行動や心理など深いところまで含めたものだからである。
そこで今回は、私自らが余裕のヨッちゃんとして行動することによって、その人物像に深く迫ってみることにする。
検証方法はこうである。
①編集部の面々に協力いただき、まず、私のことを「なんでも出来ると豪語する余裕のヨッちゃん」と思い込んでもらう。
②そのうえで私にチャレンジさせたい無理難題の指示を出してもらう。
③それを受けた私がどう行動し、どのような心理状態になるのか自分を客観的に観察する。
※この方法は、往年の「不良少女と呼ばれて」というドラマから着想を得た「余裕のヨッちゃんと呼ばれて方式」と命名された。[誰によって?]編集部の面々には、検証とはいえ人に無理難題を指示するなどという嫌な役回りをさせて申し訳ないが、検証のために我慢してやってもらおう。
そして説明のために「非常に心苦しいとは思いますが、何か私にチャレンジさせたいことを…」と最後まで言い終わらないうちに出てきたのが空手のデモンストレーションでよく見る板割りの板である。
テレビなどではみたことがあるが実際にやったことはない。
しかし躊躇はしていられないので「余裕のヨッちゃんです!」と答えたところ「だったら」と板を二枚重ねにされてしまった。
よ、よ、余裕の、余裕の…。
安藤さんから「振りぬくように突いてください」「じゃないとケガをします」という言葉に、念のためリストバンドを拳に装着した。ビビったわけでは無い。
余裕のヨッちゃんは、虚勢を張って自分を追いつめるが、切羽詰まって実力のものが出せるのかもしれない。
ここからは屋外に出て、街にあるもので指示を出してもらうことにする。
少し歩くと何かを隠すかのように置かれた新聞紙があった。
すると橋田さんが
という。
新聞をめくることはたやすいが、トラウマになったらどうする、しばらく食事が喉を通らなかったらどうするなどと考える。
言い出しっぺの自分が編集部に依頼してやっている以上、できないとは言いづらい。
なにもなかった。
ここで橋田さんなら無茶な指示は出さないだろうと思っていた自分が甘かったと気が付いた。
※新聞紙はその後、編集部で仕込んだものと判明。
歩いていると自販機があり、橋田さんからジュースをおごることができるかとの指示がでた。
余裕のヨッちゃんたるもの、日差しの強い中、撮影に協力いただいている編集部の方たちに飲み物ぐらいは振舞わねばならない。
「余裕のヨッちゃんですよ、好きなものを選んでください」というと、紅茶花伝を選択した。そのうえで
と、言い出したので驚いた。なんで三つも必要かは不明ではあるため、理由を尋ねると
とのことだった。まあ、ジュースの3本や4本おごるのは余裕のヨッちゃんである。
と思っていたら
ジュースをおごるのは余裕だったが、あとからあとから注文が増えていくことにおびえた。ほんの一杯だけ飲むつもりで入った店で、あれよあれよと気が付いたら目の前にシャンパンタワーが立っていた人の気持ちである。
買ったジュースを飲みに神社へ行く。すると橋田さんが
「江ノ島さんはコーラの一気飲みできなかったんですよね~」と言う。つまりやってみせよということだ。
挑発的な指示に対しては、負けん気が起り…
グビグビグビグビ!!!
たった350mlなのに苦しい。
若い頃は飲めたはずなのに、老いだな。
あとで調べたら江ノ島さんは記事の中で500mlのコーラ一気飲みしてたし、なんのウソだったんだろう。
挑発のためには仮想敵を作るというアレなのかもしれない。
神社から移動すると町内会の掲示板があった。
橋田さんはこの掲示板と石垣の間のすきまを通り抜けることができるかという。
そしてお手本を見せてくれた。
余裕のヨッちゃんというよりも
ギュギュウのギュッちゃんと化しながら進む。
シャツで掲示板の裏側を拭き掃除した結果にはなったが、なんとか余裕で通り抜けることができたのである。
掲示板の向かい側にどくだみが咲いていた。ヨっちゃんならこれを食べるだろうか…。食べたら橋田さんは驚くだろう。
どくだみと言えば「独身アパートどくだみ荘」ぐらいしか思い浮かばない私に、このどくだみ草は食べられるだろうか?
同行している林さんがスマホで調べて「食べられるそうです!たぶん!」と言っている。
答えはもちろん余裕のヨッちゃんなのである。
モヒートのような味がする。というかモヒートを飲んだ記憶がないので正確にはモヒートっておそらくこんな味なんだろうな、という味がする。
無類のパクチー好きであるからか、意外にも苦みやえぐみは感じず、ミントのような味で、ケーキの上にどくだみが置いてあってもいいと思った。
路傍のどくだみを食べた私は、これまでの固定観念から解放されて自由な気持ちになり、階段に横になった。
余裕のヨッちゃんは自由を愛する人なのかもしれない。
今度は青山まで移動し、高級フルーツ大福の店に来た。
果物の入った大福といえばいちご大福しかしらない私には、まずフルーツ大福というジャンルがあることに驚いた。
つづいての指示は、ここの大福をおごってほしいということだった。
なんだ、大福か!ワッハッハッハ!
大福くらいなんだ、余裕のヨッちゃんだ!ワッハッハッハ!
そんなに甘い物が好きなら新潟から笹団子の束を贈ってやるわい、ワッハッハッハ!
ワッハッハッハ!他愛もない、大東京の青山のど真ん中で大福をおごってくれだとさ、ワッハッハッハ!
と店内のサンプルに目をやれば、梨、桃、マスクメロン、キウイ、ナガノパープル、シャインマスカットなどなど色とりどりのフルーツが大福となってだいたい一個500円~1,300円の大福が並んでいる。
ワッハッハッって、え??
なおかつ橋田さんは、最も高価なイチゴの断面が白い「淡雪」という1,300円のをおごってほしいという。
サンプルの中に、同じイチゴの「あまおう」という600円のがあるので
と聞いてみるが、どうしても1,300円の淡雪が欲しいという。しかも二つほしいという。
余裕のヨッちゃんたるもの嫌とは言えず、店舗に入る。
いい大人なので大福くらい一人で買えたが林さんも店内についてきてくれた。
ごまかして600円の「あまおう」を買わないか監視するためだったと思われる。
大福二つで2,600円!!!それだけの価値が有ることは分かっている。鮮度を保つために毎朝お店で包んでいるのである。
すべては価値の分からない私が悪い!!
ここの大福は割って食べるように専用の糸が付いている。包丁などで金気を付けないでほしいというこだわりなのかもしれない。
切り終えた大福を食べる人を見つめる。
さあ、私は何を感じるのだろうと客観的に自分を観察する。
ひとつ1,300円の高級フルーツ大福を食べて「おいしい」と言った橋田さんを見て「そりゃそうだろ」と意地悪なことを考えていた。
大福を食べ終わり、お昼時となり、予定していた撮影の終了時刻に差し掛かった。しかし、橋田さんと林さんは、撮影終了とはいわず世間話をしながら青山近辺をブラブラ歩きつづける。
すると、うなぎ御膳3,200円と書かれた毛筆で書かれたお店に入って行った。どうやら昼食をおごるというのを最後の指示にするつもりらしい。
3,200円のうなぎ御膳を三人前で9,600円ではないか。このままでは軽自動車税の支払いのために残して置いた一万円札がなくなってしまうではないか。
「逃げる!」
と思ったが、幸い満席で20分程度の待ち時間があるとのことで入店をあきらめ、うなぎ御膳は免れた。あぶねえ。
その後、特に説明もなく、30分ほど移動しながら編集部の面々は高級そうな店を見つけると店に入り「満席です」を繰り返している。
「大福のところで記事を終了してもいいんじゃないですか?」というも、「ああ、うん?」などと聞き流して、二人は青山の高級店巡りは続いていく。デイリーポータルZ編集部容赦ねえな。
と思ってたらいい加減お腹が空いたのだろう、橋田さんが
というお店をたまたま見つけておいしそうだと言う。
そして
と来た。
こうして編集部へ戻る道すがら本日はじめて心から「余裕のヨッちゃんです!」が言えたのである。
検証の結果、余裕のヨッちゃんは童心を忘れず、負けん気が強く、多少無理をしてでも「やる」と言ってから行動する有言実行、ただし、結果に対して責任は持たないという人物であることがわかった。
また責任感同様、金も持たない人物であることもわかったのである。そこんとこヨロシク。
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