特集 2019年7月16日

カニ味の魚「ヨロイナマズ」は硫黄味

南米にはまるで甲殻類のように全身を硬い鱗で覆われた『ヨロイナマズ』なるナマズがいると聞いた。

いつか食べてみたいなぁと思っていたところ、南米ではなくなぜか北米・フロリダ半島で見つけてしまった。果たして本当にカニ味なのか!?

1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。

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南米出身フロリダ在住のカニ味(魚類)

さて、まずざっと説明しておくとヨロイナマズというのはカリクティス亜科という分類群に属すナマズの日本における総称である。なお、本記事で扱うのは観賞魚としても知られるHoplosternum littoraleという種である。

……はい!難しい感じの話はここまで!これだけ!もうあとは変な魚を捕って食ってウマイかマズイかウェ~~イ!!ってだけの話なので安心して読み進めてください。

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これが南米奥地のジャングルに生息するという鎧をまとったナマズ、ヨロイナマズだ!!(川口浩探検隊風)

前述のとおりヨロイナマズは南米原産の魚であり、本来は北米大陸には分布しないはずなのだ。

しかし、フロリダではマイアミ市街地からエバーグレーズ国立公園内まであちこちの水路で彼らを見かけた。

どうやらペットとして持ち込まれたものが放流されたようだ。

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ナマズというよりコイやアオウオに近いシルエット。水底の餌を拾い食いするのに適した体型だ。

なるほど。確かに甲冑然としたボディとどこか間の抜けた顔つきはかっこいいようなかわいいような。好んで飼育する人がいるというのも頷ける。逃しちゃうのは承知しかねるが。

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ヨロイナマズというだけあって、大きく硬いウロコが甲冑のように折り重なって体表を覆う。

ずっと食べてみたかった魚だったのですぐ捕獲。

捕まえ方はライトで水辺を照らし、魚影を見つけたら消灯。数十センチほど上流にそっとミミズを刺した釣り針を置いておくだけ。あとは糸の端を掴むかペットボトルに結わえて待つ。もちろん釣竿を使ってもよし。そのまま数分間も我慢すればミミズの匂いに誘われて針にかかってくれる。

おお、ついに小さな夢が叶うぜ。

冒頭でも触れたが、かねてより南米を旅行していた友人・知人から「ヨロイナマズはカニそっくりな味がしてとても美味い」と聞かされていた。

甲羅があるからカニ味、ってのは安直というか話が出来すぎというか。けれど、体のつくりに何かしらの共通点があるなら味が似通っても不思議ではないのかも。

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捕まえた直後はたしかにクイクイと鳴く。威嚇のつもりなんだろうか。フロリダでは『ブラウンホプロ(brown hoplo)』あるいは鳴き声にちなんで『クイクイ(kwi-kwi)』と呼ばれていた。

とにもかくにも魚なのにカニ味!というのは実に興味深いじゃないですか。

そんな面白い食材を南米まで行かずとも、うっかり別件で訪問中のフロリダで入手できたのは棚ぼた。もちろん外来種の定着という事態はまったく喜べたものではないのだけど、それはそれ。

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こちらは同じく南米原産のプレコと呼ばれるナマズ。同じく硬いウロコに覆われており混同されがちだが別の魚。

というわけで2匹を宿に連れ帰って調理開始。ちなみに遊漁規則が厳しいフロリダでも本種は外来魚ということで漁獲規制はなく気軽にキープできる(淡水域でのフィッシングライセンス取得は必要)。

まず下ごしらえとして内臓とエラを取り除く。よく似た体のつくりをしたプレコ類は刃を入れられる急所が少なく下処理に難儀するが、その点ヨロイナマズは気が利いている。腹側の正中線にピシッと鱗の合わせ目があるので、そこにナイフの刃を入れるとサクッと腹を開けてしまう。

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頭部から尾まで腹面の正中線に溝状のくぼみが走っている。ここに包丁を入れると楽に解体できる。

知人は煮込みで食べたとのことだったので、こちらもシンプルに塩茹でに。

さぁ茹で汁は…うーん?泥臭いのに加えて、それ以外にもなんだか生くささとは違う独特な臭みがある。

しかもダシはほとんど出ておらず、お世辞にもおいしいとは言えない。カニ風味のスープが取れるのではと思ったのだが残念だ。

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煮汁にもさぞ濃厚な旨味が出るだろうと期待していたのだが…。
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ヨロイナマズの塩茹で

しかし何だろうか、このニオイは。どこかで嗅いだことがあるような…。

鱗の下に封じられた臭みの正体を探りながら、茹で上がったヨロイナマズを皿に取り上げる。

さて、ウロコまみれのこの物体をどうして食べたものか。と、何の気なしにウロコをスプーンで逆撫ですると…バララララッ!!と気持ちよく剝げ落ちた。快感…。

生時は鉄壁だったのが、加熱するだけでこんなにも潔く脱落するなんて!!

ある種の武士道めいた精神を感じる。

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ウロコは気持ちいいくらい簡単に剥がれる。

鎧を脱がせて露わになるのはやけに黄色味がかった肉。ふ、不安だ…。

フォークをあてがうと肉質はしっとりと柔らかく、ホロホロと崩れる。

舌触りも上品で、かみしめるとたしかにカニによく似た味わいが…!ほ、本当にカニ味だ!

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「焼き芋?」ってくらい肉が黄色い。まさかこの黄色がまんま硫黄由来だったりはするまいな。

しかし、それ以前にやっぱり臭い!口に含むとよりはっきり分かる。これは完全に硫黄のニオイだ!!そういえば肉も黄色かったよな!

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これは……カニ味だけどおいしくはないね。

「温泉宿でカニを食べていると思えば…」と自分をごまかしながら飲み込んでいくが、やはりどう贔屓目に見てもそんなイイものではない。
硫黄フレーバーの存在感が強すぎる。地獄谷の間欠泉でカニしゃぶしたってここまで臭くはなるまいぜ。

ただ、ポテンシャルの高さは感じる。きっと原産地の大河で採れるものは臭みもなく、カニ風味を心から楽しめるのだろう。
しかし、捕獲した水路も市街地からはある程度離れており水も肉眼で見る限りはなかなか清浄で水草もよく繁茂している。そして何より、同じ場所で捕獲した他の魚にはそうした臭いは一切なかったのに、なぜこのヨロイナマズだけ…?


追って取材します

単に他の魚よりも極端にくさみを溜め込みやすいだけなのか、はたまた他の理由があるのか。これは引き続きの調査が必要な案件だろう。

次回のフロリダ訪問時にはもっと多地点から得られたサンプルを食べ比べてみることにしよう。
それから、原産地で捕獲した個体を試食することと現地流の調理法を学んでくることも必須。……やっぱり南米行かなきゃなあ。

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同じ場所で採れたアミア・カルバという魚。こっちは硫黄臭なんかしなかったけどなぁ。
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