特定保健用食品? 機能性表示食品?
数店舗をはしごして「〇〇に良い」的な表現のあるヨーグルトをわっさと買ってきた。
買いながらもすでに違いを感じていたが、ヨーグルトには機能をおおっぴらにうたっているものと、やんわりうたっているもの、かなり遠回しにいうものがあるようだ。
食品の表示にはきまりがあり、健康になんらかの働きかけがあるぞと書ける商品には「特定保健用食品」(いわゆるトクホ)、「機能性表示食品」、「栄養機能食品」がある。
一方、それ以外の一般食品は機能についてパッケージに表示ができないことになっている。
表示はそれに則しているようだ。
ただ機能の明記ができない一般食品も「健康補助食品」などそれっぽい表示をつけることがあるそうでまあまあややこしい。
ヨーグルトをたくさん買ってながめる、大人の遊びです
というわけで、今回はシンプルに、単純に、食品表示のルールにはあまり深入りせず(そういった情報は拙サイトよりもずっと詳しく正しいサイトがいくつもあろう)、パッケージになんて書いてあるかだけに無責任に着目し、興味深さを感じていきたい。
ヨーグルト、どこまで守る気なんだ、体を。見て行こう。
まずもってヨーグルトに人が期待するもの、それはなにか。
腸への働きかけだろう。
というかそもそも、ヨーグルトに腸以外のものを守る気があるとはあまり考えたことがなかった。
今回買ったヨーグルトの中でも、やはり腸に関しては「まかせておけ」「俺の出番だ」という気概を感じる。
そして、腸を守るといってもさまざまなアプローチがあることがパッケージを見比べ分かった。
(1)菌をどうにかする
まずはこちら、特定保健用食品の「おなかへGG」。最初「おなかへGO」と読み間違えて「電車でGO」のパロディかと本気で思った。
電車ファンへなんでそんなにアプローチするのかと。しかし違った。GGというのは「LGG乳酸菌」からとったようだ。
うたい文句は「良い菌を増やし、悪い菌を減らす」。
腸といえば腸内細菌だろう。これをなんとかしようという商品だ。
ご存知「生きたまま腸に乳酸菌を届ける」ことを掲げる商品も健在だ。
まずはヨーグルトのちからで腸内細菌が見守られたことがわかった。
このように、ヨーグルトを見ては図に示していきます。
(2)大腸
ご存知ミルミルにはビフィズス菌BY株が「大腸ではたらく」とあった。
ヨーグルトが「腸をよくするぞ!」と言っても、それは小腸なのか? 大腸なのか? という疑問はある。
会社で「がんばります!」といったところで上司に「……どうがんばるの?」と言われてしまうわけだ。
そこを「大腸でがんばります!」といえば「よし、やりたまえ」となる。
(3)お通じをよくする
がっつり「腸内環境を改善する」と書いてあるのが機能性表示食品である「ラブレα」。
機能性表示食品にはどの商品にも「届出表示」という欄があり、ここにどういう働きがあるのか書いてあるのでとても分かりやすい。
お通じといえばこちらの「毎日爽快」も。一般食品のようで特にバーンと効能はうたっていないが、パッケージからそちらに自信があるのがうかがえる。
パッケージ裏面には「生きて腸まで届き悪玉菌に挑みます」とあった。
挑んだ結果どうなるかは、おそらくはっきり書けないのだろう。
こういうふわっとした言い回しの弁が立つ感じ、会社でうまく立ち回るプロ社員のようでとても参考になる。
(4)綾瀬はるかになる
大変に唐突だが、腸が綾瀬はるかに名乗りを上げた。
「Bifix」というヨーグルト。ぱっと見、普通のファミリーサイズのヨーグルトのように見える。
この裏にあるのだ。「綾瀬はるか腸になろう」との文字が。
注で「綾瀬はるか腸とは、いつも素敵な綾瀬はるかさんのような元気な腸をイメージしています」と説明してあった。
綾瀬はるかさんのようになりたいという憧れは誰もが持つものだと思う(私だってそうだ)。が、腸を綾瀬はるかさんのように……とはちょっと思いつかなかった。
そういう、願いもしなかった夢を見させてくれるヨーグルトだ。
綾瀬はるかを目指すところまで到達し、これなら腸はもうかなりOKな状態といっていい。元気いっぱいだ。
しかしここで終わらないのがいまのヨーグルトなのだ。
長かったがここまでが前振りと思ってほしい。
なんと、腸を飛び出しほかの臓器へヨーグルトのビジネスは広がっている。
こちら「LG21」が働く現場は、胃だ。
メインのコピーは「胃で働く乳酸菌」。
そしてその下、「胃の見守り先生!」と書いてあるが、この方もしかして髪形が胃ではないか…?
ヨーグルトといえば、いかに胃酸で乳酸菌を殺さず生きたまま腸に届けるか、そのし烈な戦いが繰り広げられているとばかり思っていた。
しかし違った。一足先に胃を職場として働きだす菌がいたのだ。
内臓脂肪ということばはよく聞く。皮下脂肪とは違い、臓器の周りについた脂肪のことだろう。
それをヨーグルトが減らすのを助けてくれるそうだ。
ずばり「内臓脂肪と減らすのを助ける」とある。すごい。働きの場が臓器から文字通り出た。
表示をみると食事と一緒に食べることで脂肪の吸収を抑えるのを助ける、ということのようだ。
さて、ここまできて、そろそろどういうことかよくわからないのだが「尿酸値の上昇を抑える」とうたったヨーグルトがあった。
尿酸値というのは血中の尿酸の値のことだろう。つまり、血の面倒をヨーグルトが見ると、こういうことでいいんだろうか。
PA-3という乳酸菌がそういう働きをするらしい。
さらにこちらも。「血圧」「血糖値」「中性脂肪」をなにやらうまいこといなすというふれこみ。
これも血がらみだ。
血がきたら、そう、骨だ。
すっかり忘れていたがヨーグルトにはカルシウムが含まれている。骨なら理解が早い。
「ダノンデンシア」は骨の形成を助けるビタミンDも含んだ、骨に特化したヨーグルトだそうだ。
「毎日骨活!」とある。就活からはじまった「〇活」表現も骨まで届いた。
乳酸菌ラクトバチルスGG株の働きで「肌の潤いと乾燥を緩和する」という商品もあった。
以前から、腸をよくすると肌もきれいになるのだ的な話は聞いたことがあるが、それをストレートにやった商品ということか。
とにかく、これで肌もヨーグルトが陣取ったかたちだ。
「口内フローラを良好にする」というのは「ロイテリ」。
フローラというと腸内フローラを思い浮かべるが、口内にもあるものらしい。
よく読むと、歯ぐきを丈夫にする機能もあるようだ。
いよいよとの思いが強まる。口もヨーグルトが治めた。どうなっちゃうんだ、ヨーグルトの陣取りは。
ヨーグルトの働き、どこまでいくんだ!? と焦るところに追い打ちをかけるように現れたのが、目に特化したヨーグルト。
ルテインという成分が「目の調子を整える」べく働くらしい。
仕事を終えて家に帰ると妻が言う。
おかえりなさいあなた、どうなさる? 骨? 歯ぐき? それとも……目?
ヨーグルトはもはやそういう世界なのだ。
期せずして下手な図に目入れがなされ、命が宿った感が出た。
最後に急にドラゴンボールみたいなことを言い出してしまったが、そういうヨーグルトもある。
最近めちゃめちゃに売られている「R-1」。こちらのふれこみは「強さ引き出す乳酸菌」。
同じようにバンバン店頭に並んでいる「iMUSE」がかかげるのは「チカラ呼び覚ます乳酸菌」だ。
いろいろな事情があってバチっとした効能はパッケージに表記できないのだろう。それでもあれだけ店頭展開して売れているらしいのがすごい。
図に追加するとしたらこんな感じだろうか。
頭の悪い成果物ができた
まだまだ体のあちこちに効能のあるヨーグルトはありそうだが、とりあえず近隣のスーパーで買い集めたものからは以上である。
ヨーグルトのすごみ、分かっていただけただろうか。
私としては、技術のつたなさが功を奏し頭の悪いインフォグラフィックが出来上がったので満足だ。
夏の間のすね毛を抑えるヨーグルト
ヨーグルトがすごいことになっていた。
思えばなんだか分からない食べ物だ。もったりしていて真っ白い。
なんでここまで健康効果がもりもりになったのかと考えた。菌が取り込める食材ならほかにも発酵食品などいろいろあるはずだ。
もちろんヨーグルトの発酵にすばらしい力があるのはそうなのかもしれないが、小腹にちょっとすっと入っちゃう、というのが大きいんではないか。
これが納豆だとちょっと小腹を満たすのに食べてみようかとはなりづらい。なんかちょっと食べられちゃうという食品としての在り方に強みがあるのではと思う。
このままもっと体を守ってほしい。夏の間すね毛を生やさないくらいのこと、ヨーグルトならできるんじゃないか。