ツーン美味いという新たな幸せ
山ワサビの辛さは唐辛子のように後を引くものではない。爽やかにしてくれる辛さだ。今後は全国に流通してくれると嬉しい。本当に擦りたての山ワサビに醤油をかけると、たまらなく美味しいのだ。それだけでご飯がバンバン行ける。近所で売ってくれないかな。
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■大地のりんご
http://daichinorin5.namaste.jp/
■多摩川源流大学
ワサビというものがある。緑色でお刺身を食べる時や、ざるそばを食べる時に使う日本原産の薬味だ。ツーンとする鼻に抜ける辛味が我々を虜にする。あの辛味を知れば、もう本ワサビなき時代には戻れない。
ただワサビはワサビでも、我々がよく食べている緑色の「本ワサビ」以外にも、「山ワサビ」というものが存在する。山ワサビは西洋ワサビや、ホースラディッシュと言ったりもする。これが本ワサビよりも辛く、癖になる美味しさなのだ
誰の家でも冷蔵庫を開けるとチューブに入った緑色のワサビが常備してあるのではないだろうか。彼はなかなかに対応力のある薬味だ。お刺身、そば、これからの季節には外せないそうめんなど、ワサビのおかげでさらに美味しく食べることができる。
しかし、山ワサビの存在を覚えて欲しい。ワサビはワサビでも、山ワサビなのだ。最近は山ワサビを使った商品も増えていて、聞いたことがあるのではないだろうか。初めて山ワサビを食べた時、私は新時代を感じた。そう、山ワサビ時代の到来を。嵐になるだろう。
山ワサビの一大生産地は北海道。その中でも網走、斜里あたりの「斜網地域」が盛んだ。東京では「山ワサビ」と言われても、ピンとこないけれど、北海道では山ワサビは本ワサビ以上に一般的だ。
もう山ワサビだらけ。あっちに山ワサビ、こっちに山ワサビ。全国的には珍しい名字でも、ある地方では一般的な名字で、クラスの半分その名字みたいなことだ。それと同じことが起きている。東京ではこんなに山ワサビの集合を見たことがない。
本ワサビは確かに辛いし、ツーンとくるけれど、山ワサビはその比ではない。むせかえるような辛味とツーン。もちろんそれが癖になるし、素材の美味しさをさらに引き出しているけれど、とにかく辛さがすごい。本ワサビが幼稚園児とすれば、山ワサビは大人の宇宙人だ。
私はこの辛味の虜となった。ぜひ山ワサビについてもっと知りたい。好きな人のことを知りたいじゃない。それと一緒だ。ということで、山ワサビの農家さんと、山ワサビを使った加工品を作る方を北海道に訪ねた。
話を聞くと、やはり山ワサビは辛いそうだ。本ワサビの1.5倍辛い。食べた実感としては10倍くらいの気もしたけれど。地元の人たちも辛いと思っているとのこと。ただ辛味を求めている。刺激が欲しいそうだ。刺激がないと山ワサビではないとまで言っていた。
道山さんが作っている「ガツンと辛い山わさび粕漬け」は、山ワサビの農家さんから「絶対に辛くしてくれ」と頼まれた。マイルドにするな、と。刺激なのだ。刺激がまずあっての、香りや味なのだ。
「ガツンと辛い山わさび粕漬け」は、道山さんはガスマスクをつけて作っている。それはなぜか、山ワサビを砕く機械の蓋を開けると、辛味の柱が立つほどで、目などを刺激するから。山ワサビのすごさだ。
一般的な本ワサビは沢のような水のある場所で育て、食べられるようになるまで3年ほどが必要となる。一方で、山ワサビは畑で育てることができ、半年ほどで出荷するサイズになる。大きいものは私の腕ほどもある。
北海道ではもともと本ワサビがあまり育てられていなくて、海外からいろいろな山ワサビを仕入れ、育つか実験された。そのために山ワサビがこんなにもたくさんあるのだ。どのくらいたくさんあるかと言えば、その辺に生えているくらい山ワサビがある。
地元の人にとっては、山ワサビは春の山菜で、自生している山ワサビをとって食べるそうだ。刺身やそばなどを山ワサビで食べる。ポイントは山ワサビを擦ってすぐに醤油などをかけること。醤油をかけることで、辛味が増し、また辛味が飛ぶのを抑制する。
辛味がすぐに飛んでしまうので、醤油をかける。また道山さんの会社の「ガツンと辛い山わさび粕漬け」などは、辛味を守るために冷凍で売られている。辛さが重要なのだ。とにかく北海道は刺激を求めているのだ。
私は九州出身ということで、山ワサビを知らなかった。北海道で育てられていることからわかるように、山ワサビには寒さが必要なのだ。道山さんも千葉県のご出身で北海道に住むまで山ワサビを知らなかったそうだ。
しかしである。道山さんたちに教えてもらったのだけれど、実は我々は山ワサビを食べているそうだ。最初の方にチューブのワサビの写真があったと思う。それをよく見て欲しい。実は山ワサビなのだ。
西洋ワサビは山ワサビのこと。例外も多々あるけれど、本ワサビと山ワサビを混ぜて、チューブのワサビはできているのだ。なので実は日常的に山ワサビを食べていたのだ。パッケージを見ると分かりやすく西洋ワサビと書いてある。
この辺では、山ワサビとして市場に出すものもあれば、ワサビの工場にチューブわさびなどのために出荷している農家さんもいる。ちなみに大きくても、小さくても味や辛さは変わらないそうだ。
山ワサビ関連の商品も増えている。そのブームのきっかけが道山さんの「ガツンと辛い山わさび粕漬け」。最近は山ワサビを作っている地域も増えてきているそうだ。ガツンとさらなるブームがやってくるかもしれない。この刺激、一度味わうと癖になるのだ。
山ワサビの辛さは唐辛子のように後を引くものではない。爽やかにしてくれる辛さだ。今後は全国に流通してくれると嬉しい。本当に擦りたての山ワサビに醤油をかけると、たまらなく美味しいのだ。それだけでご飯がバンバン行ける。近所で売ってくれないかな。
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■大地のりんご
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