高輪ゲートウェイ駅の出口も比べたい

東京の近くの松戸市に生まれ育ち、東京に1人暮らしして久しい筆者でも、思った以上に意外な駅の出口たちを見つけることができた。
ときにはその街の持っているイメージを覆す出口もあった。街のマニアックな出口を見つけていくことは、その街の持つ奥行きを味わうきっかけになるのかもしれない。
ともあれ山手線の30駅目、高輪ゲートウェイ駅の見る楽しみがこれでひとつ増えた。
たとえば同じ駅でも、「東口はひらけているのに、西口があんまりひらけていない」ことがある。
ときにその差は「同じ駅でもなぜこんなに?」と思ってしまうほどで、その意外性になぜか惹かれてしまう。
そこでJR山手線全駅で調べると、どれほどの「ひらけている出口と、そうじゃない出口」の差を見られるのか。やってみた。
この旅のルールは、「出口から見たときの街の印象」で、“ひらけている方とそうじゃない方”を比べていくもの。なおその基準は完全に筆者の主観である。
なお1日で29駅を急いで回って、見つけられた範囲の出口の話になるのであしからず。
まず筆者も住んでいる渋谷から見ていこう。ここでいちばん華やかな駅の出口は間違いなくハチ公口だ。
どうだ。派手な建物と人間のスーパーコンボである。もはや日本一の迫力の景観が味わえる出口が、この渋谷駅ハチ公口なのかもしれない。
そこからやや恵比寿寄りに歩いたところにある、渋谷駅新南口はこれだ。
早稲田アカデミーとネットカフェとローソンと宝くじ売り場とドトールとベローチェがある、きわめて生活感のある並びだ。
これはもう埼玉のどこかのベッドタウンといわれても信じる。
ちなみに筆者が住む家の最寄りもこの渋谷駅新南口。渋谷が持つ喧噪のイメージからは一線を画すような閑静な住宅街もあり、もはやぜんぜんちがう街だ。
で、こちらを並べて見るとこうなる。
同じJR渋谷駅の出口でもこんなにちがう。こんな感じで山手線の出口のひらけ具合のちがいを片っ端から見ていくぞ。
池袋駅で一番ひらけている出口と言えば、東口であろう。サンシャイン60の建つほうで、ビックカメラ池袋本店や、ヤマダ電機 LABI1日本総本店やジュンク堂書店池袋本店があるのもこちら側だ。
ちなみに、かつてIWGP(池袋ウエストゲートパーク)にも描かれた池袋駅西口はこれ。東口よりは少し地味ながらも大きな繁華街が広がっている。
しかしメトロポリタン口はちがう。というかその存在すら知らない人が圧倒的に多いだろう。僕も知らなかったが、これだ。
ルミネ・東武百貨店を抱えるメトロポリタンプラザの裏側に出る出口である。
たくさんの通行人が行き交う東口・西口と比べると人もまばらで、同じ池袋駅の出口でここまで差が出るのだ。
こちらも並べて見てみよう。
また、上野駅もなかなかの出口によっての差がある。まずここでひらけている出口の筆頭格と言えば上野広小路口であろう。
これとは対照的に、ひっそりとしているのが正面玄関口である。
名前からすると文字通り上野駅の玄関口のような出口を想像するが、人影はまばらである。
上野駅の喧噪とは一線を画す穴場の出口。ここには1932年に完成した三代目駅舎のことを記す碑が静かにたたずんでいた。
ちなみに上野駅広小路口と正面玄関口は距離的にほとんど離れていない。それでも出口によってここまでの差が出るのはなかなか妙である。
ちなみに上野駅にはほかにもマニアック出口がいくつかある。通路を延々と歩いて行く入谷口がこちらだ。
さらに上野駅の中心部から離れていないにもかかわらず、地味なのが山下口だ。そこは駅構内の料理店が立ち並ぶ間にある。
ここで東京駅を見ていこう。言わずと知れた日本を代表するターミナル駅である。どこの出口も華やかだが、特に迫力ある光景が広がるのは丸の内北口だろうか。
これとは打って変わって質素なのが日本橋口である。これだ。
なんだか佇まいはちょっとしたオートロックマンションぐらいの感じである。ちなみに日本橋口から見た景色は下の通りで、屋根と柱が視界の大部分を占める。
高田馬場駅も味わい深い。まず我々になじみ深い出口が早稲田口である。早稲田大学の学生など、多くの乗降客が使う出口だ。
ここから見える光景もやはりひらけて見える。「学生ローン」の看板とあざやかな青空が共演する風景がこの駅の象徴だ。
しかし高田馬場にはもう一つ戸山口というあまり知られていない出口がある。
ガード下に小さくたたずむ奥ゆかしさを見せる戸山口。ちなみにそこから見えるのはこの景色だ。
ファミリーマートと歯医者さん、そしてたばこ屋さんが並び、庶民的にもほどがある光景だ。ここには確かに生活があると確認できるのが戸山口である。
続いては浜松町駅へ。ここで華やかな出口は北口だろう。地上158mの世界貿易センタービルなど高い建物がそびえ立つ中、道の向こう側に東京タワーがきらめく。
逆に渋すぎるのが金杉橋口だ。路地の先にひっそりある。
その路地を抜けても、見えるのは5階建てほどの雑居ビルが立ち並ぶ庶民的な街並み。東京タワーを間近に臨む駅は、こういう出口も兼ね備えているのだ。
続いては日暮里駅である。鉄道3社が入っている大きめの駅だ。東口はごらんの通りの発展ぶりである。
しかし西口はこれである。
傍らには石焼き芋イモの販売カーが薪をくべている。向こうから苦学生が歩いてきそうな街の雰囲気だ。
東口と西口で40年ぐらい時代設定が違うような感じ。これを2019年のいま、両方見られるのが日暮里駅なのだ。
続いては田端である。山手線の駅の中では地味な扱いがされる駅だが、まずは北口から紹介しよう、こちらだ。
そして南口がこちら。駅を出て見えるのは葬儀屋さんだけである。
しかも「斎場反対」の垂れ幕がいまだ並んでいる状態だ。ここに首を突っ込むと面倒なことになりそうだし、時間もないので次を急ごう。
この調子で残りもどんどん見よう。続いては有楽町駅。特にひらけている出口のひとつが日比谷口だ。年季の入った大きなビルが立ち並ぶ。
これに対して、名前に反してやたらと庶民的な風景を拝めるのが銀座口である。吉野家にルノアールにセブン―イレブンのトリプルコンボだ。
銀座に近い立地だが、庶民的な飲み屋も数多くある有楽町。ある意味それを象徴する出口であると味わいを感じる。
さらに秋葉原へ。この街といえば電気街で、それに面している電気街口(西口)がもっともひらけている。
逆に地味なのが昭和通り口(東口)だ。この雰囲気の違いを見てもらおう。
目の前の昭和通りは関東大震災の復興事業として、帝都を南北に走る大通りとして建設された。
以前はこの通りに都電も走っていた。いまも昔からある和菓子店などがいまも建ち並ぶ、電気街口とは一線を画すような古式ゆかしい面影のある街並みだ。
さらに代々木駅へ。富士そばの親会社の本社があることでもひそかに知られるここも、東西出口の差が味わい深い。まず一番ひらけている西口がこちらだ。
その逆側である、東口がこちら。低めの雑居ビルにファミマやアパマンショップなど、庶民的な店が建ち並ぶ。
ちなみに一時期牛丼を200円で提供していた激安牛丼チェーン「牛丼太郎」もこの代々木駅東口にあった。筆者もよく通ってキムチ納豆丼をかっ食らっていたのがなつかしい。
牛丼太郎代々木店はその後経営会社の都合で「丼太郎」となっても営業を続けた貴重な店舗で、2015年3月31日を持って閉店した。それがあるのも頷けるような生活感のある出口である。
筆者のもう一つの最寄り駅でもある恵比寿駅。ここも東口と西口のコントラストがある。西口は恵比寿駅前商店街やピーコックストア、アトレなどの商業施設が集中している華やかな出口だ。
ひるがえって東口はこれである。
もう光量からしてちがう。人かげもまばらで、サイゼリヤが目立つぐらいだ。オシャレタウンのイメージがある恵比寿だが、こんなにちがうのである。
と、ここまで特に差が出た12駅を見てきた。
山手線の駅といえばてっきりほとんど駅の出口が繁華街だったり、高いビルが立ち並ぶのかと思ってしまうが、そういうわけでもなく生活感が漂い、ときに地味な光景が広がる出口もたくさんあるのだ。
そんな訳知り顔で言う筆者も、ここまで違うことをぜんぜん知らなかった。
天下の山手線。てっきり出口が2カ所以上の駅ばかりなのかと思ったら、実は意外と1カ所しかない駅も多かった。
今回は新大久保駅や巣鴨駅、目白駅、西日暮里駅の4駅はJR線の出口が1つだけであった。というわけでこのへんは今回除外させていただいた。
残りの13駅は筆者が見た範囲で、ひらけている出口とそうじゃない出口の差があまり出なかった駅だ。
そのへんの駅をストローク長く見せてもしょうがないので、一枚絵で一気にガンガン見せてしまおう。
本当は「なぜ出口によってひらけているほうとそうではないほうがあるのか」を街ごとに調べるのが筋であろう。
しかし各所の〆切に追われるこの年末の折では、そこまで調べられなかった。言い訳でこの記事を終わらせて恐縮だが、次回(があれば)の宿題とさせていただきたい。
その罪滅ぼしに、特に差が大きかった12駅のGIFアニメを作ったので最後に見てもらおう。
東京の近くの松戸市に生まれ育ち、東京に1人暮らしして久しい筆者でも、思った以上に意外な駅の出口たちを見つけることができた。
ときにはその街の持っているイメージを覆す出口もあった。街のマニアックな出口を見つけていくことは、その街の持つ奥行きを味わうきっかけになるのかもしれない。
ともあれ山手線の30駅目、高輪ゲートウェイ駅の見る楽しみがこれでひとつ増えた。
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