情報量の多い風景は、人を惹きつける
ここまで読んで、「情報量の多い風景は楽しい」と少しでも思ってくれたらうれしい。
人が都市に吸い寄せられるのは、情報量の多い風景に引きつけられている部分もちょっとあるのかもしれない。
情報量の多い風景は楽しい。
よく「看板だらけの光景は、景観的に好ましくない」などと言われるが、繁華街で色とりどりの看板やオブジェが主張しまくっている光景を見るのは、単純にスコーンと楽しい。
その何物にも代えがたい楽しさを味わいに、街へ出た。
そのきっかけは、関西へ別件で取材旅行に出かけたときのこと。そのついでに見た大阪の繁華街にある「情報量の多い風景」の楽しさに圧倒されてしまった。
「そんなこと知ってるよ」という人もいるかもしれないが、道頓堀の風景の中でも、特に情報量の多いところをピックアップしたので、いま一度見ていただきたい。
情報が多すぎて、進んでいく前方が隠れるほど。情報量が殴ってくるような街並みが楽しい。
何やらここで目立つのが、「飛び出すオブジェ」である。ふぐ、たこ焼き、牛、タコ、メロンパン、みんな飛び出してアピールしている。
いくら観光地化した街といえど、こんな状態になるのは全国でも大阪ぐらいのものである。
なお大阪の名所とされるグリコの看板だが、改めて見るとその周りにも多くの巨大看板がズラッと並び、さすが情報量の多さだ。
実に楽しい悪ノリ感だ。
道頓堀に外国人観光客が引き寄せられるのは、情報量の多い風景に先入観をもっておらず、楽しいものとして受け止めるシンプルな考え方があるからかもしれない。
さらに大阪の二大情報量の多いスポットのひとつ、新世界へ行ってみよう。
いきなりこれだ。看板はおろか、串カツの具材の番付表、ふぐや手の巨大オブジェなど、天下の通天閣をかすむほどの情報量の多さである。
観光客と朝から酒を飲む地元民が同居する街は、このほかも情報量の多い風景であふれかえっている。
昨今の新世界のうるさい風景づくりをリードしているのが、「日本一の串かつ・横綱」である。大阪に10店舗を展開するチェーン店だが、ここの店構えは大いに風景の情報量に加担している。
2005年に新世界からオープンしたまだ比較的新しいチェーン。ちなみに24時間営業で年中無休。その意気込みを十二分に外見から感じさせてくれる。
古くから商売の街として栄えた大阪のパワーを十二分に見せつける風景。見ているだけで元気になれる。
果たして東京で、これに負けない「情報量の多い風景」を見つけることができるのか。
まず渋谷である。日本屈指の歓楽街があり、ミーハーな人たちも大挙集まる。ここなら情報量の多い風景を拝めると期待してしまう。
なかなかの情報量ではあるが、一枚の写真におさまる情報の集積度だと大阪に軍配であろう。
世界にとどろくセンター街だが、風景の情報量ではどうやら大阪に屈したようである。
気を取り直してやってきたのが上野である。ここで絶対に外せないのがアメ横だ。
これからの年末に盛り上がる、東京の古きよき巨大買い物街である。中へ入って楽しい風景を探そう。
小さなお店が密集しているので、小さくともたくさんの看板が軒を連ねる。それらが均等の間隔で並んでいるのはなかなかの趣だ。
さらにアメ横と並行して存在する昔からの商店街が、上中(うえちゅん)である。そちらも歩いてみた。
さっきの渋谷に比べると、風景にだいぶ情報が密集している感がある。さすがアメ横である。しかしこれでも大阪にも及ばない感じだ。なんて強いんだ大阪。
続いてはオタクカルチャーの聖地・秋葉原である。
秋葉原はおもちゃ箱のイメージがあるが、僕が見つけた範囲では意外と、この写真の情報量でせいいっぱいな感じであった。
次は原宿にやってきた。竹下通りは、東京のキングオブごちゃごちゃタウンとも言うべき、楽しさあふれる街である。
ほかの地域とは一線を画し、女性に愛されそうなかわいいデザインとカラーリングのお店が並ぶ。
確かになかなかの情報集積度だが、やはり大阪は超えない。ならば、東京最後の砦へ足を運ぼう。
さあ日本のキングオブシティ・新宿である。日本の駅の乗降客数で長年全国1位を守っている都会の中の都会だ。ここなら、そういう場所があるかもしれない。
そんな街の中でも、ひときわギンギラギンなのが歌舞伎町である。
特にこの歌舞伎町一番街は、風景の情報量の集積度が極めて高そうなニオイがする。さっそく門をくぐって中へ入ろう。
この看板量である。奥のほうまで看板・看板・看板。横のポールには、すでに終了しているラグビーワールドカップのペナントも張られたままだ。
筆者の都合でいきなり昼の画になるが、歌舞伎町をもうちょっと進んだところの写真も見てもらおう。
明らかに他の街とは異色かつ、これはこれで楽しい情報量の多い街並みである。
「路線バスの通行にご協力お願いします」との見慣れない立て看板があるところに、やっぱりいろいろ大変な街なんだろうが、先を急ごう。
看板だらけの街・歌舞伎町。時間がある方は、「看板は何個あるでしょうかゲーム」でもやってみてほしい。
ちなみに歌舞伎町で目についたのが、メシ屋のメニューの情報量のすごさである。
さらに気になる店が「とらそば」だ。
「とらそば」の名前とは裏腹に、そば以外のメニューのほうが目立っている。しかもサーロインステーキ(1680円)、うな丼(740円)、とんこつらーめん(500円)などのメニュー名がおどっている。
ちなみに前にこの店は一回入ったことがあるのだが、そのときよりメニューがガンガン増えている印象だ。
おそらくこの歌舞伎町が、東京の「情報量の多い風景」のチャンピオン的存在と言っても過言ではないだろう。
ついに東京VS大阪の結果発表である。といっても審査員がいるわけではなく、私の勝手なる独断(印象論)で決める。
まず東京。雑居ビルによる看板の量で圧倒する、力押しの風景が楽しめる。
対して大阪には、「飛び出すオブジェ」などこれでもかと前に出る精神も感じられる。情報量の多さに加えてエンタメ性もちりばめられていた。
ここでは大阪に軍配を上げさせていただこう。
ちなみに、「情報量の多い風景」を構成するための条件がわかってきた。
情報量の多さを感じたい方は、ぜひこのへんを兼ね備えた街を歩くと楽しさに打ち震えられるだろう。
ここまで読んで、「情報量の多い風景は楽しい」と少しでも思ってくれたらうれしい。
人が都市に吸い寄せられるのは、情報量の多い風景に引きつけられている部分もちょっとあるのかもしれない。
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