これから佐渡島はオフシーズンになるため、山本邸の一般公開は来春までしばらくお休みとなるが、貸切という形での見学・利用は可能とのこと。気になる方はご相談を。 いいところですよ。
現代の風流人の遊び場にしたい
昼間の山本邸は何度も訪れているので、あの藤の間で日の出を待つライジングサン、そして夜空に浮かぶ(ほぼ)満月を眺めるお月見といったイベントに参加しつつ、改めて田中さんから話を伺った。
「今年の夏に一般公開してみたけど、たらい舟目当てで矢島・経島に来た人がみんなお金を払って山本邸に入るかといえば、そんなことは全然なかった。
観光客は山本悌二朗を知らないし、興味がないんだろうね。 外から見えるからそれで十分なのかな。 もちろん喜んでくれる人もたくさんいたけど」
ーー予備知識とか思い入れがないと、入場料を払ってまでは観ないのかも。
「まあ、それはそれ。ここには100年前から変わらない日本の景色がある。タイムスリップした感じを味わえる。こっちも観光のためだけの施設にはしたくないし」
「それよりは文化交流の拠点かな。もちろん一般公開をして、島民の人とか観光客に見てもらうことも大事だけど、茶人とか風流な遊びをしたいという人とか、おもしろい人たちに集ってもらう場所に育てていくのがいいなと。
香炉で浜香を燃やして香りを楽しんだり。そもそもは友人とのお茶会の場所によいかなと思って引き受けたんだし。目指すところは、現在の風流人の遊び小屋!」
ーーいいですね。使う側の発想次第で、すごくおもしろいことができそうです。
「私はただ山本邸を復活させただけで、別に自分の別荘とは思っていない。みんなが楽しく使える場所であればいい。その幅を広くして、みんなで100年後まで残そうというプロジェクト。
ここで芝居をしてもいいし、華道の人が生け花をしてもいいし、リラクゼーションの場所にしてもいいし。なんでもかんでも受け入れる訳にはいかないけど」
ーー波長の合う人がここに集って、楽しいことができるといいですね。海辺だけに。
「そこに参加してくれる人は、ここを自分の別荘だと思ってもらって。なかなか行けないけれど、実は佐渡にすごい別荘を持っているんだぞという気持ちでいてもらえる友の会みたいなものを作って、そこで愉快な人と繋がりたい」
ーーここを自分の別荘だと自慢できる権利、欲しいです。
「人間は100年も経たずに体が無くなるけど、うまくやれば建物は残る訳だから。
ここからまた100年経って、もし200年前の建物がこうして残っていたら、それはそれでおもろいじゃん。せっかく唯一無二の場所なんだから」
ということで、もし佐渡を訪れる機会があれば、ちょっと寄ってみてください。