まとめ
今回の早慶戦も長い記事になった。なにせ前回は7回裏までだったのが今年は10回裏まであったのだ。
しかし毎回思うのは、これを見る立場ならふむふむと言っていられるが、学生と同じ立場になってこれを考えろとなったら、途端に無理ということだ。やっぱりみんなすごいですよ。
なお、野球のほうの早慶戦は早稲田の勝ちだったようです。この日の早慶戦はつまり引き分けということで。
早稲田の圓道龍一さんの発表は、
「紙の本と電子書籍、どちらが好きですか?」
という問いかけから始まった。会場の反応は紙の本が優勢だった。
「ですよね」と圓道さんは言う。そして、電子書籍に欠如しているのは質量やボリュームを伴う所有感であるという。
「そこで、 質量とボリュームが7倍になるブックカバーを作りました」(会場笑)
手に持っている本は、真ん中の一冊が読みたい本で、左右の三冊ずつはブックカバーとしての本になっている。
「今日も電車の中でこれを読んできたんですが、そんなときに両脇の六冊をアレンジすることで、こいつ賢そうだなーと思わせることができます」
以下、コメント:
・絶妙に指が届かない
・絶妙にめくれない(会場笑)
・(上の写真のとおり)背表紙を横に向けて読むほうが、書名が見えて所有感が出ていい。
問いかけから始まるプレゼンで慶応かと思ったけど、7倍のブックカバーが出てきてやっぱり早稲田でよかった。
つづいて慶応の胡摩ヶ野彩芳さん。
「私が作ったのは5円パワーゴリゴリなんですけど」(会場笑)
「こういうスクラッチを・・」
「この5円パワー君でゴリゴリと削ることができるという機械です」
(チュイーンという回転音を響かせながらゴリゴリする)
「えーと、外れました」(会場笑)
電動ドライバーの先に五円玉がいっぱいついているという構造だろうか。
以下、コメント:
・思ったより大変、集中力がいる
・道具がアメリカンでいい。一気にやってしまうんだけど、あんまり効かない。
・デザインもアメリカの50年代っぽくて統一感があっていい。
最初、スクラッチは手で削るから面白くて機械でやると台無し、ということなのかなと思ったんだけど、実際には機械でも大変というところがよかった。
早稲田、渋谷悠利さんの作品は「開封機」だ。
「プレゼントを開けるのはワクワクするので、それだけを抽出する機械を作ってみました」
プレゼントのパッケージを開けると、
またパッケージが入っている。その包み紙を開けると、やはりパッケージが入っている。
「こんなふうに開封が20回も30回も楽しめる機械になっています」
作ってみて、開封がワクワクするのは中身が楽しみだからだけじゃなくて、開封そのものが楽しいという面もあるんじゃないかと思ったのこと。
コメント:
・人から物をもらって、いらないから他の人にあげるときに使える。
・剥がされた数でどれくらいたらい回しされてるか分かる
・剥がしていくと最後まで包み紙?
(→いえ、箱が入ってます)
・この大きさで最後まで紙は流石に無理か
つづいては慶応の髙橋奈那さん。
「さけぶダミ足くんというものを作りました。作動させてみます。」
足をくすぐると、右側に離れたところにある白い旗がクルクルと回る。
「私は人からくすぐられるのが大好きで、くすぐってほしい。」と髙橋さん。ただ、あまりくすぐったい感覚はないそうで、つまり相手にとっては反応がないため、くすぐってもらえないという。
「くすぐってもらったときの喜びを表現できないかと思って作りました」
クルクル回る旗を見たときに、しっぽだなと思った。くすぐったくはないけど、くすぐってもらってうれしい気持ちを表すしっぽ。
境夏実さんはフレグラフィーというものを作った。
「書道は文字を視覚的に表現したもの、点字は触感で表現したもの。組み合わせて目の見えない人のための書道ができないかと思いました」
具体的には粘土で点字の形に並べ、表面の凹凸を木の棒で作り込む。ここには「しもつき」 と書いてあるとのこと。
「ふつうの点字にはない、点ひとつひとつの違いが表現できるという特徴があります」
以下コメント:
・作品として完成されていて、役に立たない機械ではなさそう
(→はい、「未知の道具」の課題です)
・点字は触覚と思いつつも、純粋な言語に近い面もある。これだとより触覚に近い面があっておもしろい。
「私は『みょーんナイフ』というものを作りました」と塩田好花さん。
なんでも一口サイズで切れるナイフだ、とのこと。
「目盛のところに、豆腐、チーズ、魚肉ソーセージとかの適切な一口サイズが書いてあります。」
なのでそれに合わせて切る。
「発展として、好きな角度で切れるナイフも作りました。」
「たとえば30度の角度に開いて、ケーキに印をつけます」(会場から感嘆の声)
そのまま分度器についてるナイフで切りたいが、高さが足りない(ケーキが天井についちゃう)ので、あとは印にそって別のナイフで切ってやるそうだ。なるほど。
コメント:
・ナイフの高さが足りないのはナンセンスでおもしろい
・水平方向から回転方向に行ったときは目が開く感覚があった
・いままで一口サイズとかいって曖昧だったのはよくなかったんじゃないか
・バナナは何cm?
(→ 3.9cm です:会場笑)
野球は9回までだが、この早慶戦は10回まであるのだ。なのでこれが最終回。
早稲田の佐柳亮太さんが作ったのはこんなやつだ。
「メジャーを使うときに、勢いよくもどって指を挟んだりすることがあるので、改善するためのものを作りました」
メジャーを伸ばして手を離すと、
手元の輪っかが、カチカチと回転を方向を変えながらメジャーが戻るのだ。
「これは時計の脱進機という機構を応用したものです」
これは面白い。つまり、メジャーが元に戻る力を利用して時を刻んでるということだ。ぜんまい式時計だ。メジャーもまさか自分が時計にされるとは思っていなかっただろう。
最後は慶応の桑原健さん。
「ブーケトスってあると思うんですけど、それを機械で飛ばすものです」
機械にブーケをセットして、手前まで引き絞って手を離すと・・。
「結婚式では不特定の人にブーケを飛ばしますが、これを使って直接特定の人に渡すことができます」
最後に単純明快なのが来た。とてもいい。
以下コメント:
・(失敗すると飛ばないのを見て)フェイントがあるのが面白い。受け取ったつもりになっているのに、受け取ってない。結婚できないってこと?という気持ちになる。
・すごい飛びそうな機械にしておいて全然飛ばない、でもいい。
・当日までに練習したい。ラグビーのロングパス並みの精度でも面白い。
これは早慶戦なので、早稲田と慶応のどちらかが勝ちかを決める必要がある。決めるのは鈴木さんと私の二人だ。悩んだ末、各回ごとに勝者を決めて、多い方を勝者ということにした。
まず、それぞれの先生方がよかったと思う発表は次のとおりだった。みなさんはどうだったでしょうか。
・中谷賞:慶応の藤田さん「Galaxy S24」
・中西賞:早稲田の小賀さん「寝起木」
・石川賞:早稲田の吉田理玖さん「正直モノ」
・鈴木賞:早稲田の大石さん「本音」
・三土賞:慶応の櫻井さん「匂い~ジャストフォーユー~」
※早稲田の吉田さんの作品はエキシビジョン枠で、写真だけ紹介します。すみません!
椅子もたまには足を崩したいだろう、ということで、4本足のうち前の2本が畳んである椅子。そのままだと椅子自体が床に前屈みに座る形になるけど、うまくバランスを取れば人間も座れる。
そして、早稲田対慶応の結果は、
・慶応5勝
・早稲田3勝
・引き分け2
で、慶応の勝利となりました。おめでとうございます。
取材協力:
早稲田大学創造理工学部建築学科のみなさん
慶應義塾大学SFCデザイン言語総合講座のみなさん
今回の早慶戦も長い記事になった。なにせ前回は7回裏までだったのが今年は10回裏まであったのだ。
しかし毎回思うのは、これを見る立場ならふむふむと言っていられるが、学生と同じ立場になってこれを考えろとなったら、途端に無理ということだ。やっぱりみんなすごいですよ。
なお、野球のほうの早慶戦は早稲田の勝ちだったようです。この日の早慶戦はつまり引き分けということで。
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