おしまい。
さて、この記事であるが、とくにおもしろいオチはなく、ランプの完成をもってここで終わる。
拙いながらもなんとなくインテリアを意識したものをつくってしまったあげく、そのまま記事を締めるのはなんと気恥ずかしいことか。
「ちょっとかっこいいものができるかも」というやましい気持ちがあったことは素直に認めるが、原稿を書いている今になってひとりで赤面している。あーなんか暑くなってきた。ちょっと夜風に当たってきます。
細かい作業が好きだ。たとえばハンダ付け。2.54mm間隔で空いた穴にひとつずつハンダを流し込んでいく作業は、すっごいチマチマしていて、長時間やってると勝手にトランス状態に入ってくる。(ハンダ付け愛好家の間では、ハンダにそういう成分が含まれているのではないか、という説さえささやかれている)
ところで日本の伝統的なチマチマ芸に、「米に文字を書く」がある。当サイトでは以前、ウェブマスターの林さんが挑戦している。
今回はもうちょっと現代的な解釈で、こんなものに絵を描いてみたい。米粒サイズの電子部品、LEDである。
※2010年10月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載しました
現代の米粒ことLEDである。3mmサイズと5mmサイズがあるが、今回はより米粒に近い、3mmサイズを用意した。
ペンは林さんの記事を参考にサインペンを使用。ただしプラスチック製のLEDに書くためには油性ペンを選ばねばならず、細い油性ペンというのが意外と売ってない。3軒ほど文房具屋を回った挙句、
しかも、後で気づいたのだが、このペンは水性であった。何のために3軒回ったのか。
LEDのいいところは持つところがついていることだ。林さんは米粒を両面テープで机に固定していたが、LEDなら端子(クラゲの足)部分を左手で持てる。
はい。(マウスオーバーで補助線)
まずは自分の名前を書いてみた。「石川大樹」の「大」まで書いたところでスペースが尽きた。「石川大」とは愛媛県新居浜市出身で、JFL・栃木ウーヴァFC所属のサッカー選手だそうである。(wikipedia情報)
失敗した。今度は別の文字を書いてみる。
石川大じゅ(マウスオーバーで)
「石川大じゅ」の表記をしたのは小学校3年生以来である。低学年でならう最初の3文字に比べ「樹」だけが難しく…というのは言い訳で、単に画数が多くて面倒なのでひらがなで書いていた。母に「それは変すぎる」と言われたのをきっかけに全部漢字で書くようにしたのを覚えている。
昔は素直ないい子だったのだな、と思う。
関係ないがこの写真、指紋から爪の凹凸までくっきり見えている。(マウスオーバー)
写真には1行目しか写っていないが、2行に分かれて「デイリーポータ」である。吉田カバン(ポーター)情報満載の日刊紙かと思われる方もいるかもしれないが、当サイトの名前「デイリーポータルZ」が途中で切れたものである。
薄曇りの空模様。まだお昼過ぎだというのに、秋の太陽は夕暮れみたいな空気を醸し出している。
なんだか寂しくなってきたので光らせてみる。
冒頭に、細かい作業が好きだ、と書いた。
しかし考えてみれば、僕は細かい作業をほとんど家か会社でしかやったことがなかった。
秋の太陽は、チマチマするにはあまりに寂しすぎるのではないか。秋空の下でのチマチマは気分を内に向かわせる。自分の中にある、柔らかで繊細な部分と対峙してしまうのだ。
だめだ、もう、帰ろう。
家に帰ってきた。
こういう作業をやるのはやっぱり部屋がいちばんである。部屋がなかったら人類はここまで文化を発展させることはなかっただろう。部屋は最高だ。
部屋のいいところはもう一つあって、カーテンを閉めれば暗くできるところだ。
LEDに字を書けたらこういうことをやってみたかったのだ。
文字を書いたLEDを光らせて、壁に当てればプロジェクターみたいに文字が浮き出るのではないか。そう思ったのだ。
いろいろ角度を変えたりして試したところ、次の写真が限界。
ピンぼけ写真に見えるがピントは壁にばっちりあっていて、投影されている像のほうがぼけている(マウスオーバーで補助線でます)
「月にウサギがいる!」くらいのうすぼんやりで、「石川」の文字が見える。しかも鏡文字。壁に映す場合ははんこと同じだから鏡文字になるのか。
どうも思った通り、くっきりとした像が写らない。だめか。
とはいえ、今さら後には引けない状況でもある。
手当たり次第に試すうち、いい感じに投影できる方法を発見した。
さっきまで3mmのLEDを使っていたが、5mmのLEDに変えてみた。すると、なぜか横に描いたものが正面に投影されるようなのだ。
狭い。
LEDの高さが5mmだから、投影可能部分の高さ1mmくらい。文字を映すには、ここに字を書かなじゃいけないのか。もう1回書くけど、狭い。米粒より狭い。
しかし僕のチマチマ力は、すぐにその狭さを乗り越えた。
でた。ペン先を点描みたいにしてなんとか書いた細かい数字が、放射状にギュイーンと伸びる。名前は忘れたけど時計屋によくある高くて四角い腕時計の文字盤みたいだ。
でも眼球の毛細血管の写真みたいでもある。気持ち悪いと言えば気持ち悪いかもしれない。
ああ、時計の名前を思い出した。フランク・ミュラーだ。そして比べてみるとあんまり似てない。
要領はわかったので数字以外にもいろいろ書いてみることにした。
まずは、サイト名から。文字の高さは狭いが、長さはぐるりと1周ぶんある。こんどは全文かけるだろう。
まがまがしい(マウスオーバーで補助線)
前ページで試した数字の像は直線的でスタイリッシュな感じだったのに、日本語にしたら急にまがまがしい呪詛みたいになった。朝起きて額にこのマークが浮き出ていたら泣く。
以下、だいたい全部まがまがしい感じです。すべてマウスオーバーで補助線が出ます。
かみだのみ
あきですね
泥沼
やめてください
つかれた
どんな言葉も全て呪詛のようになってしまう。そして途中からそれに引っ張られて僕もネガティブな言葉を選んでしまっている。ネガティブ・スパイラルだ。
あと、ちゃんとメモをとっておかなかったので、何を書いてあるのかわからなくなったものもある。
せっかくLEDがたくさんあるので、複数組み合わせたのもやってみたい。
赤い光のまわり、右上から左下にかけて「デイリー」と映ってるのがわかるだろうか。鏡文字にするのを忘れたので、像も鏡文字である。
あとの2つはどうも光の屈折のしかたが違うらしく、赤いのほどきれいに像が出てくれない。組み合わせればフルカラーの像ができるのでは、と思ったがそうはいかないようだ。
右の写真に数字が書いてあるのは、前ページでやったように投影できる範囲を調べるため。一円玉の文字より小さい字だが、このくらいならもう鼻歌交じりで書けるようになってきた。
白のLEDにカラーペンで書けば、色んな色が投影できると思う。3色で「DPZ」と書いて投影してみる。
宇宙に浮かぶ恒星に手をさしのべているようで、どこか暗示的な写真にはなった。しかし肝心の文字が。恒星の左側にちょっと3色のオビが出てるくらいで、文字になってない。
どうもさっきの赤LEDよりさらに文字を書ける範囲が狭いらしく、文字の一部だけがビヨーンと伸びて帯状に投影されているのだ。
さすがに手でこれ以上小さい文字は書けない。文字はあきらめて、これでどうだ。
……ダース・モール!
その後もいろいろ試していたところ、もっときれいに投影する方法を発見した。
LEDを買ったときの紙袋の中に手を入れて、裏側から投影したものだ。LEDを紙に密着させると、こんなクッキリ出るのだ。
要はLEDに紙をくっつければこの文字が浮き出るわけだ。小さくまとめてランプが作れないだろうか。
思いのほかかっこいいものができた。でも文字はやっぱり呪詛っぽいので、ランプといってもオシャレには活用できそうにない。嫌いな人が寝入ったあと、そっと枕元に置こう。
紙風船ってちょっと渋すぎるのでは、と思ったので別のも作ってみた。
コの字型に折った紙をかぶせただけだが、横から漏れる光もなかなかいい。
これでLEDが明るくなったり暗くなったりを繰り返すと脈打つ感じでますます不気味になりそうだが、それはまたそのうち作ることにしよう。
さて、この記事であるが、とくにおもしろいオチはなく、ランプの完成をもってここで終わる。
拙いながらもなんとなくインテリアを意識したものをつくってしまったあげく、そのまま記事を締めるのはなんと気恥ずかしいことか。
「ちょっとかっこいいものができるかも」というやましい気持ちがあったことは素直に認めるが、原稿を書いている今になってひとりで赤面している。あーなんか暑くなってきた。ちょっと夜風に当たってきます。
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