名言に負けていこう
名言なんかに心動かされるものか、という態度で始めたがしっかりスズキナオさんの体験やビヨンセの強さに動じている。
いや、もっとむしろ動かされたい、という気すらしている。
終わってからパリッコさんが「深夜にガンガンあびたいですね」と言っていた。確かにDJのように名言を繰り出して欲しい。DJ、VJに続くのは名言ジョッキーだ。
とりあえず終わってから名言集を買いました。
名言に負けないようにしたいと思っている。
立派すぎて逃げたくなるし、正論を言われても困る。
そんなあまのじゃくな気持ちで生きているが、このまえ「今日が、今後の人生で一番若い日である」という名言でうっかりじーんとしてしまったのだ。
恥ずかしい~!
この体験を競技にしてしまうのはどうだろうか。これぞと思う名言を順に披露しあって、心動かされないように我慢する会だ。
つまり、怪談話のいい話版である。
名言に関心がなさそうなメンバーを選んだ。感動しないように頑張ってくれるだろう。
ルールはこうである
聞く耳を持たないという態度ではなく、素直にいいなと思ったら申告することにした。名言の朗読は住さんが行う。
(なのでこの記事は住さんがなぜいるかわからないのだが、現場では朗読係として活躍しています)
がっちりじゃんけんの末、與座→パリッコ→べつやく→林→スズキナオという順番になった。さっそく第1回である。
「う………」(林)
「むふふふ」(べつやく)
「ヘレン・ケラーが言ったと思うと重みがありますね」(スズキナオ)
「………やや当たり前のような気が…」(パリッコ)
「ヘレン・ケラーでぐらっと来たんですが、パリッコさんの指摘で耐えられました」(林)
「悔しい」(よざ)
このようにして、名言→反応という順番で次々と披露してゆく。次はパリッコさんのターンである。
パリッコ 第1手
「そのうち」なんて当てにならないな。今がその時さ
(スナフキン)
「………」
「………」
「これ飲みながらじゃないと…」(パリッコ)
「飲んじゃおうかな」(林)
後半になって分かってくるのだが、名言はパンチのように浴びれば浴びるほど効いてくるのだ。始まったばかりはまだガードができている。
べつやく 第1手
バッファローに追われて木のてっぺんに登るはめになったら景色を楽しみなさい
アフリカ(地域不詳)のことわざ
「なんか来たかも…」(パリッコ)
「わたしもちょっときちゃった」(與座)
「偉人から来ると思ってたら、地域不詳のアフリカ…誰でもない人が残したんでしょうね。
パーッと草原の感じが浮かんじゃって…軽く来ましたね」(パリッコ)
「引き込まれましたね」(スズキナオ)
この後明らかになるのだが、パリッコさんがアフリカに弱いのだ。
この名言を住さんが間違えて「楽観主義は気分によるものであり…」と読んでしまったため、ただの根っから明るい人の話になってしまった。
「………」
「いい言葉だなとは思いますが」(ナオ)
「楽観主義が気分だとただの明るい人ですね」(與座)
確かに気分で楽観主義がいちばんいい。読み違いに納得した。第1ラウンド、最後はスズキナオさん。
「高田渡ってところにぐっときた。よく考えたら違うかも。おれのものも見えるものあるし。」(林)
「人を感動させられるのはこんな感じなんですね。気分がいい。」(スズキナオ)
「難しかったな、僕には」(パリッコ)
「なに言ってるのか分からなかったんだ(スズキナオ)
「分からなかったとか言っても良いんだ」(べつやく)
感動するしない以前に、「わからなかった」という強い態度もあったのだ。
第1ラウンドでまだ反応が堅いのでハードルを下げるためにアルコールを入れることにした。
各自ハードルが下がったところで第2ラウンドである。
與座 第2手
人生において僕が気に入ってる事はお金がかからない事ばかりだ。結局、僕らが持っている一番貴重な資産は、お金ではなく時間なんだよ。
(スティーブ・ジョブズ)
「一人称の『僕が…』でできちゃいました。ライ麦畑~みたいで」(林)
「ジョブスの人生らしいですね」(ナオ)
「よーし、よし!」(與座)
パリッコ 第2手
自分で薪を割れ、二重に温まる。
(ヘンリー・フォード)
「いいすね。いいすね。パリッコさんらしいな」(スズキナオ)
「『薪を2回割れ』って出だしのインパクトが良いなと思って、いや、間違えた。」(パリッコ)
「本人が間違えてるのに感動させている」(林)
「あーそういうことか。わかった。あー」(與座)
「私も今わかった」(べつやく)
薪を自分で割ると体もあたたまるし、燃やしてさらに温まるという意味である。なぞなぞめいた名言だが、分かった瞬間に感動して3ポイント。
謎めいているのも感動の要素なのかもしれない。
べつやく 第2手
道に迷うことは道を知ることである
(タンザニアのことわざ)
「全部良く聞こえるようになってきた」(與座)
「すごくいい言葉でぐっときたところに、タンザニアでやられました。タンザニアかー」(パリッコ)
「タンザニアで迷うことって大変だから。」(べつやく)
「パリッコさん、アフリカにしか入れてないんですよ」(住)
「景色が広がっちゃうんですよ」(パリッコ)
タンザニアはここです
林セレクト名言2
人間は寝ちゃいけない状況でも、眠きゃ寝る。酒を飲んじゃいけないと、わかっていてもつい飲んじゃう。
立川談志(「赤めだか(立川談春)」より)
「酒の穴は?」(住)
「これ、あるあるじゃないんですか?」(パリッコ)
「言われるまでもないと言うか」(スズキナオ)
「あるある、って思っちゃった」(パリッコ)
「ふーん、というか。好きな言葉でありますが」(スズキナオ)
「名言をあるあるで片付けられるとは…(林)」
人間の業を表したこの言葉は酒の穴の共感を得られると思ったのだが「あるあるですね~」と当事者過ぎる反応でまったく感動されなかった。
酒の穴は落語に出てくる人たちだったのだ。
酒の穴を狙い撃ちした名言が大きく空振ったところで、酒の穴のスズキナオさんからはそれ持ってくるか、という名言が来た。
スズキナオ 第2手
そのときどう動く
相田みつを
「酔っぱらったトイレに貼ってあると『あしたからやるぞ』みたいな気持ちになる。酔った状態にチューニングされている」(スズキナオ)
「みんなで居酒屋で盛り上がって、仲間いいなーって思ったときに名言が目の前にあると来ちゃう」(パリッコ)
「聞き終わったあとに名前を聞いたので、フォントが変わった」(與座)
酔っているときにはこれぐらいのシンプルさがするっと入ってくる。新宿三丁目にいるような気持ちになる。
さてここまでの獲得ポイントである。
第1ラウンド | 第2ラウンド | |
與座 | 0 | 2 |
パリッコ | 0 | 3 |
べつやく | 2 | 2 |
林 | 2 | 0 |
スズキナオ | 1 | 1 |
いまのところ最高得点はパリッコさんのヘンリー・フォードである。
最後のターンである。全員が感動必至の強いやつを仕込んでいる、はずだ。
與座 第3手
「私はギャンブルが大嫌い。でも、一つだけ賭けてもいいと思えるものがあるの。それは自分自身よ。」
(ビヨンセ)
「翻訳文体だ」(べつやく)
「ビヨンセってところがいい」(林)
最終ラウンド、名言が強力だったのか、全員のガードが下がったのか分からないがいきなり満点がでた。選んだ與座さんも誇らしげである。
パリッコ 第3手
見てる人が“このオッサンら、ようやるわ”と思うてくれたら、強い。
(明石家さんま)
「おおー」(與座)
「これしかないだろって思ったんだけどな…」(パリッコ)
「よく分かってなくて…」(林)
「デイリーのことですよ」(住)
「こんなくだらないことを…っていう」(パリッコ)
「名言ってこんな説明するもんでしたっけ」(住)
「長いとわかんなくなっちゃって。相田みつをぐらい短くないと」(林)
続いてべつやくさん、特定の打者の弱点をつくように同じポイントに投げ込んでくる。
「ライオンが出てきたところでパリッコさんが落ちてる。アフリカに弱すぎるでしょ」(住)
「アフリカならなんでもいい」(スズキナオ)
「鳥肌立ったかも」(パリッコ)
「感受性がすごい」(スズキナオ)
「なんで?」(林)
「ライオンに食われない子羊がいたら相当したたかってこと」(べつやく)
「さっきの明石家さんまと同じことを言ってる?」(林)
「全然違いますよ」(パリッコ)
マリ
僕の名言に対する読解力に不安を感じる。
林 第3手
うんこより大事な用事はない
自作
「そう思うよ」(べつやく)
「よく自分のを入れたな」(スズキナオ)
「自作のでもいいですってルールに書いたからみんな1つは自作を入れるかと思ったんだけど」(林)
「林さん、この自作名言が『死ぬこと以外はかすり傷』に似てるってコメントつけて送ってきましたが似てないですよ」(住)
「いま検索したら『おしっこよりも大事な用事はない』って2017年に林さん書いてますね」(與座)
「與座さんの検索力のたかさ。」
自作の名言を入れて0点。なかったことにしたいぐらい恥ずかしい。
「これはちょっと説明させてください。たこ焼きを自分で焼ける居酒屋に取材に行ったんです。
僕は東京から大阪に引っ越したばかりで、同行していたスタッフに下手だ東京モノだ~ってからかわれていたんですが、居酒屋のお母さんがぐちゃぐちゃやっても焼けるのがたこ焼きだからって言ってくれたんです」(スズキナオ)
「これは、やばい」(パリッコ)
「それはいい話だ」(べつやく)
「これ、林さんがしゃらくさいって言ってた深イイ話そのものなんじゃないですか」(パリッコ)
「そうか、おれああいうのやりたかったんだ」(林)
「ナオさんとか知り合いがそういう目に遭ったって思って聞くと感動する。」(べつやく)
「でも自分はアフリカのしか入れてない」(住)
「ひとつも共感できない。」(林)
「バッファローに追われたことないし」(住)
当事者がいる、エピソード込みだと情景がリアリティを持って胸に迫るものがある。
このような得点になった。
第1ラウンド | 第2ラウンド | 第3ラウンド | 合計 | |
與座 | 0 | 2 | 4 | 6 |
パリッコ | 0 | 3 | 1 | 4 |
べつやく | 2 | 2 | 1 | 5 |
林 | 2 | 0 | 1 | 3 |
スズキナオ | 1 | 1 | 4 | 6 |
「林さんいいだしっぺなのに可愛そう。」(住)
「談志のとっておきのであるあるといわれたのが敗因でした」(林)
パリッコ:
いい名言ってなんだろう?作れそうな気がしてきました。
べつやく:
あるあるの要素がないと共感されないんじゃない?そのままじゃなくて。
パリッコ:
例えば、テストの前に部屋を掃除する、というあるあるを、例えばテストを"困難"とかにするとか。
住:
「人は困難を前にすると、掃除をするものだ」
パリッコ:
「身の回りにとらわれるのではなく、そのさきを見よ。」
ナオ:
アフリカ要素も入れたい
パリッコ:
ライオンの立場になって
「近くのネズミを追っているうちに、夕日が沈んでしまう」
與座:
「近くのネズミ」だけで、少しじーんとしたからなんでもいいのかも。
パリッコ
「近くのネズミを追いかけているうちに、遠くのシマウマが夕日のむこうに逃げる」
ナオ:
美しい風景をもりこんだ
名言なんかに心動かされるものか、という態度で始めたがしっかりスズキナオさんの体験やビヨンセの強さに動じている。
いや、もっとむしろ動かされたい、という気すらしている。
終わってからパリッコさんが「深夜にガンガンあびたいですね」と言っていた。確かにDJのように名言を繰り出して欲しい。DJ、VJに続くのは名言ジョッキーだ。
とりあえず終わってから名言集を買いました。
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