ホワイト社食、美味しかったです
ホワイト企業のために開発したホワイト社食。レシピは公開しておきますので、うちの会社こそホワイト企業!という会社はぜひ社食にとりいれてください。その時は綿あめははんぺんとか大根とか、溶けないものに替えてもらうといいかと思います。
ラクスという会社から社食を考えてほしい、という依頼を受けた。
しかも会社にちなんだ社食がいいという。聞くとラクスはホワイト企業であることをもっとみんなに知ってもらいたいのだとか。
ならば社食も白一色で作るしかないだろう。
作りました。
ラクスという会社から社食を考えてほしいという依頼を受けた。
聞くとこの会社、ホワイト企業であることが売りなので、それにちなんだ社食がいいのだとか。
ラクスは企業の社内システムをクラウドで提供している会社で、「楽楽精算」という交通費・経費精算のシステムなんかが有名である。それにちなんで「一分でできる楽楽弁当!」なんてどうかなと思っていたのだけれど、「ホワイト企業」を推すのであれば、やはり真っ白の社食を作るしかないだろう。
僕一人では塩おにぎりとかになりそうだったので、料理の得意なライター松本さんに事情を話して協力してもらうことにした。持つべきものは専門家である。いま当たり前のこと言ったぞ。
松本さんはフリーランスのアプリ作家なのでホワイト企業に勤めているわけではないのだけれど、企画趣旨を説明すると「前に会社員経験もあるので言わんとしてることはだいたいわかる」とのことだった。
ほんとかよ、と思ったが、相談してから数日後に「試作してみました」という松本さんから送られてきた写真を見てひっくり返った。
これは白い。そしてただ白いだけではなく、おいしそうなのだ。さすがである。
当日は松本さんの指定した食材に加え、編集部から僕と古賀さんとでそれぞれ一品ずつ持ち寄ることにした。
ところでホワイト企業ってなんだろう。
ラクスの広報早川さんによると、ラクスの考える「ホワイト企業」というのは
① 残業が少ない
② 有給や産休・育休がちゃんと使える
③ 社員を育てようとしている
④ 理不尽な事を言われない
⑤ 社員の意見を環境改善に反映している
これらを実践している会社なのだとか。
僕は以前働いていた会社で、席で鳥を飼っていいか総務部に聞いたことがある。ダメだと言われた。ならば魚はどうか、と食い下がったが生きものは全般ダメですと言われたのだ。あれは⑤社員の意見を環境改善に反映している、に抵触しているのでブラック企業だったのかもしれない。もしくは単に僕一人がブラック社員だったのか。
とにかく、こういう企業理念みたいなものは仕事以外の部分、たとえば今回みたいな企画への参加姿勢にも表れてくると思うのだ。そのあたりにも注目しながら調理を進めていきたい。
上の写真でささみの筋を切っているラクス対馬さんは人事部門の採用担当とのこと。仕事にやりがいはあるかと聞いたところ
「新卒、中途とわず毎年たくさんの方に入社していただいているので、その一人一人がラクスを支えるメンバーになってくれているんだ、と実感できるところがやりがいですね。」
と面接の模範解答みたいな答えが返ってきた。机の中に社長が隠れて操っているのではないかと思うくらいの完璧な答えである。
ちなみに今回の社食のメニューは以下のとおり
ホワイトソース煮込みハンバーグ
白ナポリタン
白オムライスと白まつたけご飯
ホワイトポテトサラダ
白桃とモッツアレラのサラダ
ホワイトデザート
作りながらレシピも載せていくのでみなさんも食卓を白くしたい時には作ってみてください。
ハンバーグを作るため、軽快にささみを叩くのは営業部伊藤さん。学生の頃ドラムを叩いていた経験が生かせてよかった、と。そんなことあるか。今は社内のスポーツサークルに入っているのだとか。
伊藤さんいわく「社内サークルはひとり3つまで入ることができて、半期ごとに部費が出ます」と。本当か。高い楽器とかを強引に買わされて給料から天引きされるのが社内サークルではないのか。
僕は特に今の職場に不満があるわけでもないのだけれど、こういう話を聞くと単純にいいなとは思う。探せば楽しい職場ってたくさんあるので、「仕事なんだからつらくて当たり前」みたいな発想で、がまんしたり体を壊したりするのは今の時代に合っていないのだろう。
今回の会話の中で僕が一番「ほんとかよ!」と思ったのは伊藤さんのこの話だ。
「目標に対して、自分なりに目的意識を持って立てた計画は尊重してもらえます。やってみな、と。それで目標が達成できなかったとしても責められたりはしませんね。」
よく考えて立てた計画がたとえ結果的に失敗だったとしても、それはそれで貴重な体験、という社風なんだそうな。この会社でならば僕も鳥が飼えたかもしれない。
そんなホワイトな話を聞きながらも、食材が次々と白く染まっていく。
鶏ささみのハンバーグは、ここからがすごかった。
鶏のささみなので焼くと白くなるのだ。これぞホワイトハンバーグである。さらに焦がさないよう、みじん切りにした白しめじを入れて作ったホワイトソースで煮込む。
■付け合せ
白しめじ 好きなだけ。
塩少々と白ワインで焦がさないようにフライパンで蒸し焼きにする。
ライター松本さんはフリーランスなので好きなだけ働けるし、好きなだけ休むことだってできる。かわいいネコも飼っているし、その気になれば一日中家からでないことだってあるらしい。それでいてしっかり収入も得ているわけで、言ってしまえばホワイト仕事の成功例だろう。
さっきの営業部伊藤さんの話だけど、社員の自主性を尊重する、というのはわかった。でもそれって新人さんとかには逆にハードルが高くてプレッシャーにならないのだろうか。
「いきなり放置されるわけではないんです。チームのサポートも手厚いので、不安よりもやってみよう!という気持ちになると思います」と早川さんはいう。
これには松本さんも「おれもホワイト企業で働きたくなった」と人生の舵を切ろうとしていた。
ハンバーグに続いては白ナポリタン。ナポリタンなのに白いとはどういうことなのか。
白ナポリタンに使ったのは松本さんが24時間かけて抽出した透明ケチャップである。色とか味はそれほど強くないんだけど、それでもなんとなくナポリタンだとわかる。
さらっと書いたが、すごい手間のかかりようである。
ほかのどこよりホワイトサイトであると自負するわれらがデイリーポータルZを代表して、編集部からも安藤と古賀が「ホワイト」をテーマに食材を持ち寄っている。
古賀さんといえば元祖ホワイト弁当の考案者でもある。
ラクスが提供しているサービスはクラウドで動く。クラウド=雲、ということで綿あめで表現するというのだ。大丈夫か、考えすぎではないのか。
ちなみに白いイチゴは早起きしてまで遠くのスーパーまで探しに行ったし、古賀さんも直前まで綿あめマシーンを手配していた。
これが上司からの命令だったりするとブラックだが、好きでやっているから仕方がない。ホワイト、ブラックなんていうのはもしかしたら本人の気の持ちようなのかもしれないですね。
なんて思ってる人はきっとホワイト企業に勤めている人なので、安心してそのまま仕事を続けていいと思いますよ。
今回の企画はラクス広報の早川さんの友だちで集まってもらったので女性だけになってしまったが、ラクス自体では男女比2:1くらいの割合なのだとか。もちろん男性社員も料理はするし、女性社員だって山登りとかに出かける。
ところで今回は広告記事である。話を聞けば、そりゃあ「うちはホワイト企業です」と言うだろう。
でも僕が今回の撮影で本当にラクス社員のホワイト企業らしさを見たのがこのシーンである。
えらい。岡本さんは旅行系の会社からラクスに転職してきてまだ1年弱らしい。そしてはっきりいって若い。それなのにできることを自分で見つけて、人に聞かずに動いてしまえるのはすごい。
こういう能力って、やる気を持って働ける環境じゃないと身につかないと思うのだ。やる気がないとサボることばかり考えるので。
ということで、ラクスのみなさんのはたらきっぷりに目を細めているうちに、ホワイト社食弁当が完成していた。
さすがホワイト企業のホワイト社食である。どう撮っても白い。
ふつう食べ物は、少し赤や黄色を強めて撮ると美味しそうに見えたりするものだが、そういう小技が通用しないのがこのホワイト社食弁当である。だってどう撮っても白いから。
ただ、試食したところ味は確かである。お昼にも間に合いそうなので、これをラクスへ持って行って社食としてみんなに食べてもらおう。
ラクス本社に到着した。
ワイワイいいながら楽しく料理をしていたままのテンションで来てしまったため、ドアを開けた瞬間、仕事中のみなさんの静かな熱気に押されてドアを閉めそうになった。
しかしせっかくみんなで作ってきた社食である。胸を張ってお届けしたい。行きましょう!
社内に帰ってきたからか、一緒に弁当を作ってきたメンバーたちも緊張気味である。ここで怖い上司が現れて「おまえらどこ行ってたんだ!全員クビだ!」みたいなブラックな発言をしてくれると記事のオチとしては最高なのだけれど。
作ってきた社食を食べてもらうため、社長はじめ数人に声をかけて集まってもらった。
伊藤さん、ちょっと待って、その弁当なにか足りなくないですか。
色彩が、とかではない。確認のためキッチンを出る前に撮った写真をもう一度見てみよう。
古賀さん肝いりのクラウド綿あめがなくなっているではないか。どうやら移動の間に溶けてしまったようだ。
作り直したクラウド綿あめを載せ、それではあらためてみなさん、社食をどうぞ!
まったく事情をしらない6名に僕たちが作ってきたホワイト社食弁当を食べてもらった。
どうですか?
今まで見たことがない白一色の弁当に戸惑いを隠せないラクス社員。まあそりゃあそうですよね。
味はどうでしょう。
「どれも不味くはないです。というか美味しいんだけど、なにしろ色がないから何でできているのかわからなくて……。」
僕たちは作るところから見ているので白の中にも元の色が見えているのだけれど、初めて見た人にとっては何もかもが白い弁当である。それを嬉しそうに薦められ、しかも食べてみるとなんとなく美味い。混乱して当然である。
全体にいい匂いがする(たぶん溶けた綿あめの匂いです)
全体にほんのり甘い(たぶん溶けた綿あめの味です)
温かいともっと美味しそうだなー
これ、いったいどうやって白く…
キッチンで試食してきた僕たちの感想とまったく違ったのが面白かった。凝りすぎて調理法が想像ができない料理は、安心して味わうことができないのだ。なるほど。
それでもみんな「よくわかんないけど美味しかった!」「ありがとう、ごくろうさま」と戸惑いながらもねぎらってくれたのが印象的でした。
動画でもどうぞ。
ホワイト企業のために開発したホワイト社食。レシピは公開しておきますので、うちの会社こそホワイト企業!という会社はぜひ社食にとりいれてください。その時は綿あめははんぺんとか大根とか、溶けないものに替えてもらうといいかと思います。
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