変な日本語を愛でるメンバー
実は最近中国では、自国製品への自信が高まったことから、日本製に見せかけた商品が減っている。変な日本語が減りつつあるというのは、3人の一致した見解だ。
そんな今だからこそ、変な日本語商品をじっくり鑑賞したい。
華村(以下、華)「基本形ですね。どっかの輸入雑貨屋で見つけまして」
ライスマウンテン(以下、ラ)「自然の風(簡体字)味とミネうル。いいなあ。」
あやら(以下、あ)「ピスタチオ系でよく見る変な日本語ですね。『う』と『ラ』の混同なんですが、これ変な日本語では定番のように思われるけど、最近は実際探してみるとなかなかないです」
華「天然モノでは見なくなった。見つけたら保護しないと」
ラ「ほんと少なくなりました。ところでピスタチオは結構いい値段しますよね」
華「いい値段しましたね。でもこれは思い切って買って食べました」
あ「日本語が変なだけですからね」
華「基本形でいえば、この『グしープ』も。輸入雑貨屋で見つけまして」
あ「『しヤービスケット』とかも。すがすがしいまでの基本形ですね」
ラ「ハンコっぽく書いてある『精製する』も、中国の日本語商品ではよくある表現で。フォントがたまらない」
将軍御用達マカロン
華「これなんですけれども」
ラ「『香ばしい風味』『後味が尽きない』とかはよくあるなあ。日本では使わないけど好きだなあ。」
あ「『ナポレオンパイナップルケーキ味』という味が攻めてます」
華「このパッケージ、実は裏面もなかなかな出来なんですよ。見てください」
華「宮中、歴代天皇、公家、将軍、名家、茶家ですよ」
ラ「大きく出ましたね。でも『御用を隠し』つつ、『御用デザートなど』なわけです」
あ「マカロンは将軍がいる時代からあったとな」
華「さらにその下も見てください」
華「成分表がやばいですね」
あ「製造者の住所がすごいですね。『マカオは士の大きい馬の道の飛を引き延ばして…』。これもはや、マカオが被害者ですね」
ラ「住所がこんなやばいのははじめてみました。いいなあ。あと『ボックスを賞味してください記載』も好き。その下の『および』締めとか」
華「下の方の赤字部分、包装に鎮静剤が入ってると書いてありますね」
ラ「おおっ、さらに原材料名の食品添加剤のところに『ケーキ速髪油』が。こ、これは」
あ「『単デュアル』は単なのかデュアルなのか」
ラ「単デュアル、語呂がいいですね!」
華「深い。僕も気づかなかったですが1枚でかなりしゃぶれますね」
ラ「いい作品だ」
あ「お菓子といえば、中国で白い恋人が人気じゃないですか。中国の友人に大阪の「面白い恋人」を渡したらパッケージの微妙な違いに気づかず『有名なやつだ!これ食べていい!?』と言われて、その後嬉しそうに食べてました。」
華「すべっちゃいましたね」
日本料理屋の変な日本語に引き寄せられて
華「日本料理屋です」
ラ「点を付ける場所がシャープですね」
あ「『一つ』のかかり方が全ておかしいのがいいですね。本来は『うなぎ丼一つ』で区切るのに」
華「あと最近ツイッターで出したんですけどこれですね『生きた魚の本日売価』」
ラ「ラノベ風味ですねえ」
あ「日本料理屋は変な日本語の宝庫ですね」
華「ラノベなら『本日売価』の読みはトゥディプライスですねとフォロワーさんに言われて、それがよくて」
あ「ジェネレーターを使ってラノベのタイトル風にしてみました」
あ「インパクトがあります!」
ラ「日本料理といえば提灯も定番でよく見ますね」
華「そうなんです、提灯に変な日本語よくあるんですよ」
ラ「ネットで『ボリ(改行)ュームたっぷり』っていう提灯は見たことがあって。それも物欲がわくんだけど、『ボリュームたそん』は初見ですわ。すごい!」
華「ここはちょうちんがいっぱいある店で、ぱっと見まともなんですけど、探せばゼッタイおかしいのがあるだろうと。必死に探しまして見つかりました」
ラ「必死にさがしてみるものですね」
あ「『たそん』は元々なんだったんだ」
華「さっきの「たそん」の店で見つけたんですけど。中国語では火鍋湯底、火鍋スープですね、この簡体字が…」
あ「ファンシーアイスコーヒー。ジャパニーズとイングリッシュはあってますね」
華「ジャパニーズとイングリッシュの違いがないのがポイントですね」
ラ「ファンシーがいいですねえ」
ラ「僕も日本料理系でいくつか。去年見つけた変な日本語です。よく見つける断定口調です」
華「『彼の出身地は筑地である。』江田島平八口調ですね。漢字も『築』じゃなくて『筑』だし、ディテールにこだわらないのがいいです」
あ「日本語の文法としては間違ってないけど、江田島口調なので違和感がありますねえ」
あ「おいしい食べ物私の好きな食べ物」
ラ「いい改行です。下の方、えびの握りだけ左に浮いてるのもいいですねえ」
華「一番右の『信じられない』の連呼がいかしてますね。『信じられないほどおいしい』を3回繰り返している」
ラ「ぱっと見でおかしいんだけど、よく見るとさらにこまごまとおかしいのがいい」
あ「珍しく中華フォントが使われてないですね。中華フォントの日本語は見てるだけで心が不安になります」
ラ「今後、中華フォントはなくなっていくんですかね。そうなると寂しいですね」
あ「そこは安心してください。日本語を学ぶ中国の学生さんを見てるのですが、全員中華フォントを使ってます。私が勉強を手伝うときは、まずフォントをMSゴシックかメイリオに変換することから始めますから。この文化はなくなりません」
ラ、華「よかった」
華「『新品の上場金メダル仕立て粉』。いいなあ」
ラ「ラーメン屋の広告です。金メダル仕立て粉がね、『金牌』、つまりいいものを使っていますよという意味で」
あ「中国語でよく出てくる『金牌』とか『正宗』とかは、どう翻訳していいかわからずおかしなことになることが多い」
華「たしかに中国語でありがちな金牌をどう訳すかですねえ」
ラ「結果的に翻訳サービス『百度翻訳』の機械翻訳の味わいがにじみでてくるわけですよ」
ダイソーのような無印良品のようなユニクロのような店
華「日本でも話題になった、中国の雑貨屋チェーンの『メイソウ』。あそこは変な日本語があったから抑えるじゃないですか。昔はいい感じの変な日本語があったんですよ。それが最近はまともになって面白くなくなってしまった」
あ「2年前にいったときはメイソウに版権もののキャラクターグッズがありましたね。サンリオとかピンクパンサーとかあって」
華「もうメイソウはまともになっちゃって、いまお勧めしたいのが『ゆうやと』なんですよ。うち、ゆうやとから徒歩3分なんですけど」
ラ「最高のロケーションですね!」
あ「ゆうやとはユニクロとダイソーと無印を足して3で割ったようなメイソウの、そのまた模倣なんですね」
華「『ゆうやと』からインパクトのある商品を。『オムレツデバイス』です」
ラ「名前がいいですねえ。改行の美しさよ」
あ「改行がおかしいのが素晴らしい。あと、これで焼けるの、オムレツじゃねえ」
華「実際の写真と実物が違いますね。ハートと星で。」
あ「店員に形が違うと言うと、だいたい『こっちのデザインもいいですよ?』と言われます。言い訳通りこして説得される。」
ラ「あるある」
華「値段は5元(80円)ですね」
あ、ラ「悪くない」
華「これ、『ゆうやと』のイチオシです」
あ「注目するところは『清潔に強いxizhi力だ』。日本語では絶対使わない『xi』からはじまるアレですね。」
あ「そのあとに『レーヨン毛が相対的に動物の毛よりも衛生(簡体字)的』、さらに『根性をもって』ときている。中国の翻訳のお手伝いをやってると「相対的で」「根性」は頻出単語なんですよ。」
華「僕のお気に入りは『あなたの手を牛耳る』ですね。『牛耳る』がいいですね」
あ「これは2000年代前半の香港で見た日本語プロダクションのような味わい。今ここまでのものはそうは見つからない。」
ラ「英語で80マイクロメーターになってるのに、日本語だと70なんですよ。あとURLの最後が大文字なのがたまらない。」
華「あとパッケージの下にある、ゆうやとの住所を調べてみたんですよ。中野のマンションで、焼き鳥屋の2階にありました。」
ラ・あ「中野!」
変な日本語は人によって視点が異なる
華村さんいわく、自分自身もコレクションしててかなりの数の変な日本語を見ているはずなんだけど、3人で鑑賞してみるとそれぞれちがう視点があって面白い、と言っていた。たしかに変な日本語の商品をつまみにあれやこれや語れた。
変な日本語の商品をよく見ると、いろんなところに独特な感性の表現が埋まっている。
これからも変な日本語商品の発掘を精進し、狩った商品を愛でていきたい。