台風が遠くにいるだけで雨が降る
林:
前回のお話では6月いっぱいは梅雨の長い休みに入ったということだったんですが、6月25、26日に雨が降りましたね。あれはなんだったんですか。
増田:
やっぱり台風が絡んでましたよね。そのへんの予報はコンピューターも苦手なんでしょうね。
もう晴れですよって言ってましたけど、台風2号が北上するタイミングで、梅雨前線がまたちょっと現れた。
林:
台風が来ると梅雨前線が現れるんですね。刺激されて。
増田:
梅雨前線は水蒸気と水蒸気があまりないところの差として現れるので、水蒸気がたっぷりあるところの最前線なんですよね。
林:
梅雨前線が消えたとき、前線として見えないけど水蒸気はあったんですか。
増田:
水蒸気はあることはある。前線として現れてないということは、湿った空気と乾いた空気の境目がはっきりしてなかったっていうことですね。空気同士が仲良くなっている。
仲良くなっちゃったので、ぶつからずに上昇気流ができないから雲もできない。
西村:
そこに台風で水蒸気のある空気がどんどん流れ込んできた。
増田:
そう、一気に流れ込んじゃうと乾いた空気との差ができちゃって、違う空気同士のぶつかりなので、上昇気流ができるということなんですけれども。
林:
仲良くなっていたところに台風がどんどん新しい湿気を送ってきた。
増田:
またコントラストができちゃって、仲悪くなった。
林:
仲良くなったとはいえ、そこまで湿気送ってくるとは聞いてないぞ、みたいな。
増田:
天気なんて結局、空気と空気同士が仲良くなったり仲悪くなったりの繰り返しってことですよね。
林:
仲が悪くなると雲ができて前線ができる。
増田:
梅雨前線は水蒸気の差って言いましたけれども、ほかの前線は温度の差のことが多いんですよね。
人間もそうですよね。温度差があればあるほどぶつかりますよね。
そうやってお互い意見をぶつけ合うことで、温度差が解消されて仲良くなる。
天気は哲学ですね。
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いま梅雨明けと言われても「まだだったの?」って言われちゃいそう
林:
6月25日から26日は梅雨としていいですか。
増田:
この数日間をどう扱うか。またこれは意見が分かれるところで。西日本は6月27日、東海地方はつい先ほど(7月4日)梅雨明けが発表されたんです。
関東甲信地方はかたくなに、頑なになにかを待っている。
林:
先週の末から北関東の方はすごい豪雨ですが、あれがあるから梅雨ってことですかね。
増田:
また人によって意見が分かれると思いますよ。
気象庁はおそらくこの一連の急な激しい雨とか雷雨、これがあるからまだ発表してないという理屈だと思うんですけど、でも、こんなの完全に夏の雨ですよね。
西村:
うん、夕立的な。
増田:
だからこれを梅雨として待っているのはちょっと厳しいんじゃないかなって思いますけれどもね。
林:
しかしいま梅雨明けですって言われても「うん、知ってた」ってなっちゃいますね。
増田:
確かに、「まだだったの?」って言われちゃいそうですよね。
5月24日から6月15日を関東甲信の梅雨とするとしっくりくる
林:
先月のクイズ「梅雨明けしたかどうか」での意見もきれいに分かれてます。
増田:
関東ですと、6月10日に梅雨入りして、今で20数日ですけれども、そのうち半分ぐらい晴れてますからね。
もうひとつ言うんだったら、5月のほうがもっと降ってましたから。
林:
本当だ。
増田:
5月24日前後、この雨が降ってるタイミングを梅雨入りとして、6月の初めに梅雨の中休みがありましたけれども、6月15日梅雨明けとすれば、ある程度の梅雨の期間はあった。
林:
梅雨入りを10日まで引っ張っちゃったから、15日梅雨明けとは言えない。
増田:
5月で梅雨入りだと思いますけどねって、僕は何回テレビで言ったか。
林:
気象庁から呼び出しはないですか?
増田:
今のところないです。
小林:
気象庁との温度差がなくなってきたのかも。
西村:
気象庁のほうも薄々あれは……とは思ってるのかも。
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増田:
たぶん気象庁の中でも意見が分かれてると思いますけれどもね
夏が長くなって梅雨が前倒しされている
林:
増田さんの見立ての5/24~6/15の梅雨って短いですね。23日間。
増田:
短さで言うと2018年の23日間っていうのがあるので、短いのはあるんですよね。
ただ、5月に梅雨入りして、6月半ばに梅雨明けがあるかもなって思ったのは、やっぱり暑い期間が長くなってるじゃないですか。
西村:
はい、夏の期間が。
増田:
夏の期間がだんだん長くなって、10月、なかなか涼しくなんないよねっていうのがありますよね。前の方にも暑い期間が前倒しになっていく。
暑い夏に押されて梅雨もぐっと前の方に行っておかしくないんじゃないかなと思うんですよ。
だから、5月に梅雨入りして、6月に梅雨明け、6月から夏が始まるっていうのも、夏が暑くなればなるほど、そういうのは当然可能性として出てくるわけです。
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西村:
梅雨がなくなるってわけじゃなくて、前倒しになるんですね。
増田:
いただいたコメントでね、2025年が、あそこがターニングポイントというのがありましたけれども、ありうるんじゃないかなって思いますね。
林:
もう梅雨シーズン2はないですかね。
増田:
もうないと思います。次に戻ってきたとしても、梅雨だねってとはならない。
林:
いま戻ってきても梅雨って呼んでくれない。
増田:
東京都心で考えると、ずっと晴れてて暑いですよね。
ずっと熱帯夜続いてるし、ずっと30度以上続いていて。
これを夏と言わずとして何と言う。
林:
夏が長くなるのを認めたくない気持ちあるから、まだ梅雨ってことにしたい。
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みなさまの見立ては拮抗
林:
前回、梅雨明けと見なすかどうかを聞きました。梅雨明けした56%。してない44%。
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増田:
意外と拮抗しているなと思いました。
林:
梅雨明け特定不能っていうのが2022年 には北陸であったんですね。
増田:
いちばん最初が1993年の大冷夏。タイ米輸入のきっかけになった大冷夏の年は天候が不順すぎてなかなか晴れないので、梅雨明け特定できずとなったんですよね。
西村:
来年も再来年もずっとなんかこんな感じなのかな
増田:
いろんなパターンが現れるでしょうね。
もちろん今までも梅雨にはいくつかのパターンがあって、しとしととどんよりしたぐずつく日が長い陰性梅雨と、晴れて暑くなる日もあるけど、降る時はざーって激しく降る陽性梅雨。
昔は大きく分けて2つあるよね。そういう風に言われてたのが、いろんなバリエーションが加わってくることになるんでしょうね。
林:
カーブとシュートだけだった時代が、今はもうめちゃくちゃ
増田:
いろんな球種がまざってきて、見極めるバッターの気象庁も大変だなっていう感じになりますよね。
梅雨の定量的な基準はない
林:
単純に累計の降水量が何ミリ超えたら梅雨明けみたいな、そういう基準はないんですか?
増田:
ないですね。
林:
それしないのはなぜなんでしょう。
増田:
夏の高気圧が張り出してきて、梅雨前線を北に追いやって夏空が広がるようになったから梅雨明けですって分かればいいんですけれども、夏の高気圧が弱まる年もあるし、ここ!って季節の線を決めるのって難しいわけですよね。
もうちょっと機械的にやった方が楽だと思いますけどね。
例えば、30度以上の日が続くようになり、そして晴れの日が1週間のうち5日以上はあるようになったらとか決めればいいのにって思うけど。
増田:
夏の台風は迷走しやすいので、日本の南で迷走したら水蒸気だけ大量に送り込んで、比較的カラッとしたところとの差ができて前線っぽいものができる、なんて可能性もあります。
林:
台風は接近や上陸が台風の被害だったんですけど、遠くにいるだけで影響が出るんですね。
増田:
少し離れたとこにいるだけで一気に大雨ってこともありますし。
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それぞれの梅雨入り・梅雨明けでいい
林:
梅雨明けした側の人の意見を見ていきましょう。
既に「梅雨」という季節がなくなっている可能性が大(かず)
西村:
梅雨明けした派もしてない派も基本的に梅雨の概念を疑っている。
林:
グダグダだねっていう現状認識は共通している。
増田:
結論を言うと、それぞれの梅雨入り・梅雨明けでいいと思うんですよね。
ちょっと前に読んだ昭和の予報官の人が書いた本で、小見出しに「それぞれの梅雨入り、それぞれの梅雨明け」って書いてあって。気象庁になんで梅雨入りじゃないんだ、なんで梅雨明けじゃないんだって電話がたくさん来たそうです。
予報官としては、それぞれでいいんじゃないですかってにじみ出てましたね、文章に。
林:
気象庁が季節の変化を発表してるのって梅雨だけですか。
今日から冬ですとは言わないですね。
西村:
春一番は発表しているけど、基準はありますからね。
増田:
具体的な数字の風速とかまで決めてますから。
林:
梅雨だけ発表したら、すごい受けちゃった。
増田:
今で言うんだったら、バズっちゃった。
でも、やめようって議論は過去にも時々されているんですよね。
で、1990年代ぐらいに、日付じゃなくて7月上旬前半・後半といった言い方にした時は大不評で。
国会でも取り上げられたらしくて、気象庁は逃げてるっていう質問があったみたいな話を聞きました。
西村:
政治の話になっちゃってますね。
増田:
それこそ100人いたら100通りの意見があるわけで。
いろんな声に押されて今の形に落ち着いていると。
林:
季節までお上に決めてもらわなくてもいいのに。
増田さんの夏バテ防止は青竹踏み
林:
増田さんへの質問もあります。
増田:
青竹踏み(断言)
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林:
急に具体的な答えが出た。
増田:
梅雨どき、毎年左足だけ、なんかね足の形が変わったような変な感覚になるんですよ。
それをちゃんと戻さなきゃっていうので、青竹踏みをすると、ちゃんとした足の形に戻ったような感覚になって元気になる。
林:
私の足の形が変わったから梅雨、ってテレビで言いにくいですね。
増田:
いや結構自信あるというか。
僕、朝1時50分ぐらいに青竹踏みやったりしてますね。まず起きて水飲んで、で、その後にちょっと昨日の疲れが残っている時に青竹踏み。
林:
1時50分が朝。
※増田さんは毎朝6時からのテレビ番組に出ているため、このような生活サイクルです。
7月の問題
増田:
今年は今のところ、甲府の6月17日に出た38.2℃が全国トップ。
西村:
7月の最高気温が今年の最高気温になる可能性もある。
増田:
年によっては8月の半ばにボーンってくる場合もありますから。
林:
天気予報見ると、そんなに暑い日はないですね。
ね、35℃ぐらいですよね。
増田:
経験上言っておくと、日本記録がこれまで何度か更新されてますけど、そのときに、1週間とか10日前から、このへん日本記録来そうなんて思ったことはなかったです。
じわじわだんだん高くなっていって、これは来るぞみたいな感じになる。10日前から日本記録ぐらいのレベルが来そうっていうのはなかなかわからない。
林:
突然やってくるんだ。
増田:
1週間10日前ぐらいは、なんか気温高い日続くよね~ぐらいなのが、近づいてくるとすごい高い壁だったみたいな。
林:
遠くから見るとそんなでもない。
増田:
高くない山に見えてたのが、近づいてくると、うわ、すっげえ高いじゃんっていうことがありますよね。もっと言うと7月下旬のほうが、これまでも記録が出てます。
一方で、いつもお伝えしている1か月予報の気温は、平年よりは高いんですが、若干右肩下がりな傾向が出ています。
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予想モデルによってばらつきはあるものの7月下旬になるほど下がっている
林:
お、そんなに上がってないですね
増田:
これをどう見るか。先に行くとよくわからないから平年に近づいてるだけなのか。
一方で、この毎日の積み重ねがどんどん積み重なって、雨が降らなくて冷めなくて、蓄積されて気づけば……!!ということも。
林:
豪雨があれば冷えますよね
増田:
1回リセットされますからね。それこそ戻り梅雨っぽい雨が2、3日あれば、そこで1回冷めますからね。
林:
台風が来ても冷めるわけですよね。
増田:
ですね。台風で1回雨が降れば、超高温は減ります。ただ、台風が近づいて、雨がたいして降らずに暑い空気だけ置いてったってなると……。
小林:
置き土産のように
林:
うーん、でも、きっとそんなでもなかったねってきっと来月言ってますよ。
増田:
今年の冬が12月寒くて、これは来るぞってなったけど、意外とそうでもなかったっていうのもありましたし。
林 39.9℃(市原牛久)
西村 40.1℃(伊勢崎)
林:
千葉県の牛久が注目浴びたらいい
※ アメダスに千葉県市原市牛久という観測点があります。茨城の牛久市ではなくて、市原市の牛久です。でもニュースで「千葉 牛久」と伝えるたびに、牛久は茨城だという電話が入るとの噂です。

