特集 2024年12月9日

最近の秋は短すぎ? 気象予報士・増田さん「いや、短いのはむしろ冬」

12月に入りました。
「今年は秋が短かった」。そんな声をあちこちで聞きます。
でも、それって本当?

気象予報士の増田さんによると、短くなったのは秋ではなく……。

(聞き手:編集部 林雄司、ライター西村まさゆき 書き手:ライター岡田有花)
 

1977年滋賀生まれ。お天気キャスター。的中率、夢の9割をめざす気象予報士です。 好きな言葉は「予報当たりましたね」。株式会社ウェザーマップ所属。
ツイッターでも気象情報やってます。(動画インタビュー)

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> 個人サイト ウェザーマップ・増田雅昭 ツイッター @MasudaMasaaki

「秋が短かった」とみんな言うけれど

――今年は秋が短かったですよね。

増田:それ、みなさんに言われます。「みんな感覚で話しているなあ」と受け流していたんですが。

――そもそも「秋」って何ですか?

増田:気象庁の区分では、9、10、11月が秋です。定義はそれしかない。気候は地域によって違いますし。

――秋は「快適な気候。夏より涼しく、冬ほど寒くない」というイメージです。

増田:では、秋を「9~12月のうち、快適な気温の日がある時期」と定義してみましょうか。

人間が過ごしやすい気温は20℃前後と言われています。そこで、最高気温20±3℃(17℃以上23℃未満)を「快適日」として、東京の気温から秋を考えてみましょう。

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「秋の快適な日」は減ったのか

増田:東京の9~12月の快適日がどれぐらいあるか、1974年~2024年まで、10年刻みで調べました。

9~12月の「快適日」数

1974年    36日
1984年    40日
1994年    36日
2004年    47日
2014年    30日
2024年    31日

どうでしょうか?

なんとなく減ってる気はするけれども、明らかに減ってると言えるかどうか。

10月に限定するとこうなります。

10月の「快適日」数

1974年    21日
1984年    22日
1994年    15日
2004年    18日
2014年    13日
2024年    12日

明らかに減っていますね。

10月の前半が暑くなっているから。今年は10月19日に観測史上最も遅い真夏日(最高気温30℃以上)を記録しました。

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12月前半は秋化している

増田:10月の快適日が減る一方、12月の過ごしやすい日 は増えています。今年の12月初旬は、東京の最高気温が16~17度ぐらい。これって、30年前の11月前半の気温なんですよ。

今年の12月の気温は、30年前の秋の気温。12月前半は秋化していると言えます。

東京では紅葉も12月になってきています。桜の開花と同様、気象庁はイチョウとカエデの紅葉を記録しているのですが、今年東京のイチョウは、過去最も遅い12月3日でした。

ちなみに、1950年ごろの東京のイチョウの黄葉日は11月上旬以前 。70年前と比べると、1カ月以上遅くなっていますね。

icho.jpg
(https://www.data.jma.go.jp/sakura/pdf/013.pdfをもとに作成)
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むしろ冬が短くなっている

増田:快適な気温になる「快適日」が多い時期を秋とすると、ここ数十年で、秋が半月~1カ月ほど後ろにずれてきているんですね。

その後の冬も、かつてほど温度が下がらない。1月後半~2月ごろに出る冬の最低気温も、近年は下がり切っていません。

――つまり、秋ではなく冬が短くなっている?

そうです。冬らしい寒さは、12月後半から2月前半ぐらいまでという年が増えています。その後の気温の立ち上がりも早くなっています。

関東あたりは「2月の後半が春化している」と言えるかもしれません。

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12月=秋、9月=夏の「リアル季節カレンダー」を

――クリスマスがある12月を「秋」と言いたくないです。

増田:そうですよね……。カレンダーを見ると、12月に冬っぽい絵が描かれている。気象庁も「12月からが冬」と言うから「12月は冬」という固定観念があります。

これからは、12月のカレンダーに思い切って紅葉を描くべきかもしれません。季節は、カレンダーの絵ではなく木の葉の色を見て感じてください。

冬は短くなり、夏は長くなっています。今年の9月は快適日が「0」でしたから9月は「夏」と言うべきではないでしょうか。

――今の気候に合わせたカレンダーを作るべきかも。

そうですね。9月にビーチを、12月に紅葉を描きましょう。最近は、2月に菜の花が咲いてきますから2月は菜の花。3月はもう桜ですね。

――「リアル季節カレンダー」ですね。

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11月のクイズの回答

11月の問題:東京の最低気温は?(小数点以下1桁までお答えください)
正解:5.5℃
(近かった方々・敬称略)
🥇メロポン・5.7℃
先月の回答理由とほとんど同じになってしまいますが、昨年と同じくらいの最低気温を予想しました。上空に寒気が入り、放射冷却で冷え込むとこのくらいまで気温が下がると思います。でも基本的には山勘です。
🥈ツトミちゃん・5.2℃
10月は少し高めに予想して外したので、今月はやや低めにしました。
🥈塩れもん・5.8℃
一応冬らしさを出してきそう

増田:5.7℃と予想したメロポンさんが一番近いですね。5.8℃の塩レモンさんも銀メダル。ツトミちゃんさんも5.2℃と、5℃台を予想していました。すごいですね。

私はコンピュータの予測データから「平年よりだいぶ高そうです」とお話しましたが、寒気が意外と来ました。雨も降って、気温が下がる要因が揃いました。

コンピュータが出した平均の太い線に引っ張られちゃダメ。心の目で、下がるトレンドをしっかり読み取らなきゃいけなかった。まだまだ修行が足りませんでした。

心の目で見なくては

 12月は寒気が次々と来そうです。コンピュータもすべての予想が「中頃までは平年より低い」と言ってます。

12月のクイズ

12月のクイズ:2024年12月の日本の最低気温は?(富士山を除く)

↓回答はこちらから!

増田:去年は、北海道・富良野で12月21日に観測された-24.4℃でした。

ここ数年で最も低くなったのは、2020年の大みそか。ものすごい寒波が来て、北海道・幌加内で-32.6℃を記録しています。12月の観測史上3番目に低い気温です。

今年の12月も、最低気温を記録する場所は北海道になるでしょう。ちなみに、12月5日朝までで一番冷えたのがー13.4℃、根室中標津空港です。

みなさんの予想は?

西村:ー21℃……だと高いかもしれない。-29.5℃。北海道・士別で。
林:私は-26.7℃。場所は「しばれフェスティバル」で行ったことがある北海道・陸別にします。
岡田:去年より少し高めの-24.0℃。北海道の土地勘がないので、場所は指定なしで。

(次回更新は2025年1月の予定です!)

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