特集 2023年7月13日

最高気温トップ20はもうすべて40度以上~気象予報士増田さんの詳しすぎ天気解説 7月

台風ってなんで通り過ぎるとカラっとするんですか

林:
台風って今年はどうなんですか。
増田:
まだ3号までですね。
林:
3号ってまだ少ないですか?
増田:
少ないですよね。どっかでは来る気はしますけど、台風もキープレイヤーになりますよね。台風が来てザーって降ったら一気に気温がリセットというのもある一方で、台風が直撃せずに日本の西側を通ったりすると、やたら暑い空気だけ運んできて、一層高温に拍車がかかる可能性はありますね。
林:
西側を通る?日本海側ですか。
増田:
西を通っていくと、台風は反時計回りなので南風が吹いてきて。  

増田:台風は反時計回りなので南風が吹いてきて。

林:
南風を吸い込んで。
増田:
反時計回りだから南風が入って、ここはやばいです。

林:
基本的な質問ですが、台風って近づくと大雨が降るのに通り過ぎるとスカッと晴れる。あれってなんでですか?
増田:
最初に南の海にあるときはこういう雨雲の形なんですよね。それがだんだん形が変わっていって、たとえば関東に近づくときはこういう感じの雨雲になります。

台風の雨雲の形の変化

林:
削られている?
増田:
そうです。台風って、最初は円形なんですけど、北に行くほど衰えていくのでどうしても形が変わる。西の大陸って乾いてるじゃないですか。だから大陸側の風を引き込んでくるので、乾いた風で削られていくんですね。 

増田:大陸側の風を引き込んでくるので、乾いた風で削られていくんですね。

林:
暑い空気は南から。
増田:
とくに東側が暑いわけですよね。
林:
そうすると…台風一過というのは。
増田:
基本的には西側から乾いた空気がやってきて削られていって、この辺はスカッと晴れてくる。中心が過ぎたらこんな急に晴れてくる。   

増田:中心が過ぎたらこんな急に晴れてくる。

林:
だいたい台風って夜に通り過ぎて朝になると雨がやんでますよね。まだ台風は仙台あたりにいるのに。
小林:
涼しいとかカラッとしてる。
増田:
ほんとにカラッとしますよね。逆に来る前が異様に蒸し暑かったりしますよね。
林:
蒸し暑い空気が通り過ぎても来ることはなくて。
増田:
コースに寄りますよ。例えば台風が。日本の西側を通っちゃうと、こうなるわけですよね。 

増田:台風が日本海を通ると、台風が引き寄せた蒸し暑い空気が日本を覆う

林:
東から、乾いた空気・台風・蒸し暑い空気という並びは変わらず?
増田:
そう。基本的にはこうなりますね。
だから、こうやって台風が日本海に入ったときとかは蒸し暑い空気が一層引き上げられるので異様に蒸し暑くなる。昔、山形市が国内の最高気温記録40.8℃。このパターンですよね。
林:
しかし、こんなに近くで天気の解説聞くの初めてです。

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線の書き方で気象センスが分かる

増田:
この、流線というんですけど、こういうところでセンスがわかっちゃう。

増田:こういうところでセンスがわかっちゃう。

小林:
何のセンス?
増田:
気象の。この線がなめらかに書けるかで。
こういうふうな矢印一つ風の流れ一つでも分かってるか分かってないかが分かっちゃう。
前線をテレビの前で書くってけっこうプレッシャーで、天気図の線なんてもっと緊張するし。
林:
でっかいタブレットみたいなので描く番組があるじゃないですか。あれ嫌なんですね。
増田:
嫌だと思いますよ。線の流れ方ひとつで、この人の気象のレベルこんなもんだなって思われちゃったりするから。
林:
これはスムーズ?
増田:
比較的スムーズ。なめらかに書けてる。

1936年の小説に登場する天気はいまも変わらず

林:
1936年に書かれた小説に天気予報が出てくるんです。
増田:
1936年は当然ありましたよね。新聞には福沢諭吉が出し始めていたから。新聞に載っているでしょうし。ラジオも始まっているのかな。

高気圧がオホツク海上にありまして……と、今朝の気象通報も同じ文句だ。アナウンサーがオホツク海をもちだすと、天気はたいがいオボツカない。 この二、三日、刺繡糸のような、細い雨が降り続く。

獅子文六.悦ちゃん(ちくま文庫)(p.5).筑摩書房.Kindle版.

林:
「オホーツク海を出すと天気はだいたいおぼつかない。」
増田:
すごい!いいですね。これ当時のですか?
林:
1936年のです。
増田:
嬉しいなー。アナウンサーがオホーツク海を持ち出すと天気はだいたいおぼつかない。刺繍糸のような細い雨が降り続く。
林:
関東の話ですね。
増田:
素晴らしい!
小林:
読みたーい!
林:
高気圧がオホーツク海にあるとおぼつかない。
増田:
そうです。梅雨の前半ってそのパターンが多いんですよね。
林:
ポイントは何なんですか。
増田:
オホーツク海高気圧というのが現れると時計周りなので、風がここからシューッとこういうふうに流れていきます。こんな感じで。

増田:風がここからシューッとこういうふうに流れていきます。

増田:
三陸沖って寒流(親潮)が流れているので冷たいんですよね。そこの上を渡ってくる風なので冷えてるし湿っているんですよ。
この高気圧の性格はクールで、そしてじめじめネチネチな。高気圧といっても晴れをもたらさない。
林:
そういうタイプの高気圧なんだ。
増田:
夏の暑い時の雨って大粒なのがザーッと降るじゃないですか。それに対して気温が低い時に降るのは粒がちっちゃくてシトシト。刺繍糸のような細い雨が降るということになるんです。
林:
小説の通りだ。オホーツク海高気圧がもたらした雨というのは梅雨前線は関係はない?
増田:
梅雨前線も関係しているんですけど、そういう気温低めの空気がメインにできているので雨の降り方としてはシトシト。逆に同じ梅雨前線の雨雲でも南側は蒸し暑い空気。ドゥワーって降ったりして。
林:
梅雨前線の南北で雨の降り方が違うということですか?
増田:
ということです。
林:
元の風が違うから。
増田:
そうそう。南とか西から蒸し暑い空気が来るので西日本で大雨になりやすいけど、関東は意外と6月はあんまり大雨は多くないですよね。

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