特集 2022年8月9日

暑さのピークはお盆、でもストーンとは下がりません ~気象予報士・増田さんの詳しすぎる天気解説~

気象予報士、増田雅昭さんに天気について聞く月イチ連載。

テレビの天気予報では聞けない細かい話、気象予報士の気持ちを聞いています。(構成:デイリーポータルZ編集部・林雄司)

 

 

1977年滋賀生まれ。お天気キャスター。的中率、夢の9割をめざす気象予報士です。 好きな言葉は「予報当たりましたね」。株式会社ウェザーマップ所属。
ツイッターでも気象情報やってます。(動画インタビュー)

前の記事:気象予報士・増田雅昭さんに聞く!いつごろ暑くなりますか?

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梅雨がもどってくるのは分かっていたし、世間がざわつくのも分かっていた

林:
7月は中旬、12~16日に気温が下がって雨が降りました。梅雨あけてないじゃんって声もありましたが、あれは梅雨の戻りと言うんでしょうか?

中旬に雨が降りました(気象庁ホームページより
気温もかくんと下がった(気象庁ホームページより

増田:
はい、そうですね。これはもう季節に一本の線を引くのがいかに難しいことを証明した年になりましたね。

林:
気象予報士業界ではこうなるのは分かってたことなんですか?

増田:
はい。梅雨の戻りがあるのは分かってたし、梅雨があけてなかったんじゃないかっていう声が出るのも分かってたし…、戻り梅雨なんてそんな都合のいい言葉があるのかと言われるのも分かってました。
戻り梅雨ってあるんですよ、そういう言葉。

林:
梅雨が戻ってくるのも分かってたし、世の中がざわつくのも予想していた。

増田:
はい。世論が二分されるというのも分かってました。

林:
天気の予報って気象だけじゃなくて、世の中の声の影響も大きいですね。

増田:
ほんとそうですよね。梅雨明けしてないじゃないかって言う人がいる一方で、あの6月の猛暑を梅雨明けとしてないなんてと逆の意見を言う人もいるし。みんな納得はなかなかないですよ。

「みんなが納得するのはなかなかないですよ…」

小林:
空気を読んでる。

増田:
気温や降水量・日照の多い少ないは必ず波になるわけですけど、それをどう判断するか。どうしても意見が分かれちゃいますよね。

林:
現象は波でアナログですもんね。それをイチゼロで決めないといけないから無理はある。ざっくり雑にまとめるとそこなんですかね。。

増田:
そこの理解者を増やしていくのも僕たちの地道な活動であり、こういう媒体ですよね。

林:
デイリーを読んでる人だけは理解してもらいたい。

増田:
普段の天気予報では、時間がないこともあって、そこまで言えないですからね。
ゆっくりたくさん話ができる場所で理解者をちょっとずつ増やして、そして怒られることを減らしていくのは僕たちのやることなんですかね。

林:
テレビの天気予報で、長く説明しているCMに入っちゃいますもんね。

増田:
プツッて切られます。アー!切れちゃった!って。

7月末・8月頭の高気圧はすきがあった

林:
7月後半から暑さが復活しましたが、7月1日桐生40.4 ℃は超えませんでした。

増田:
夏の太平洋高気圧の張り出しがいまいちで、やっと8月になって強まってきましたが、それでもまだ40℃は超えてないですね。

林:
増田さん、40℃を超える危険な暑さになるかもってツイートしてましたけど。

増田:
ならなかったですね。1~2℃とかの世界なので、ある意味誤差でしょうけど、誤差と言ったらなんでも正解になるのであまり誤差とは言えないですが。

林:
冬に雪になるかどうかが微妙なさじ加減と聞きましたが、40℃を超えるかどうかもいろんな条件が重ならないといけないですか。

増田:
そうなんですよね。8月に入って夏の高気圧が強まってきた。これだったら40℃行くなと思っていたんですけど、ここ数日関東の平野部でにわか雨があったりして、昨日(8/3)も都心で降りました。

林:
ありましたね。

増田:
僕は今の太平洋高気圧を過大評価しすぎていました。ほんとに強いときって、雲すらわかない。にわか雨とか雷雨なんてもってのほかという状況で、ずっと晴れて雲の発生・発達を許さない。
その下で熱が溜まって、高温になっていくんですけど、結果的にあっちこっちでにわか雨や雷雨が起こっているのを見ると、ちょっとすきがある高気圧なのかなって思います。

林:
昨日お昼ぐらいにアメッシュ見ていたんですけど、急に都会に雲がわいて、雨がダーッて降ってきました。太平洋高気圧が強いとそういうのも消しちゃうんですか?

増田:
地面が熱くなって空気が軽くなるので上昇気流が起こって、もくもくとした雲ができるわけなんですけど。
夏の高気圧が強いと、高気圧は下降気流なので頭を完全に押さえつけちゃう。せいぜいこのぐらいの可愛らしい雲で終わっちゃう。

バーチャル背景の雲で説明する増田さん

林:
昨日はまだそんなに厳しくなかったんですね。

増田:
押さえつけが厳しくなかったというか。完全に押さえつけていたら雲ができるすきもないんですけど、押さえつけが部分的に弱いところがあったし、そこのすきにポコポコって出たんでしょうね。

林:
なるほど〜。

西村:
一定じゃないということなんですよね。強さも。

増田:
自然なので押さえつけ方も一定ではないんですけど、高気圧が強いときは多少のムラがあっても完全に押さえつけてしまう。 

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暑さのピークはお盆、でもストーンとは下がらない

林:
8月の暑さのピークはいつ頃ですか。

増田:
お盆頃にピークが来るんじゃないかと思ってるんですよ。今日(8/4)の雨で一旦リセットされるんですけど、来週また晴れが続くので。

林:
気象庁が来週すごく暑いって警報みたいなものを出してましたね。

増田:
早期天候情報ですかね。来週また夏の高気圧が強まって特に関東から西の各地、かなり気温が上がるぞという気圧配置になってます。
これで雨がなければじわじわ気温が上がり続けて、ちょうどお盆の頃とかに高温が来るんじゃないかな。

林:
お盆ぐらいにすごく暑くなって、それで最後ですかね。今年は。

増田:
そうですね。ピークとなるとせいぜいお盆、お盆過ぎぐらいですよね。8月の中旬ぐらいまで。

林:
8月中旬にものすごい暑くなるけれどそれが最後だから楽しめってことですね。

増田:
この言い方も難しくてですね。夏を楽しむ人にはそういうコメントでいいんですけど、楽しむってなんだって、暑いと怒る人が多くなりますよ。

林:
そうか。暑いと怒る人が多い。

増田:
そうなんですよ。ピークという言葉も気をつけないといけなくて。ピークのあとはストーンと気温が下がるとイメージする人もいるので。
ピークは確かに越えているけど、まだまだ8月だから当然暑いわけですよね。

林:
いろんな気遣いが

増田:
僕たちは何に向かって天気予報をやっているんでしょうね。

林:
暑いと怒りやすいっていうのはおかしい。ピークはくるけどそこから急にストーンと下がるわけではない。

増田:
わけではない。まだ8月だから暑い。

林:
30℃前半とかは当然ある。

増田:
全然あります。

最高気温の記録が出るのは7月25日頃かお盆

増田:
ちょっと気になるデータがあって、最高気温の日本記録って、7月25日前後か、お盆の前後に出てるんですよね。
今の日本記録、熊谷の41.1℃が7月23日に出ていて、浜松の2年前の41.1℃が8月17日。その前に持っていた江川崎(高知県四万十市)の41.0℃も8月12日なんですよね。

林:
冬は経済活動が休みになる土日が冷えると言いますけど、暑さは経済活動に関係あるんですか?

増田:
これだけ暑いとあまり関係なさそうですね。

増田:
さっきの話の続きで言うと、多治見と熊谷が40.9℃の記録を出したのが8月16日ですね。その前の山形が長年持っていた40.8℃が7月25日。なので、7月25日前後か、もしくはお盆前後。

林:
お盆の気温に注目ですね。 

寒くなるのは北風の影響

西村:
一昨日ぐらいまでめちゃめちゃ暑かったのに今日(8/4)はもう30℃いかないぐらいですかね。1日2日ぐらいでこんなに10℃ぐらい気温が変わるのって面白いですね。

東京は8月4日にカクンと気温が下がった

増田:
今日は劇的な一日でしたからね。

西村:
今日が特別って感じなんですかね。

増田:
僕もこうやって気温が大きく変わる日って好きなんですけど。これはもう強制的に下がっちゃった感じですね。雨で冷まされた部分もありますけど、前線が下がってきているので北風が一瞬入るんですよ。関東は北風や東風が入ると気温が下がりますよね。

林:
なるほど。

西村:
北風の影響なんですね。でもそのせいで雨も降りやすくなるってことですよね。

増田:
これまで南風一辺倒だったのが、北風が入って、そこの風がぶつかるところ、行き場をなくした風が上昇気流となって、もくもくっと。

西村:
カミナリを。

増田:
カミナリ雲を発生させるということですよね。暑がりの人にとっては北風グッジョブ!って思ってるわけですね。

夕涼みってなに?

林:
昔の夏休みのイメージで、「夕涼み」がありましたけど、まったくいまリアリティがないですね。昔は夕方涼しくなっていたんでしょうか。 

夕涼みのイメージ

増田:
今に比べれば涼しくなっていたんでしょうね。せっかくだから気温を見てみましょう。まずは東京で今週暑かった日、8月1日は18時で31.3℃。

西村:
アハハハ。暑い

増田:
8月2日、18時33.4℃。

林:
ハハハハ。涼めない。

西村:
笑いが漏れますね、これ。
 

夕方とは思えない数字に笑いが漏れる

増田:
8月3日18時、31.2℃。

林:
夕涼みで縁側で座っているときは30℃切ってるイメージですもんね。33.4℃って昼間と同じ温度だ。

147年前の東京の夏は涼しかった

増田:
観測記録が東京で残ってるのは1875年から。残念ながら時間ごとの気温がない。でもこの日だって最高気温けっこういってますよ。1875年8月1日31.9℃。

林:
けっこう暑いですね。

増田:
でもでもでも。次の日は最高気温25℃ですよ。え、ちょっと待って。1875年8月4日の東京の最高気温21.5℃。

西村:
え〜!

小林:
涼しい!さむ〜!

増田:
次の日が22.5℃。

林:
寒いですね。

増田:
なんじゃこりゃ。最低気温が16℃台ですよ。3日連続16℃台。

西村:
寒いぐらいですね。

増田:
30℃超えてる日が8月で17日。

林:
へ〜!

増田:
14日間は30℃に達してない。 

驚きの147年前の夏の気温(気象庁ホームページより

増田:
1961年まで行くと、1961年から時間ごとの気温とかが出てきますね。

西村:
今から60年前

増田:
1961年。ネット上で時間ごとの気温が遡れる気象庁のホームページですね。ここまで来ると暑い日が増えてきていて、1961年8月1日の最高気温は32.6℃。暑いですね。ところが18時の気温は29℃。

林:
お〜!

西村:
あ〜!

増田:
良心的ですね。

小林:
良心的な気温って(笑)

増田:
この年の8月2日は暑くて34.2℃。

西村:
暑いですね。

増田:
暑いですけど、18時で29.2℃。良心的ですね。

小林:
30℃は切ってる。

西村:
良心的。

小林:
初めて聞いた。

増田:
8月の下旬に、1961年8月27日に35℃ちょうどまで上がってる日があるんですね。なのに18時は29.4℃。

林:
夕涼みできますね。

西村:
打ち水をするといいかもしれないですね。だから。それぐらい下がってるときに。確実に下がりますからね。

増田:
僕たちの記憶がある年を見てみましょうか。子どもの頃、85年ぐらい行ってみますか。

林:
いろいろあった年だ。

増田:
桑田清原のPLの年ですね。

西村:
暑かったような気がします。

増田:
8月上旬いきましょうか。8月1日31.1℃。あっ!ここまで来ると意外とダメですね。18時で30.4℃。良心的じゃなくなってくる。
ただ、翌日は31.9℃で、18時が29℃ですから、やっぱり30℃は切っている。8月18日、お盆の頃に33.9℃というのが高いかな。この日が8月の東京でいちばん暑い日なんですが18時30.8℃。ちょっと良心的じゃない。これぐらいまで来るとちょっと暑いんだな。

林:
1960年代は夕涼みがあったってことですね。

西村:
でもしたいですよね。

林:
今テレビで、今日は暑いので外に出るのをやめましょう、ってすごいこと言ってますよね。

西村:
ちょっと前では考えられないようなことを言ってましたね。

増田:
今年の8月2日の18時で33.4℃って衝撃ですよね。80年代と比べても衝撃的な数字ですよね。その日の最高気温は35.9℃。

林:
全然下がらないんですね。

増田:
そうですね。夜中でもすごいですもんね。都心だとセミがミンミンシャーシャーいっぱい鳴いてますもんね。昔の人が夜中セミが鳴いてるって聞いたらびっくりするんじゃないですか。

林:
ことわざになりそう。夜中のセミは〜みたいなね。

増田:
夜中のセミは〜の兆しみたいな。それが毎日のようになっている。

林:
夕涼みはかつて確かに存在した。これは温暖化しているということなんですか?

増田:
原因ってなるといろんなことが考えられますが…。
よく天気予報の世界で予報は嘘をつくけれども観測は嘘をつかないと言われるんです。予報は精一杯やってるんですけど、予報はどうしても嘘付いちゃう、外れることがある。観測に関しては事実で、その観測された値が結局気温が上がってるってことは曲げられない事実。
あとは原因が何か、理由が何かっていうところは、いろんな要素が組み合わさっていたりするわけですけど。

林:
観測の数字は実際に上がってきている。

増田:
地球全体が暖まってるという面もあるでしょうし、都市部で熱が冷めなくなっているというのもあるでしょうし。

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8月の最高気温は何度でしょうか

林:
8月も温度を予想してもらいましょう。

増田:
今の予報どおりであればお盆頃、前後にピークが来そうな気がします。
ちょっと気になるのが、高温記録が浜松で8月17日に出たように、お盆より少しあとに出て来る傾向が近年あるなと思っています。
今後高温記録が8月の遅い時期に出るようになるんじゃないかなって思ったりもしています。

林:
8月のお盆よりもちょっとあと。

増田:
お盆過ぎたら涼しくなるっていう定説だったのが、お盆のあとにピークがくるようになってきた?みたいな時代が来るようになるんじゃないのかなーと。

林:
ピークが後ろにずれている

増田:
あとのほうに出る可能性もありますよという予想のヒントを、さりげなく盛り込んでみました。

林:
そうなんですね。今年に限ったことではなくて?

増田:
今年も含めて、この先将来的に。

林:
なるほど。今年はもう40℃は超えないのかな。

西村:
あるんじゃないですか。

増田:
西村さんは自信満々に。

西村:
40℃超えぐらいは普通にするようになってきたというか。あとは、どこでかですね。

増田:
そうなんですよ。あっさり超えるときは超えるようになってますからね。6月下旬にまさか40℃超えましたし。
あとは8月で暑い日が続いちゃうと軽く超えちゃう日がたぶん来ると思うんです。ポイントは今日みたいにすっと北風が吹いてリセットされるかどうか。

小林:
リセットボタンが来るかどうかですよね。

林:
リセットされたら40℃の環境まで戻るのに何日ぐらいかかるんですか。

増田:
少なくとも5日、1週間は必要だと思うんですよね。簡単にそのあと2〜3日では急にというのはないと思いますね。そのリセットがあるかないかもひとつポイントですね。そこを見極めた上で回答していただくのがいいと思います。

林:
西村さんの予想は?

西村:
40℃。静岡あたり。場所は勘ですけど。山梨とか盆地で。

林:
関東勢が強いので、意外に伊勢崎なんてどうでしょう

増田:
今年6月に初めて40℃を超えて注目された伊勢崎ですからね。

林:
では僕は伊勢崎で40.2℃。伊勢崎。今年のってるんじゃないですかね。 

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