『空想都市』
つづいて、矢口先生による「空想都市」という課題。
空想の都市の地図と、その都市への訪問記を作ってくださいという課題だ。
この回答が本当に自由で、面白かった。たとえばこれだ。まずは訪問記から。
訪問記がとても面白いので、冒頭を書き写す。
またひとつ歳をとり、巨人調査隊への加入対象となった私は、避難エリア drain よりこの都市に潜入し、居住エリア W.M にて同胞からハザードマップを受け取った。(中略)巨人と遭遇したとき、彼らはすぐさま我々に攻撃を仕掛けるわけではなく、一度奇声を上げた後に所定の位置で武器を手に取ることが、長きにわたる調査により明らかになっている。
「巨人調査隊」という言葉で「進撃の巨人みたいな話かな」と思ってしまったが、読み進めるにつれここでいう「巨人」がなんなのか分かるのが面白い。叙述トリックのようだ。
これが空想都市の地図だ。各所に熱湯注意、ジェット警戒など、自分たちの生存のために重要な情報が書き込まれている。まさにハザードマップ -G- だ。こんな感じのゲームがあったらやってみたい。(と思って調べたら実際にアース製薬が作っているようだ・・。なんのことかもう分かりますよね)
「役に立たない機械」
つぎは中谷礼仁先生による「役に立たない機械」という課題。これは知っている人も多いかもしれない。よく出来ているが何の役にも立たないものを作るのだ。
まずはこれ。
サイコロの角が落とされ、そこに目が描かれている。なのでふつうに振るとだいたいは目のない面が出て、振り直しとなる。
しかし根気強く振っていると、10回に1回くらい、ちゃんと目が出るのだ。
こうなると目が出たこと自体がうれしい。やった!となる。しかし本来は何の目が出たのかが重要なわけだから、10回も振り直していたのでは役に立たない。
つづいてはこれ。
中央の機械が割り箸割り機だ。手前の割り箸たちは、この機械で割るためのもの。見づらくてすみません。
スタッフの方に実演していただいた。
ぜひ再生して割れるときの音を聞いてもらいたい。いい音なのだ。
機械としても、無駄のないつくりでよく出来ている。しかしこんなものを持ち歩かなくても手で割ればいいので、役に立たない。すばらしい。
つぎはこれ。
箱に赤い取っ手と、指先のようなものがついている。これをどう使うのかまったく想像がつかなかった。
これについては作者の栗原さんが実演してくれた。
なにが起きているのか見てみよう。
栗原さんが左から右に向かって歩いている。
だれか来た! すかさずウィンカーを操作して右を指し、自分が右にずれることを伝える。
無事すれ違えた。
道を歩いていて向こうから誰か来た時、お互いに同じ方向にずれようとして「あっ」となることはたまにある。そういうときにこの機械があれば問題が解決できる。
となると役に立ってるじゃんと思ってしまうが、時代が進んでこの機械をみんなが持ったらどうなるか。お互いがこの機械で同じ方向を指してしまって「あっ」となることは起こりうる。だから役に立っていないのだという。いいねえ。
つづいてこちら。
これについては、会場に来ていたお客さんがモデルになってくれた。
目が半分隠れているので謎の人物みたいになっているけど、全開になっていると思って見てください。赤くてちょっとおしゃれだ。
ふだんはこうやっておしゃれメガネとして使うが、授業で先生に注意されて嫌な気持ちになったときなどは・・
こうやって世界を閉ざす。現実逃避ができるメガネだ。
実際は目を閉じれば十分なので、役に立っていないということかもしれない。しかし写真に映えるのは間違いない。
こちらの方はオープンキャンパスに来ていた高校3年生とのこと。デイリーポータルZというサイトなんですが・・、と伝えたところ掲載してもいいですよと言ってくれた。いい人だ。
会場の外は高校生でいっぱいだった。みんなオープンキャンパスに来たんだろう。受験生を応援する気持ちになる。