未知の道具
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中谷先生による「未知の道具を作れ、もしくは図示せよ」という課題。
『道具を任意に選べ。
次にその道具を構成する部分を抽出し、それらのなりたちを調べよ。
さらにそれら部分となりたちの知見を用いて、その道具に潜む「未知のかたち」を作る、記述する』
すでにあるものを深く調べることで新しい可能性を探るということだろう。作品はこれが素敵だった。
実物を見ただけだとすぐには分からない。
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醤油を注ぐことで、皿に掘った紋様が浮かびあがる。さらにサーモクロミック塗料を使っているため、温度によっても色が変わるという。
醤油皿といえば磁器に模様を描いてあるものを見慣れているけれども、お皿の成り立ちを調べることで、かつては葉っぱや木の板で作られていたということにたどり着く。じゃあ彫って注ぐことで模様が浮かびあがるのはどうだ。いいねえ。
建築のおみやげ
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つぎも中谷先生による課題。
『建築のおみやげ
古今東西の有名建築のミュージアムグッズを試作します。
※建築以外の新しい機能(文房具、生活用品、アクセサリー、お菓子など)を与えること』
作品はこれがよかった。
対象となる建築はシンガポールの「Marina Bay Sands」だ。
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下からみたところはそっくりだ。
「実際にマリーナベイサンズを訪れた際に下から見上げた姿がバナナに似ていると感じたので制作しました。バナナスタンドなのに一本しか置けません。至高の1本をここに置いてください」とのこと。
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下から見るとこう。最高のおみやげだと思う。
役に立たない機械
つぎは中谷先生による名物課題だ。
『役に立たない機械(装置、機構、組み合わせなど)を作ってください。
※ 何かの役には立っていそうなのだが、それが何かは決して分からない機械です』
まずはこちら。
本を途中まで読んだら、ケースに本を入れて、読んでいるページのノンブル(番号)を暗唱番号として鍵をかける。
後日読み進めるためには、何ページまで読んだかを思い出さないといけない。ようするに通常の栞と逆のことをやる栞である。何かの役に立ちそうな外見をしているが、役に立っていない。
木琴のようだが、板の長さがぜんぶ同じなので、同じ高さの音しか鳴らない。そういう意味では役に立っていない。
じゃあ一本しかないのと同じかというと、そうでもないらしい。これで叩くと、なぜか脳内にメロディーが流れてくるという。
他人が叩いているとそうでもないかもしれない。でも自分でふつうの木琴のつもりで叩くと妙な気持ちになりそうだ。止まってるエスカレーターみたいな。
つぎは、木の板にモーターをつけた機構。
見事なのでぜひ再生してみてほしい。
板の一方の端にモーターがついていて、そこにいい感じに重りを載せることで、そこを軸として全体が回転しようとする。もう一方の端がなにかにひっかかると、そのまま進み出す。全体として机の周りを回るのだ。
石原さんの好きな建築は藤森照信のラコリーナ近江八幡とのこと。
重りとしてなにを載せるかが重要で、当初「老人と海」を載せていたときはよろよろとして進みが悪かったが、途中から私物のスマホに載せ替えたところ動画のとおりハキハキと進むようになった。
スマホから壮麗な音楽が流れているのもいい。役に立っているのか立っていないのかよく分からないけれども、魅力的な機械だ。
逍遥記
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矢口先生による課題。
『7日間、毎日自分が暮らすまちを最低30分間、目的地を決めずに散歩してください。なるべく、ゆったりとしたペースであるき、自分の歩いた跡を記録してください』
上の写真に写っているのは、『30°の魔法』の作者である坂南輝さんだ。好きな建築は安藤忠雄の司馬遼太郎記念館とのこと。
作品を見てみる。
表紙をめくると、はじめに、として次のように書かれている。
『歩き慣れたこの街も知り尽くしたと思い込んでいるだけで、ふと視線を上げてみると、そこには初めて訪れた街のような新しい世界が広がっている。』
つまり目線を30°上げて街を歩いてみたということだろう。
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信号待ちをしているとき、ふつうは向こう側の信号をなんとなく見ている。しかし目線をあげると、そこにはこちらがわの信号機の背面が見える。

するとその裏側は意外に個性的なのだ。作品にある縦縞が見える器械はおそらく信号電材製だろう。

別のメーカー(三協高分子) だと背面はのっぺりしていたりする。ランプも都心だとLEDが多いが、すこし離れるといまでも電球式が残っていたりする。そういうことに気づく。
坂さんは『交わす』の作者でもある。すばらしい。
空想都市の地図
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つづいても矢口先生の出題。
『空想の都市の地図を制作してください。時代や場所は問いません。』
というもの。空想地図は趣味で書く人はいるけれど、課題で書くこともあるのかと思う。なお矢口先生は都市空間の専門家である。
写真に写っているのは中央の「北京2500」の作者、高田春香さん。『あの子の特等席』の作者でもある。好きな建築は山本理顕の横須賀美術館だそうだ。
作品はこれ。
いまから500年後の北京だそうだ。家が積み木のように重なったり、空に浮かんだりしている。
中国では「一人一宅」政策によって一人ずつ家が与えられることになったという。技術の進歩によって家は空に浮かんでいた。しかしやがてエネルギーの供給が破綻し、家は浮かんでいられなくなり、地面に積み重なっていった。いまでは富裕層の家だけが空に浮かび、格差社会を象徴している。
・建築学科かー、いいなー(一緒に来たお母さん)
・この席だいすき(「とな離」の端っこの席を指しながら)
・高2からオーキャン来てるけど、この授業とりたいなあと思ってます(大学1年生ぽい)

