おどおどしながら会場へ
夕方の電車を乗り継ぎ、ぎこちない足取りで盆踊りが行われている神社をめざす。
ぎこちないのは履き慣れない下駄と着慣れないゆかたのせいもあるのだが、加えて会場に近づくにつれ、輪に入れなかった時のことを想像して足がすくむ。
しかし駅を降りてしばらく歩くと容赦なく太鼓の音が聞こえてきた。
近いぞ。
たぶんこれ、一人で来てたら引き返していたんじゃないだろうか。編集部石川さんに撮影をお願いしてよかった。
この時点では義務感8割、見栄2割、意を決して神社へと続く階段を登る。
長い石段を登っていくと踊りの中心のやぐらがてっぺんから徐々に見えてくる。
登りきるとやぐらの下には憧れの踊りの輪が3重にもなって揺れていた。時間的にまだ始まったばかりのはずなのに、会場はすでに完全に温まっている。出遅れたか。
輪の中では30人くらいの男女がびしっとゆかたを着こなして踊っている。踊りもぴったりと気持ちよく揃っていてまさにつけいる隙もない。
憧れの輪に童心に帰りしばし見とれた。
突っ立っていても始まらない。
まずは輪から遠いところで踊りを練習することから始める。なにしろあの揃いようだ、まったく踊れない僕なんかが入りこむ余地なんてない。
いとも親密に踊る大人達を横目に見ながら、その動きをコピーすべく手足をぎくしゃくと動かす。
しかし意識を集中すればするほど右手右足が同時に出たり腰が曲がったりして、目指す形から遠ざかっていくのだ。
これ、混じるの無理なんじゃないのか。