からすみ作りは楽しいな
適当につくったタイのからすみ、最初はどうなることかと思いましたが、かなりおいしくできました。からすみを食べ慣れない舌と身内びいきの組み合わせでの評価ではありますが。
ちょっと時間はかかったけれど、お金はちょこっとしかかからなかったです。作る過程も手探りなのがまた楽しく、できたからすみが全然もったいなくないので、豪快に料理に使えるのもまたよし。
ウニ、コノワタと並んで日本三大珍味とも呼ばれるからすみ。値段がかなり高いという話なので一度も食べたことがなかったのだが、魚好きの大人としては一度くらい食べておきたい。
高いといっても数千円程度だろうとデパートに行ってみてビックリ。長崎県産からすみに17,850円という景気のいい値段がついていた。しかもよく見たら100グラムあたりの値段だった。写真右のからすみは、163グラムで29,095円也。魚卵というよりも小判の値段だ。
これはちょっと「二日酔いに絶対効く!」とかの枕詞でもないと買えない金額である。仕方ない、作るか。
※2008年7月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載しました。
からすみの材料はボラの卵。ボラというと、当サイトを運営しているニフティの近くの川などでもたまに見られる、わりと身近な魚である。
こんな身近な魚の卵なのに、タラコよりもイクラよりも高いなんて。もしかしたら下手なキャビアよりも高いかも知れない。
からすみを作るために、どっかでボラを釣ってこようかと思ったのだが、知り合いのお寿司屋さんに聞いたらボラが抱卵しているのは秋から冬だといわれてしまった。今の時期は釣っても卵がないらしい。
さて困った。もう今すぐにからすみを作ってみたいのに。
しかし、からすみについて本やらネットやらでよくよく調べてみると、ボラだけでなくいろいろな魚卵でつくられていることがわかった。香川県ではサワラ、遠くヨーロッパではタラやマグロの卵を使うらしい。魚の卵巣を塩漬けにして墨の型に干したらなんでもカラスミになるっぽい。
なんだ、じゃあなんでもいいやと魚屋に買い出しへ。入手しやすいタラの卵でも買おうと思ったのだが、それだとカラスミというよりただのタラコになってしまいそうなので、アラコーナーにあったタイの卵を買ってきた。
ちょっと小振りな卵だが量は充分。これだけあれば一生分のからすみができるに違いない。
からすみを作るには、まず卵巣を包む膜にある血管から血を抜くことからはじまるらしい。
膜を破らないように竹串で血管に穴をあけ、そこから血を絞り出す。この作業は仕上がりの見た目の問題らしいので別にやらなくてもいいみたいだが、やってみるとすごい狭い範囲でのお医者さんごっこみたいで楽しい。血栓除去とか。
このように膜をやぶらないように丁寧に卵を扱っているのだが、この卵、残念ながら最初から思いっきり膜が破れている。
売っているからすみを見るとわかるのだが、もともと卵巣は二つがセットでつながった状態なのだが、この卵は一腹分が半分に分けられてしまっている。つながっていた部分が切れているのだ。
これでは破れたところから卵が全部流れ出てしまうのではという不安があるのだが、買い直すのも面倒なので、とりあえずこれでいってみよう。
あまりに破損が酷いものは、春雨ヌードルに入れたらうまかった。
下処理をしたタイの卵をバットに並べ、からすみの第一段階である塩漬けにするために、上からたっぷりと塩をかける。塩の分量がよくわからないが、腐ってもタイとはいうが腐るとイヤなのでタップリと。
これで卵に含まれている余分な水気がでてくるはず。
ラップをして冷蔵庫に入れ、翌日見てみると、もう水がたっぷりとでていて焦る。冷蔵庫から出すときに少しこぼしてしまったではないか。
実はこの出た水がうまい!という話は聞かないので全部捨てようと思ったのだが、お金を払って買った卵から出た水なので、捨てるのがなんとなくもったいない。そこでこの塩水にアユを漬け込んで焼いてみたら、表面が海臭くなってうまかった。
さて毎日水を捨てて一週間、魚卵が一回り小さくなって水が出てこなくなったら塩漬け終了。
塩漬けにした魚卵、このまま干すとさすがに塩辛いので、ベーコンなどを作るときと同じように、しばらく流水につけて塩抜きをする。
さてどれくらい塩抜きしたらいいもんなのだろうと迷ったのだが、今回は卵巣が小さいので塩も早く抜けるだろうということで1時間にしてみた。やったことのない料理はこういう「迷い」が楽しい。料理というよりは実験だが。
この塩抜きで、膜の切れ目から卵がこぼれていかないかとヒヤヒヤしていたのだが、全然大丈夫だった。
からすみの作り方を調べていたら、塩抜きしてからすぐ干すやり方と、日本酒に漬け込んでから干すやり方があったのだが、せっかくなのでより面倒くさい後者にすることにした。
ジップロック(っぽい袋)に塩抜きした卵を入れて、そこにドボドボと日本酒を注いで密封。
この状態で冷蔵庫に一週間入れておく。この漬けておいた酒を捨てるのももったいないので、この酒でカマスの酒干しを作ったら、遠くの方で珍味の味がしてうまかった。
からすみ作りは途中でうまい干物ができてお得だ。
酒漬けにした魚卵をよくキッチンペーパーで水気を切って、さあ外で干そうと思ったら、雨がザーザーと降っていた。仕方がないので冷蔵庫で干す。狭い冷蔵庫の中でとても邪魔。
うーん、冷蔵庫だとなんとなく雰囲気がでない。やっぱりからすみは梅雨時に作るもんじゃないね。
二日後にようやく雨がやんだので、待ってましたとベランダで干す。カラスや猫に襲われると困るので、魚干しネットに入れてみた。
天気予報とニラメッコしつつ(オールドスタイルな表現)、外に干したり冷蔵庫に干したりして一週間。どうやら途中で腐ることもな、く無事干し上がったようだ。
形はてんでバラバラだけれど、色つやや香りはとてもいい。からすみと言い張っておきながら、ぜんぜん墨の形をしていないのはご愛敬。
このままスニッカーズのようにかぶりつきたい衝動に駆られる。
うまそうなのだが、いかんせんサイズが小さいので、からすみというよりは干し柿とかグミキャンディーとかアンズの砂糖漬けっぽいのが残念ではある。
できあがったからすみ、これだけを食べても本当にこれが正しいからすみなのかが判断つかないので(素材がタイの卵という時点で正しくないが)、思い切って比較用にからすみを買うことにした。とはいっても、さすがに三万円のは買えないので、オーストラリア産のボラからすみスライス、13グラム1,575円のを購入。
ついでに、できあがったからすみを、酒粕と味噌をみりんで伸ばしたものに漬けた、からすみの粕漬けも用意してみた。
用意した三種類のからすみを、大根と一緒に皿に盛る。からすみといえば大根なのらしい。もちろんちょっといい日本酒も用意した。
手作りのからすみと市販品を食べ比べてみると、やっぱり結構別物だった。まず干し加減がぜんぜん違っていて、市販品は水気が少なく、よりぎゅっと詰まった感じである。
手作りのからすみは干す時間が短かったのか、塩っ気が足りないのか、あるいは根本的に素材が違うからなのか、比べると水分が多くて柔らかい。からすみというよりはタラコをイメージさせる歯ごたえ。
卵のツブツブも、大きさ自体はだいたい同じなのだが、市販品は一粒一粒がしっかりとしていてる。だからといって、市販品のほうがおいしいかというと、どっちもおいしい。
からすみとしてどっちが正しい、正しくないという問題はあるかと思うが、それはよくわからないので不問としたい。
粕漬けにいたってはさらに水分が多く、普通のからすみよりもマイルドな味。プロレスとレスリングが違うように、普通のからすみとは別のルールになっている。
普通、粕漬けにすると味の個性が強くなるものだが、からすみは元々の個性が強いので、逆に食べやすい味になったようだ。そして一緒に食べる大根が酒粕のおかげで奈良漬けっぽくなってとてもうまい。お得である。
食べ比べた結果を表にまとめてみた。
どれもしょっぱくてうまい。日本酒との相性はさすがに最高。味に甲乙つけがたし。からすみに貴賤無しだ。
食べ慣れていないものは、味の違いがよくわからない。
ひとりで食べていてもこれが本当においしいのかどうかよくわからなくなってきてしまったので、当サイトの編集会議に持っていって、ライター陣に試食してもらうことにした。市販のは全部食べてしまったので手作りからすみだけで申し訳ないが。
この日は編集部の林さんや工藤さんが買ってきたお土産の珍味類が会議の机に広がっているという、まさに「できあがっている」状態で、からすみの試食に最適な状況。
怪しげな手作りからすみにも、皆さんの手が躊躇なく伸びていく。
味については、比較対象のない状態ではあったが、とりあえずおおむね好評のようだった。
からすみだけの試食では珍味本来のポテンシャルを発揮できないのではと、途中のコンビニでワンカップの日本酒を買ってきたのだが、やっぱり日本酒とからすみは合う。さっきから延々珍味を食べ続けていたので、どうにも酒がうますぎる。
※普段、会議中に飲酒をしたりすることは決してありません。
私の発表が終わり、次は石川さんの番だ。真剣に聞いて適切なアドバイスをしなくては。
会議中に酒を飲むのは、いかなる理由があってもダメだなと思った。
ごめんなさい。
適当につくったタイのからすみ、最初はどうなることかと思いましたが、かなりおいしくできました。からすみを食べ慣れない舌と身内びいきの組み合わせでの評価ではありますが。
ちょっと時間はかかったけれど、お金はちょこっとしかかからなかったです。作る過程も手探りなのがまた楽しく、できたからすみが全然もったいなくないので、豪快に料理に使えるのもまたよし。
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