あの頃したかったことがかなった
ちゃんとした青春を過ごしてこなかった学生時代。あれから10年以上経って憧れの体験をすることができた。胸がいっぱいである。
あと、この撮影をきっかけに制服とかつらとマネキンが家にあるのですが、家に誰か来ても大丈夫なやつですか?
先日、下りのエスカレーターにて、高校生のカップル並んでいた。乗ったとき、下段に彼女、上段に男子がいて、それはいちゃいちゃしているのをその後ろにいた自分は「青春だな」と感じながらあたたかい目で見ていた。あまりの甘酸っぱさによだれが出てしまう。
自分が高校生の頃は、友だちと森にエロ本を探しに行ったり、ネットのあれやこれやなど、そんな甘酸っぱいことなんてしたことなかった。自転車の荷台に彼女を乗せて、談笑しながら二人乗りをして走ったりとかしたい。もう、したいのです。
あなたはどんな青春時代を過ごしてきただろうか。勉強やイベント、友人と遊んだりと楽しい学生生活をしてきた人もいれば、数人の友だちとのひねくれた高校生活(それはそれで楽しい)を過ごしてきた人もいるかもしれない。
あの頃は彼女と帰っている人、彼女とベンチに座りながら何気なく笑っている人などをうらやましく思いながら横目でしっかり記憶に残こすように見ていたものである。うらやましかった。うらやましすぎて、絵の練習をして女の子を描いてどうにかならないかと試行錯誤したことは、今ではしまっておきたい思い出です。(あまりの絵心のなさに挫折した。)
その中でも、2人乗り(本当はよくない)をしながら帰る男女がうらやましかった。いまだにやったことがないのでどんな気持ちになるのかを体験してみたい。
ただ、誰かに頼むと今日でデイリーでの連載が最終回になる可能性もあるので、マネキンでやってみることにした。マネキンなら人じゃないので安全であるし、訴えられない。
自転車は家から持ってくると1時間以上かかるので、レンタサイクルを借りることにした。スマホで会員登録をして、表示された地図でレンタサイクルの場所を調べて、そのまま予約をすれば簡単に乗れる。決済は携帯電話のキャリア決済にも対応しているので支払いは簡単だ。最初は戸惑ったが慣れたらとても便利である。
コンビニに止めておいたら、サドルを盗まれたり、鍵を壊されて盗まれたりすることもあるがそれがないのがありがたい。そういえば、高校時代盗まれたことがあったな。
この日、空からは雨がふりそそぎ、地面をぬらしていた。ただ、彼女との間には雨なんて関係ない。
今日は彼女と一緒に帰る日。自転車に乗せて帰ろう。途中、ゲームセンターや公園に行ったり、ファミレスに寄り道してから彼女の家の近くまで送ってあげたい。でも、帰りたくないから無駄話を長めにしてしまったり、そんなことをしたい。
自転車も借りたのであとは彼女を作らないといけない。アマゾンでマネキンを買った。お付き合いをお願いしますと言いながら注文を完了させた。注文完了の文字が出てきたときには、告白に成功したのかと思って震えた。
余談だが、マネキンを買おうと思い、ショッピングサイトを見てびっくりした。3万円以上するのだ。安いマネキンを探したら、空気を入れるタイプのマネキンを見つけた。これが恋のはじまりだった。
空気を入れるのに思っていた以上に体力がいる。自転車屋に行って自動の空気入れを借りようと思ったが、「彼女に空気を入れてもらえませんか」と言った瞬間に110番される可能性もあるので自力でなんとかした。
ふくらませている途中、あまりにも大変そうな姿に撮影を手伝ってくれた編集部の安藤さんが「手伝おうか」と声をかけてくれたが「ぼくの彼女なんで」と断った。そのあと「怖い」という発言が何度か安藤さんの口から出たことは、彼女には言わないでほしい。あと、親にも。
「口に空気を入れるところがあったらこの記事ボツになる可能性もあるね」と担当編集安藤さんからの言葉があった。それだったら趣味でやることになるので、それはそれで思い出だね。
空気を入れてはじめて20分ぐらいだろうか。ようやくマネキンが完成した。長いようで短かった彼女作り。長いようで短かったって卒業生の言葉みたいだな。
これで自転車に乗せるだけだと思っただろう。これじゃ彼女の感じがない。なので制服を着させます。
ワイシャツを着させるとき、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ興奮している自分がいた。人生、冷静になったときが負けの瞬間がある。今だ。
おしゃれアイテムをつけてこれで完成、じゃない。かつらも買った。おれはこういう撮影にも全力で挑む男だから。
ちょっと前に映ったのは目の錯覚です。今日はゆっくりおやすみください。
これでようやく彼女ができた。ありがとうございます、これから2人で幸せになります。
借りた自転車に荷台がなかったので、足をテープで固定して乗せた。かなり前傾姿勢になったが、きっと彼女も一緒に乗れるのを楽しみにしているのかもしれない。
今回、2人乗りをしているときの彼女の目線も知りたい欲求があるので、頭にヘッドストラップでスマホをつけて走ることにした。自分が走っているとき、彼女が見ている景色を知りたいのだ。
カメラをつけた彼女を見て、安藤さんが「怖い」と言っていたが、「彼女の見た目」と「これが載るのかと思うと...」の2つの意味だった。
学生の頃、かなうことのなかった体験をしている。こんなにもドキドキするものなのか。過去に戻って「いまはそんな感じだけど、将来楽しいことがあるぞ」と伝えたい。それがこれだと知ったらきっと驚くだろう。
前のめりで背中に当たるマネキンに人のおもかげを感じる。まるで本当に後ろに乗せているような感覚だ。いいぞ、これはいいぞ!
この間あった面白い話や進路の話など、他人から見たら面白くない話かもしれない。でもいいのだ。一緒にいるこの時間が楽しいのだから。自分はそう思っていた。だが、彼女は違ったのかもしれない。カメラの映像を見たらショックな光景が広がっていた。
彼女はつまらなかったのもしれない。ずっと空を見ていた。(はやく帰りたいなー)と思っていたのかもしれないと思うと落ち込む。お前にふさわしい男になりたいよおれは。
雨が強くなってきた。傘をさしたいが持てないので、彼女に持ってもらうことにした。これ、あいあい傘だ!やった!!これもやりたかったことなのでよかった。こんなにも夢がかなう日ってない。最高の1日を過ごしている。
彼女も喜んでくれるかもしれない。走り出した2人の自転車(レンタル品)は多摩川の河川敷を走り抜ける。止められない。
最初にも言ったが、後ろに乗せている感覚があるのがとても青春を感じさせる。もしかしたら違うかもしれないが、いつだって自分がそうだと思えば、青春はそこにある。
しかし、彼女の目線ことカメラが上を向いてしまう。そこで安藤さんのGoProをお借りして、彼女に新しい世界を見せてあげることにした。
これできちんとした映像が撮れるかもしれない。彼女の見た風景を知りたい。今度はちゃんとおれのことを見てくれているのだろうか。おれはお前を常に見ているのに。
乗っている自分としては先ほどと変わらない。しかし、彼女の目線は違った。自分をちゃんと見てくれているのだ。気持ちが通じた瞬間だった。
こちら、動画でもお楽しみください。
他人が聞いたらぎこちない会話かもしれない。でもいいのだ。2人が楽しいのなら。
いい日だった。雨は降っていたが心が満たされて帰った。幸せは待っていても来ない、自分でかなえるものなんだね。そう、彼女が教えてくれた。今年のクリスマスは楽しみです。
ちゃんとした青春を過ごしてこなかった学生時代。あれから10年以上経って憧れの体験をすることができた。胸がいっぱいである。
あと、この撮影をきっかけに制服とかつらとマネキンが家にあるのですが、家に誰か来ても大丈夫なやつですか?
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