家族でこの写真を撮っていたら、テレビ番組を制作しているスタッフの方に話しかけられた。内容は、冷蔵庫の大掃除についてのアンケートだった。珍しいことしている時に珍しいことが起きたなと思った。
良いギャップを感じた
街中や電車内、アンダーアーマーの服を着ている人を見ると「おっ、スポーツの人だ」と思う。スポーツウェアに詳しくない僕にも、本格的なブランドという認識がある。実際そうらしい。アスリートに愛用者が多いのだそうだ。
そして目をつけてしまう理由が、この印象的なロゴマークである。
筋トレの器具みたいでかっこいい。服にこれ付いていたら力が出るだろう。
しかしよく見ていたらイチョウの葉っぱみたいにも見えてきた。ロゴの四隅、ラインが外に向かって広がっているところが。
イチョウの葉というと、鮮やかに紅葉して季節の移ろいを告げる身近な自然である。バリバリのスポーツウェアと素朴な葉っぱが結びついているところに良いギャップを感じた。イチョウの葉でアンダーアーマーのロゴを作ろう。
パサパサのイチョウしかない
思いついたその足で外に出てイチョウの葉を探す。
パサパサだ。これじゃあボロボロのアンダーアーマーしか作れない。イチョウの見頃は11月中旬から下旬。落葉はその少し後だとしても、今探すのは遅すぎる。12月下旬だもの。
決心した時というのは、いつだってちょっと遅い。多分僕の中に今シーズンのイチョウの景色が十分にインプットされてからアンダーアーマーを見たのだろう。
それじゃあ遅いんだよ。思い出のイチョウの景色っていうのは思い出の中にしかないんだよ。
肩を落として家に帰り、SNSで「イチョウ」と検索した。最近の投稿できれいなイチョウの木の写真がまだある。心の中の審判が「続行!」と叫んだ。まだ終わらせない。
別の公園へ
検索でもここのイチョウの木が瑞々しく紅葉している写真があった。
ピチピチではないが、状態は悪くない。良かった。
なんとかなりそうだ。安心して足取りもゆっくりになる。きれいな葉っぱを探して拾う。大人になってからやっていなかったが、やると楽しい。
保育園のお散歩の列がイチョウの木のふもとで立ち止まり、みんなで葉っぱを集めて投げ合っていた。アンダーアーマーのかけらを無邪気に投げ合っていると考えると不思議なおかしみがある。
アンダーアーマーのビジョンには「誰も手にしたことのない新しい価値を生み出し人々のパフォーマンスを呼び覚ます」とある(アンダーアーマー ブランドページより)。こんなかっこいいビジョンを掲げるブランドのかけらを保育園時がバサバサ投げ合っている。これだよ、このギャップだ。
ロゴにしよう
家に帰ってきた。
糊では心細いしテープでは仕上がりがきれいに見えないだろう。特に枝から伸びる細い部分(葉柄(ようへい)というらしい)には、アンダーアーマーみたいにきれいなカーブを作ってほしい。
うまくいった。こういう思いつきが一発ではまった時の万能感。
素朴な仕上がり。オーガニックアンダーアーマーの誕生である。
本家のアンダーアーマーは高度なテクノロジーで体にフィットするウェアを作るが、オーガニックアンダーアーマーはハサミでパチパチ葉っぱを切ってチョンチョンつついて粘土に埋めている。手作業の味が出ていてとても良い。
シャツにしよう
というわけで、ロゴが完成した。
素敵なので無地のシャツを買ってプリントした。
アンダーアーマーなのに素朴さ溢れる、ギャップのあるシャツになった。イチョウの葉を探して歩いたことを思い出せるのも良い。
アンダーアーマーのコンセプトに UNDER ARMOUR IS BUILT ON PERFORMANCE(アンダーアーマーはパフォーマンスと共にある)というものがあるが、タイムや勝ち負けではない、しみじみ良いなと思わせるパフォーマンスもある。