特集 2019年2月12日

うっかりコスプレになってるときがある

うっかりコスプレみたいになってる状況がないだろうか

タイ米を買ったらオレンジの袋だった。へえ、と思ったがその時の自分の服が同じ色だった。しまった。うっかり、コスプレみたいになっている。他人に指摘されたら今後この服は「タイ米」の業を背負うことになってしまう。

日常にはそんな"うっかりコスプレ"とも呼ぶべき状況がある。私はこのタイ米の服をタンスに眠らせておくつもりはない。前向きに、意図的にタイ米を着てやる。そうだ、このうっかりコスプレの仮装大会をやってみたらどうだろう。

2006年より参加。興味対象がユーモアにあり動画を作ったり明日のアーという舞台を作ったり。

前の記事:並んでわかったタピオカミルクティー行列の理由

> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

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ある日タイ米を買ったら自分がうっかりコスプレになっていたことがあった
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うっかりを意図的にやる

うっかりなにかと似てしまった"うっかりコスプレ"の大会をしよう。1人2パターン持って集合。と、声をかけて古賀及子、加藤まさゆき、與座ひかるのデイリーポータルZのライターら3名が集った。

みんなそれぞれこのために服を買ってきていた。日常のうっかりを大人の力でかなえようというのだ。

大人の力、その力の大きさはわかるが、方向がよくわからないことになってきている。

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左から古賀、加藤、與座。なんのうっかりコスプレなんだろうか?
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筆者は左。「與座さんの服、テープじゃないの?」「大北さん個性的な着方ですね」「そんな人いないよなあと思ってた」
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言語化できない違和感がある。

コスプレした服に着替える。集合場所である渋谷にあるものに対してうっかりコスプレになっているのだが……それが何かがわからない。

それぞれちょっと派手な私服だし、なんか一言ツッコみたいのだがうまく言えない、これぞ"うっかりコスプレ"だなという状況である。

たとえば筆者は赤色のインナーに対して格子柄のグレーのセーターである。これが実は…

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正解の場所に着いた。なんのうっかりコスプレかというと…
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うっかり109のコスプレになっていたのだ
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「うっかり109みたいになってますよ」

「大北さん、うっかり109みたいになってますよ!」「109の熱烈なファンだ!」「やべえ着こなしだなと思ってた!」「よくこんな柄のセーターあったねえ!」と正解発表で盛り上がる面々。

渾身のうっかりである。一度渋谷を下見して109に目星をつけ、格子柄のものがないかと古着店を探し、このカーディガンを見つけたときは手がふるえた。

こんな109みたいなカーディガンがあるなんて! 今後もインナーには赤のものを合わせることでうっかりコスプレをつづけていこうと思う。

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つづいて加藤さん…このポーチを見つけたときに衝動買いしたそうだが
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加藤さん、うっかりドトールのコスプレみたいになってますよ!
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うっかりドトールのカードのコスプレみたいにも……一体なんでそんなことを!?
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もうそれにしか見えない

つづいての加藤さんはドトールのコスプレになっていた。初めて見たときはほんの少しの違和感だが、正解がわかってからはもうドトールにしか見えない。

これが意図的なものでなかったら加藤さんはこのコーディネートを「ドトールカード」と意識して躊躇してしまうだろう。しかしこれはそのつもりなのだ。ドトールカードを狙ってきたのだ。

ドトールが好きすぎてドトールカードの格好をしてしまう男である。世にも奇妙な物語に採用されそうな話だ(最後は焙煎されて死ぬやつ)。

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こちらの左側の男がうっかりコスプレになってるのにお気づきだろうか?
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そう、金の蔵のコスプレである。ロゴはデザインとして考えられているだろうから、ファッションの配色としてもおかしくはない。金の蔵コーディネートはおしゃれだ
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「大北さんそんな人いないでしょ」「いや、これ私服なんです」「こわいこわいこわい!」「こわいよー!」さあ正解はなんでしょうか?
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うっかりTUCのコスプレ、いや、TUCの精である
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パチンコのファンでなくてTUCのファン

水色の蝶ネクタイに青のサスペンダーをしていると「こわいこわいこわい!」と與座さんらが声をあげたのだが、いやいやいや、大丈夫なんです。これはコスプレなのだから。怖い人ではないんです。

そう、パチンコ屋の近くにもれなくあるTUCショップのコスプレである。隣に並んでみるともうコスプレを超えて妖精なのではないかと思う。

問題はTUCに対して何の関わり合いのない人生を送ってきたことだが、釣りでもゴルフでも「まずは格好から」という入り方があるではないか。文字通りTUCになってみることで、パチンコ趣味に突入したのだ。

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青いジャンパーにテープを貼った與座さんのコスプレはなんだったのかというと…
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渋谷にあるビル、BEAMの案内板だった。たしかにあるあるあるあるある……しかし一体どこをコスプレしているんだ…!!
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BEAMビルが建てられてからここまで馴染んだ人はいなかっただろう。人類未踏の地がここである。
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古賀さんのうっかりコスプレは寿司屋なんだというが…??
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「これですよ、わかりませんか?」え? これは… お皿? あっ!
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寿司屋の笹の葉! チョイス! すごいチョイス! 胸にガリがある! 今後それとしか見られないけどそれ狙ってるならこっちも指摘できるしお互いに良き!

もはや狂気さえただよう

與座さんがコスプレしたのはBEAMビルの階数表示の案内板である。「あるあるあるある!」「どこを真似してるんだ、どこを!」「よくそんなところをファッションに取り入れるなあ」と盛り上がったのちに、古賀さんはなんと寿司屋の寿司を置く笹の葉。くわーっ! そう来たか……!!

うっかり寿司屋の笹の葉みたいになってますよ、という状態はまだわかるが「あえて寿司屋の笹の葉みたいにしてます」という状況が今だ。もはや狂気しかないではないか。人類が今、おもしろいことになってきた。

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二巡目に着替える。左の與座さんは胸にスマホをかかげるまで込み
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MODIというビルがそうらしい。白Tシャツの人が胸にスマホを持ってると今後永久にMODI化することになる。かぎりなく雑に、いいかげんに、巨大建造物に寄せていくことで(一体なんでそんなことを!)というなんらかの狂気が生まれている。
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この服はふつうに着てるので今後うっかりコスプレすることになるが…サイゼリヤの
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受付にある呼び出し機のうっかりコスプレである。あるあるあるある!「どうもー! サイゼリヤのボタンでーす!」という漫才のつかみにも使えそうだ
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区のお知らせ掲示板の前に立つ古賀さん。斜めがけにした黒い布はどういうファッションなんだろうか
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「うわ、ピーポくんだ!」「ほんとだ、ピーポくんみたいになってる!」「シートベルトだ!」「腰のベルトもある!」「ピーポくんってオレンジ人間なんだ!」
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そして一番あやしかった加藤さんは半蔵門線だった
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渋谷から帰る人達にまじってファンすぎて電車と一体化する男、現る。この後加藤さんは半蔵門線に乗って帰っていった

クイズ大会のようで楽しかった…

こうして各々のコスプレをしていくと笑いとともに最初の違和感が現場で解消されるのが楽しくいい集まりだった。

終わったあとでは街を見る目が変わる。派手な服装の人はどこかのロゴのコスプレなんだろうなと思うし、アースカラーの人は地球のコスプレをしているのだろうと。

仮装大会をしましょうというと、ちょっとしたヨーロッパの貴族のようなおもむきがある。しかし、うっかりコスプレである。何が何やらである。


うっかりコスプレを積極的にする

うっかりコスプレは不幸だ。他人のファッションについてとやかく言うべきではないし、とくにうっかりコスプレについてはそれが顕著だ。

「それなんかサイゼリヤのボタンみたいになってない(笑)?」

と言われたらもうそのコーディネートはできなくなってしまう。

「いやいやいや、サイゼリヤのボタンみたいになったからなんだというのだろう!」そう胸を張ってみても鏡に映った自分を見て「こんなサイゼリヤのボタンみたいなやつじゃしょうがねえよな……」と肩を落としてしまうだろう。

だがあえてコスプレをする。となると気持ちは上向きになってくる。

サイゼリヤのボタンが好きすぎて、サイゼリヤのボタンみたいになりたくて緑のシャツとグレーのベストを着ているのだ。ファッションの参考にしているのはメンズノンノと店舗什器カタログのレジまわりページだ。

そうだ、私は今、サイゼリヤのボタンだ。自信を持ってボタンである。

うっかりだれかに指摘されてタンスに眠っている寿司みたいな服や裸みたいなシャツを今ふたたび引っ張り出そう。今日は一日コスプレだ。コスプレ大会だ。

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これもうっかりコスプレだろうか…と疑って見るようになる
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