特集 2026年9月15日

私達の町は漬物石に支えられている

どのパターンにも当てはまらない「無」の漬物石

今のところは上記4パターンに分類しているが、私が本当に愛してやまないのはそのどれでもない、特に役割もなくただただ路上にいるだけの漬物石である。

閉店後の飲食店前。もしかしたら営業中は何かの役割がある、つまり今は休憩中なのかも
幾ら考えても本当に何の役割もなさそう
街路樹の傍らでポツンと放置された漬物石

あなたの町にもただボーっと道端に立っているオジサンがいないだろうか?「すわ不審者か」と警戒心を抱く人もいると思うが、用事もなくただ町に立っているというのはなんの悪事でもない。無の漬物石は本来我々が持っていた「ただなんとなく街中にいたって良い」という当たり前の事実を思い出させてくれる。

これは漬物石なのか?

それにしても、なぜこんなにも多くの漬物石が街中で使われているのか?観察を始めた当初は「家庭内で漬物石として使用されなくなったものが、重石として第二の人生を歩んでいる」と思っていた。

しかしAMAZONで「重石」と検索してみると、もはや「漬物石」という表記もされていない彼らがヒットするのである。
 

「漬物石 重石」併記の商品もあるが「重石」としか書かれていないものもある
ちなみに「漬物石」で検索しても「重石」しか表記のないものがヒットする

そういえば今回の記事の内容を林編集長に相談した時、「あれ漬物石だったんですね」と言っていた。もはや一旦漬物石を経由せず、最初から重石として購入&利用されるパターンも多い、いやもしかしたら現代においてはそれが殆どなのかもしれない。

だとすると今後、彼らの立場は少々危うくないだろうか?重石として利用するなら、何も漬物石タイプでなくても良いのだから。

事実、水を入れたペットボトルや…
フック付きのブロックなどもよく見かける。これなんかは今まさに漬物石が仕事を奪われそうになっている瞬間なのかもしれない

しかし私は断言する。漬物石は廃れない。それは何故か?それは漬物石が「白くて丸い」からである。白くて丸いものは愛らしい。雪見だいふくもベイマックスもシマエナガも、愛されているのはみんな白くて丸いからだ。 

銀座の老舗和菓子店「空也」の空也餅。人間は白くて丸いものの魅力には抗えない
「薄汚れてて白くねーじゃねーか!」と思ったあなた。私は今勢いで文章を書いている
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この町は漬物石でできている

私は幼い頃から筋金入りのドトール愛好者だ。ある日の夜、閉店後のドトールの前を通りかかったら、片付けられた看板に漬物石が乗っていた。

上手く言えないがデザイン性より実益を取るこの感じが私の好きなドトールっぽい

ところが、である。また別の日にスタバの前を通りかかったら、そこにはドトールと同じ光景があったのだ。

そっか。スタバもドトールも関係ない。何かを固定したい時はみんな漬物石を選ぶのだ

あらゆるものが高度に発達した文明社会。しかしその裏側を少し覗いてみれば、いまだに我々は「動かしたくないものには重いものを乗せる」という極めて原始的な手段からすら脱却できていない。

AIが描き出した漬物石のない世界。ブルーシートやゴミネットは空に舞い上がり、キャスター付きの物は坂を転げ落ちていく。世界の崩壊である

自分自身、あるいは私達の文明の力を過大評価し驕り高ぶってしまった時、街角の漬物石を見よう。我々の生活は重くて丸くて白いものによって支えられているのだ。

ありがとう。すべての漬物石
 編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
やっぱりどのカテゴリにも分類されない「無」タイプがいちばんぐっときますね。漬物石だったものが新たな役割を得ているという現在進行形の変化もたまらないです。
手袋、スーツケースのタイヤ、漬物石と石井さんの守備範囲は完全に地面です。(林)

はげます会限定連載「石井公二のおいしいもの手帖」第12回~

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