イオンモール京都五条から近江八幡の洋菓子店へ
なぜ急に滋賀の洋菓子店か。ゲームの難易度を上げるのとは別に目的がある。翌日に法事の予定があり、親戚と僧侶に配る土産物を買わなければならなかったのだ。その買い出しの命を母親から受けている父親の要望である。
目的地が決まったとき、少しだけ、おや?と思った。父上さま、クラブハリエにたどり着かない可能性もあるけど大丈夫ですか?
企画の説明をするとき「目的地はどこかわからんけど、指示通り走ってくれへん?例えば滋賀の池とかがゴールになるかも。」と僕は確かに言った。言ったけど、たとえだよ。
すでに父はバームクーヘンが買えるものだと思っている。一抹の不安を抱えながら最後の目的に向けて出発した。近江八幡市に店があるという情報だけをもとに。
もう船頭役も慣れたもので、めいめい指示を出しながら滋賀に向かう。土地勘のない僕はちんぷんかんぷんだが、あとの二人はイメージがあるようだ。案内標識はちゃんと滋賀への道を示している。
しばらく走り続けて話題もなくなりはじめたころ、友人が父親に尋ねた。「窪田くんってどんな子どもだったんですか?」。父はうーんと少し考えたあと「あんまり関わってないから分からん」というようなことを言った。
そういえばそうかもしれない。MPが少し減った。
友人は車内の空気を盛り上げるためか色々と話題を提供してくれている。
大学を出て京都から宮崎に移住して以来、親密な友人関係を築けていない僕はフランクな会話を忘れつつある。
友人がイジり半分で話題を振ってくれる。
「窪田くんって友達いないのに成人式出たんだ」
「窪田くんが手つけた女の子とここ来たことあるわ」
「ボーナスいくらやった?」
言葉が出ない。露骨に不機嫌になってしまう。黙りこくる
追い打ちをかけるように車はどえらい渋滞にハマり、まったく進まなくなってしまった。露骨に父親がイライラしはじめる。
船頭がどうとか変なこと言いだしてすみませんでした。
ああ、僕はもうダメですよ。
ついに「このまま行ったら岐阜(だか三重だか)に行ってまう」と父が船頭の指示なくハンドルを切った。企画がおわった瞬間である。
船頭多くして車は山に登るのか・とりあえずのまとめ
・目的地が近いと山に登らない
・目的地が遠いと船頭のいうことを無視して気まずくなる
僕も船を降りることにした。
このあとは意識がうつろな状態で過ごしたのであまり覚えていないが、ともかくナビアプリに頼って洋菓子店に着いた。せっかくなのでバームクーヘンを買った。
企画が壊れるやろがい!滋賀でも三重でも六甲山でも行ったったらええんや!なんて言えなかった。
父は父で贈答品を用意する使命感があったのだろう。言えるわけがなかった。みんな一生懸命なんだからさ。
船頭多くして車は山に登らず、意識が虚ろになることがわかった。
蛇足:その後もうまくいかない
翌日の晩、僕がおこした火種が家族喧嘩に発展してしまい、深夜にひとりが家を出ていった。山にでも登るのだろうか。
本当にどこにいったのかわからなくてボーっとするほかない。出ていった家族は1時間くらい経って帰ってきた。
伊丹から熊本までの飛行機がイルカの顔をしていて少し元気がでた。
しかし悪天候から条件付き運行となり、熊本上空を1時間近く旋回して着陸に挑戦したもののゴーアラウンド、結局たどり着いたのは福岡空港だった。
そうそう!これがやりたかったんだよ!船頭多くして船が山に登るみたいにね、熊本行きの飛行機が福岡に?!笑える!!ガハハ!!
みたいなテンションには当然ならず、金とって全然ちゃうところに連れてくんやからラクな商売だよなあとイヤミなことを思った。
それから1週間くらいのことはあんまり記憶がない。
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