今しかない面白さ
レジの透明シートの設置方法をタイプ分けして紹介してきたが、その中の1つ1つには、それぞれのお店の人が限られた時間の中で試行錯誤したことが感じられて面白かった。
期待もこめてになるが、このレジの透明シートは、きっとしばらくしたらなくなっていく。それまでの間、期間限定の面白さとして積極的に味わっていきたい。
【イラスト協力】
七星 海咲
コロナの流行によって一気に新しい常識となった「レジの透明シート」。お会計のときに、店員とお客さんの間の飛まつをブロックするためのものだ。
この透明シート、コロナより前には全く想定されていなかったことから、お店ごとにいろいろ工夫して設置されていて面白い。
その工夫の数々と、バリエーションの豊かさを調べたのでご紹介します。
レジの透明シートの設置方法がおもしろい。
そう思って以来、しばらく「レジを見てまわる」休日をすごした結果、ぜんぶで87個の事例をあつめることができた。
それらはいくつかのタイプに分類することができたので、まずはそちらからご紹介したい。
レジの透明シートの設置方法は、「天井から吊る」「もともとの設備をいかす」「下から立てる」「卓上」の基本4タイプと、そのあわせ技に分類された。
基本の4タイプが、どれかがすごく多いということはなく同じぐらい普及しているのが面白い。
それぞれのお店の判断で自由に設置されているものが、かたよりなく4つのタイプに集約されるというのは、心理なのか自然なのか、なにかの法則にそっている感じがして興奮する。レジの透明シート学会があったら今すぐ報告したいところだ。
では、それぞれどんな設置方法があったのか。タイプごとに見ていこう。
1つ目は、天井から吊っているタイプ。レジに透明シートを設置するとなったら、どのお店も1回は検討するであろう王道だ。
吊りフックに引っかける系
天井に直接固定系
タッカー以外に、画びょうやネジで固定しているものもあった。
天井にひもを固定系
「天井から吊る」の分類としてここまで3つのパターンを紹介したが、その中で圧倒的に多かったのは「吊りフックに引っかける系」だった。
ただ、その吊りフックと透明シートをどうつないでいるかを見ていくと、そこには宇宙のようなバリエーションが広がっていた。
天井に設置したフックを利用して透明シートを吊るという点は同じでも、そのフックとシートをどうつなぐかは店によってさまざまだった。
この無限のバリエーションに、それぞれのお店の人たちの奮闘を感じる。
レジの透明シートが増えたのは、おそらく緊急事態宣言があけたころ。どのお店も早く営業を再開するために、急いでシートを設置した。
「まわりのお店はどうしてるかな?」と様子をみている時間もなかったことだろう。それぞれのお店にその時いたメンバーのアイデアや、その場にあった物から決められたことがうかがえて面白い。
正直なところ、冷静にみると「このパーツはなくてもいいのでは?」と思うものもある。
でもそれは、それぞれのお店が必死に急いで対応したことの証。余分なパーツこそ愛おしく見える。
つづいては、もともとレジのまわりにあった設備をいかしてシートを設置しているタイプ。
レジ上の飾りをいかす
レジ上の照明用レールをいかす
レジの上に何かがあれば、天井にフックを設けなくてもシートを吊ることができる。さらにそれがテープで貼るだけで済むともなれば、お店を設計した人への感謝すら生まれそうだ。
このタイプのお店は、レジに透明シートを設置することにおける勝ち組といえる。
レジ上の看板をいかす
レジ上の照明をいかす
ここまではレジの上にあるものをいかしてきたが、いかせるのは上だけではない。
レジ横をいかす
レジの柱をいかす
L字型スタンド2本系
3つめは下から立てるタイプ。
このタイプで多く見られたのは、スーパーなどでチラシを掲示するためのL字型スタンドを2本使い、大きなシートを両側で固定するやり方だ。
L字型スタンド1本系
一方で、スタンド1本で対応しているところもあった。
これぞ知恵!というやり方に興奮し、思わず心のなかでライブ会場のように拳をつきあげた。
このお店では、各レジに2本ずつL字スタンドを置くには数が足りなかったのかもしれない。
どうしよう…?となっている中、このアイデアを思いついた人はきっとヒーローになったことだろう。臨時ボーナスをあげてほしい。
レジに固定系
下から立てるタイプでもう1つ多かったのは、オリジナルのスタンドがレジに固定されているパターン。
チラシスタンド複数系
4つめはレジの卓上に設置されているタイプ。
ここでは、複数の卓上チラシスタンドで大きなシート1枚をはさむパターンがいちばん多かった。
ちゃんと工場でつくった系(既製品)
次に多かったのは、既製品のようなきちんと作られたものをレジ台に置くタイプ。
さすがは既製品。お金はかかっていると思うが、サイズや雰囲気がマッチしていて、そのレジの一部としてとけこんでいる。
ほんとはこういうのがいいなぁと思っている店長さんは多そうだ。
自作の卓上フレーム系
ならばと、既製品を買うのではなく卓上のフレームを自作しているお店もあった。
つっぱり棒系
つっぱり棒を使ってレジと天井の間に支柱を設けるパターンもあった。
ここまで、基本の4つのタイプを見てきたが、それらを組みあわせて設置しているのが「あわせ技」タイプ。
これまで以上に工夫やそのお店の事情がつまっていて、レジの透明フィルム観察のいちばんの見どころだ!
天井から吊る+下から立てる
もともとの設備をいかす+下から立てる①
もともとの設備をいかす+下から立てる②
こちらは家電量販店の大きなレジ。レジの左右にL字型のスタンドを置くパターンがベースになっているのだが、それだけでは支えきれないほど透明シートが大きい。
そこで、もとから吊ってあったレジの看板にもクリップではさむことでサポートしている。
映画などで、主人公が地上で苦戦しているときに空から助けがやってくるというのは盛りあがる展開だ。このレジも、要素としてはあのシーンと同じだからだろうか。見ていると高まるものがある。
天井から吊る+卓上
天井から吊る+もともとの設備をいかす+卓上
レジの透明シートの設置方法をタイプ分けして紹介してきたが、その中の1つ1つには、それぞれのお店の人が限られた時間の中で試行錯誤したことが感じられて面白かった。
期待もこめてになるが、このレジの透明シートは、きっとしばらくしたらなくなっていく。それまでの間、期間限定の面白さとして積極的に味わっていきたい。
【イラスト協力】
七星 海咲
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