「近い」はうれしい
都内を走る「近い」と噂される路線と比べてみても、やはり江ノ電の近さは頭一つ抜け出している気がする。
物理的な近さがイコール街との「近さ」とは言い切れないが、「近い」電車の沿線に住む人たちはこの距離を暮らしの中に取り入れていた。あの街に住んでいたら景色を思い出す度にまず電車が浮かぶのだろう。いいなあ、そういう街。
こちらも「近い」と噂の東急世田谷線。三軒茶屋と下高井戸を結ぶ路線だ。途中で一瞬路面に出る区間があるところも江ノ電と似ている。さて、どんだけ近いのか見せてもらおうじゃないか。
乗ってみるとなるほどいい感じだ。複線(前から来た電車とすれ違うことができる)だからか江ノ電から比べるとかなりゆったりとした眺めだ。
それでも住宅地を抜ける時にはすぐそこに植木や庭が見える。なるほど近い。最近接部で1メートルくらいだろうか。
そして世田谷線はなにしろ駅間が短い。走り出して加速したかと思うとすぐに減速して駅に着く。降りて沿道を歩いてみたのだが、次の駅まで歩く間に電車に抜かされなかったりする。つまり電車を待つより歩いちゃった方が速い区間があるのだ。
沿道からの「近さ」具合こそ江ノ電に負けるが、このゆとりのある走りは十分に魅力的といえる。
もう一つの「近い」路線、都電荒川線。早稲田から三ノ輪橋までを結ぶ一部路面電車だ。
車内から見る風景は路線を走っている間はほとんどバスのそれと見分けがつかない。降りたい場合は「次降ります」のボタンを押す(押さないと出口が開かない)ところもまったく電車らしくないのだが、走り出す時にでかい音で「チンチン!」と鳴るので「あ、電車だった!」と思い出す。
では「近さ」はどうか。
写真でもわかるように、区間によってはなかなか魅力的な近さとなる。特に東池袋四丁目~向原~大塚までの区間、線路区間から住宅街を抜けて路面区間へと移るまでの間がハイライトだ、近さの面で。
「近い」電車をいろいろ乗ってみて思ったのだが、これらは会社がもっと効率化しようと思えばまっさきに無くなってしまう路線ではないだろうか。だけどなくならないのはやはり電車と人とが近いからだろう。いろんな意味で「なくてはならない」のだ。
都内を走る「近い」と噂される路線と比べてみても、やはり江ノ電の近さは頭一つ抜け出している気がする。
物理的な近さがイコール街との「近さ」とは言い切れないが、「近い」電車の沿線に住む人たちはこの距離を暮らしの中に取り入れていた。あの街に住んでいたら景色を思い出す度にまず電車が浮かぶのだろう。いいなあ、そういう街。
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