あらたなレジ横文化の幕開け
加齢と共にレジ横へのあらたな熱が高まっている。それは「コンビニのレジ横にある地味な菓子コーナー」である。
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団子にういろうにミニ羊羹。子供の頃「誰が買うんだこれ?」と蔑んでいた地味な菓子が、今は光って見える。お茶を入れてういろうを齧りながら、「今後はこっちを攻めてみるか」と考えている。
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そうして我が家のテーブルに、一本のボールペンが転がっていた。
振ると金箔がキラキラするとはいえ、ボールペンである。職場で使うボールペンをよく失くしてしまうので、(これなら目立つな)などと考えて買ってしまった。
嫌だ。仕事なんて現実的な話をしてるんじゃない。あれほどワクワクするラインナップの中から、何故こんな地味な選択をしてしまったのか?あの頃手に入れられなかった夢を買うんじゃなかったのか?
焦った私は目を付けていたもう一軒のファミレスに駆け込んだ。
だが我が家のテーブルには、一箱のボロネーゼが転がっていた。
いやいや、だからこういうことじゃないんだよ!
私がDPZに記事を書くモチベーション。それは読者の皆様との心と心のキャッチボール。だから今から本当のことを書く。
数十年振りにレジ横のおもちゃと対面して、私の心はまったくワクワクしなかった。心から欲しいと思えるものが、ひとつもなかった。焦った私は、無理矢理買ったおもちゃで遊んで「全然楽しくありませんでした!」という展開の記事にすることも一瞬考えた。
でもそれは、あの日の私への裏切りだ。欲しくもないおもちゃを買って「やっぱり楽しくない!」なんてマッチポンプをする大人を見たら、子供の頃の私はがっかりするだろう。
そう思ったら「仕事に使える」とか「美味しそう」とか、嘘偽りなく心が動くものを買っていたのだ。
子供の頃の自分と大人になった自分。成長と共に少しずつ変化を繰り返した結果、私はいつの間にかまるで違う人間になっていた。今の私が財力(3,000円くらい)に物を言わせたところで、幼少期の私の想いが救われることはないのだ。
実はバーミヤンでうちの子にもおもちゃを買ってあげていた。
楽しそうにゲームに興じる子供を見ていて、「買うんじゃなくて与えることで晴らせる無念もあるのかもしれない」なんて思った。
…なんて執着を断ち切ったように書いてしまったが、本当は第一候補として言われたのはトランシーバーだった。
「1,980円って…。お前、それは駄目だよ」。ビビッて却下してしまった。シュンとする子供。結局私も歴史を繰り返してしている。
加齢と共にレジ横へのあらたな熱が高まっている。それは「コンビニのレジ横にある地味な菓子コーナー」である。
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団子にういろうにミニ羊羹。子供の頃「誰が買うんだこれ?」と蔑んでいた地味な菓子が、今は光って見える。お茶を入れてういろうを齧りながら、「今後はこっちを攻めてみるか」と考えている。
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