特集 2019年10月30日

駄菓子屋だらけの町(デジタルリマスター版)

駄菓子・玩具がどっさり!

ぼくの育ったところは田舎すぎて駄菓子屋が無かった。
小学校の登下校の道のりを思い出してみても、思いつくのは田んぼ、製材所、畑、脱穀所、牛舎、竹やぶ……駄菓子屋がありそうな場所はまったくない。
駄菓子屋はもっと人の集まる繁華なところにあるものだと思っていた。そう、ぼくにとって、駄菓子屋は都会の象徴だったのだ。
その頃は、学校帰りに駄菓子屋で酢だこさん太郎を買い食いして塾に行く……というようなアーバンなライフスタイルにものすごく憧れたものだった。
ぼくにとって都会の象徴である駄菓子屋。そんな駄菓子屋が、そこら中にある場所が名古屋にあるらしい。

※2011年8月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載しました。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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日本最大の駄菓子問屋街・明道町

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あれも駄菓子屋、これも駄菓子屋……。

右を向いても左を向いても駄菓子屋だらけ。駄菓子屋=都会というぼくの歪んだ駄菓子屋観に照らし合わせてみれば大都会である。そんな夢みたいな町は名古屋駅から北東に約1キロほどのところにある、明道町だ。

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手前から奥まで全部駄菓子屋!

 一見、普通の町並みだけれど、よく見ると。駄菓子屋さんが林立している。たしかに右も左も駄菓子屋さんだ! 実は名古屋の明道町は日本最大の駄菓子問屋街なのだ。


嫁入り菓子って何?

明道町を歩いていると、至る所に「嫁入り菓子」と大きく書かれているのに気づく。

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お嫁入、慰安会? 
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当たり前に書いてあるけれど 

一軒だけではなく、駄菓子を取り扱っている店ではほぼ例外なく書いてある。

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何のことか分からない

 

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中にはこんな看板も 


慰安会、行楽、子供会というのはなんとなく分かるんだけど、駄菓子屋に「嫁入り」とだけ書いてあっても何のことなのかちょっとわからない。花嫁さんの看板を店舗に掲げるほどなので、よほど「嫁入り」に注力しているのだろうというのは想像に難くない。でもわからないのでお店の人に聞いてみた。

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わたしたちも二階からお菓子まきましたよ 

--「あの、おもての「嫁入り」ってやつなんですけど、あれなんですか?」
「あぁ、あれは結婚式に配る菓子のことですよ」
--「えっ! 結婚式で菓子を配るんですか?」
「そう、このへんでは配りますね」

名古屋の結婚式は、ものすごいお金をかけるって話は有名だと思うけど、どうやらお土産に駄菓子を配る風習があるらしい。そのための菓子が「嫁入り菓子」なのだ。さらに話を聞くと、「昔は結婚式の時に、家の二階からお菓子をまいた」のだという。

--「よく棟上げ式とかでお餅やお菓子をまいたりすることありますけど、結婚式でお菓子をまくってのはめずらしいですね」
「前はまき菓子で10万20万はザラだったんですけどね、最近は本当に近所だけになってしまって……」
まき菓子だけで、数十万円、さすが名古屋だ。お土産にまくお菓子だけでそんなにお金を使うのだとしたら、他の部分は一体どれぐらいお金がかかるのか、考えただけで鼻血がでそうだ……。

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値段のグレードに合わせて袋詰めしてくれ

駄菓子だけじゃない問屋街

ところで、明道町は駄菓子だけではなく、いわゆる食玩と言われるものを取り扱う問屋も集中している。ここで言う食玩とは、お菓子のおまけについている玩具というよりも、駄菓子屋や夜店などで売っているような結構しっかりとしているおもちゃを想像していただきたい。

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みっしり並べられた玩具の数々

 

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祭りの夜店ではない
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花火からおもちゃまで取り扱い商品の幅も広い
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これ「どっきり痛(いた)ガム」という名称だったのか! 
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スーパーボールどっさり 

一見したところ、夜店のようで気軽に入ってしまいがちだけど、さすが問屋というだけあって、どれも量が過剰だ。一般人も買うことはできるけれど、バラ売りはしてない店も多い。普通は「どっきり痛ガム」12個も要らないと思うので、気を付けなければいけない。

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カードくじの束 

あと、食玩屋さんで目についたのは、アイドルのブロマイドやカードだ。お店のひとの話によると、今一番人気があるのは、やはりAKB48で、嵐は一時期に比べると今はそうでもないらしい。ほかにはどんなのがありますか?とたずねたところ「昔はモーニング娘。やSMAPも流行ってたけど、今はないね」と、ピシャリと言われてしまった。こんなところにも弱肉強食の世界はひょっこり顔をのぞかせているのだ。モーニング娘。が流行ったのはもう10年近く前になるのか……と思うと、背筋がちょっとひんやりしてしまった。

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えーと、これなんだったっけ? 


中央菓子卸市場

明道町界隈を歩いているとひときわ目立つ建物がある。戦後まもないころの闇市がそのまま残ったようなこの建物こそが「中央菓子卸市場」だ。

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近寄りがたい雰囲気さえ漂う 
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空襲直後というわけではない

昭和20年代に建てられたこの市場、最盛期には30軒近くの商店が営業していたらしいけれど、現在はたったの2軒しか営業していない。

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パインアメ、サクマドロップ各種1kgから
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ジャングルに生息する巨大な昆虫、といった風格がただよう
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なんで売ってるのかよく分からないけれど、赤飯。
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お仏壇に供えてありそうな菓子の一群 

天井の採光窓がビリビリに破れていて。廃墟のように見えるかもしれないけれど、一応現役の建物だ。
このような「市場」は数年前までこの町に幾つかあったらしいけれど、相次いで閉鎖されて、今はここにしか残ってないそうだ。
これだけ古くて雰囲気のある建物はなかなか無いと思うので、今後もぜひ残ってほしい。


一番よく売れるうまい棒は?

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30本入りで265円。バラで買うより安い。

駄菓子問屋街で見かけた駄菓子の中でもよく見かけたのはやっぱり「うまい棒」かもしれない。店頭に大量のうまい棒が置いてあったお店のご主人にお話を伺った。

--「うまい棒あんなに沢山種類ありますけど、なにが一番売れますか?」
「やっぱり一番売れるのはコーンポタージュ味かなあ、冬場ならチョコレート味もけっこう売れますね」
なんと、一番売れるうまい棒はコーンポタージュ味だったのか。ぼくの好きなとんかつソース味はどれくらいなんだろう?
「とんかつソースはまあ、真ん中よりちょっと上ぐらいかな」
真ん中よりちょっと上。微妙だ。
「いま、15種類ぐらいあって、エビマヨ味とか牛タン味なんてのもあるけど、うまい棒はそれでも売れる方だからね」
牛タン味! さすがにそれは見たこと無い。
「今置いてないけど、けっこうおいしいですよ、牛タン味。あと納豆味とか個人的に好きだったな」
--「な、納豆ですか?」
「そう、匂いも納豆の匂いがして、粘り気もあったんだけど、今は茨城の方でしか売ってないのかな? まあ、人気がないと消えちゃうからね」
またしても弱肉強食の世界が顔をのぞかせている、駄菓子の世界は、想像以上に厳しい……。
当サイトでも、うまい棒に関してはさまざまな方面からアプローチしてきたが、やはり本物が行う味への挑戦にはかなわないものがある。

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奥さんのおすすめは「オニオンサラダ」

 

 

またさらに名古屋が好きになった

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あ、あのフーセンガムの会社だ
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住所を確認してみるとたしかに明道町だ

現在でもこの界隈にはかなりの駄菓子問屋、食玩問屋があるけれど、どの人に聞いてもやはり「昔よりはずいぶん少なくなった」といわれる。駄菓子マーケットなどがどんどん閉鎖されて、マンションや老人ホームに変わっていったそうだ。駄菓子の工場も、現在は規制が厳しくなったり、流通の点からも郊外に移転するケースが増えているらしい。

しかし、それにしてもこれだけの駄菓子問屋が集中しているのは全国的に見てもかなり珍しいのではないだろうか? 名古屋という町の底力をみせつけられたおもいがする。名古屋、まだいい隠し球を持ってる。
明道町は、町を散策するだけでも結構楽しいけれど、ロット単位だけれど、小売もしている店も多いので、子供じゃなくてもかなり楽しめるおすすめの場所だと思う。名古屋城に行くついでに寄って損はないと思う。

 

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