鳥貴族が喫茶店になる日ががちで来る
コーヒーを飲むのだから昼に行きたいと、調べて平日14時にオープンする店舗を見つけた。新宿東口店だ。
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ざっとの確認ではあるが、おおむねねの鳥貴族は16時~17時くらいの開店だそうだから、この店舗はそれに先駆けてばーんと開けてくれるわけで、ありがたいことだ(なお、週末ともなると12時にオープンする)。
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さて、鳥貴族がコーヒーをラインナップしたのは今年の3月から。メニュー化は以前からアンケートで要望が多かったという。
「鳥貴族でコーヒーが飲みてえな」と願う人が少なくないボリュームで世にいるとは、想像力のたくましさにおそれいる。人間の発想はそれくらい詳細に自由であるべきだと本当に思う。
コーヒーはサントリーの「BOSS」とのコラボ商品。山崎製パンとのコラボ商品として、焼き鳥をはさんだホットドッグも期間限定で販売中であった。
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鳥貴族、あからさまにカフェ営業に目くばせしているではないか。
電源のある店舗も多い。このうねりがもし軌道に乗って定番化すれば、鳥貴族が喫茶店として頭角をあらわす可能性、大いにある。
私の暮らす東京では大きな街には数軒の鳥貴族があるのが普通だ。これってけっこう街の使い方が変わるんじゃないか。
意外にしっくり……こない
天下の鳥貴族だけれど、平日の14時はさすがにまだ席に余裕があった。ひとり客にも関わらず、親切に4人掛けのテーブルに通してもらい恐縮しきった。
夜ともなれば繁華街の鳥貴族はふるえるほど混む。そもそも予約で満杯で入れないことの方が多い。
コーヒーを飲む以前に、「平日の午後の鳥貴族は空いていて嘘みたい」で1本記事が書けるかもしれない。
迷わず頼んで、やってきたアイスコーヒーはジョッキに入っていた。
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アイスコーヒーに迫力がある経験がこれまであまりなかったものだからどうしても「おお……」とは思う。
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ジョッキは鳥貴族おなじみの「これはお酒ではありません」マークがついたソフトドリンク用のジョッキだ。
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流れ的に、意外にしっくりくるんじゃないかと思っていたのだけど、ばりばり違和感があって興奮する。
ローソンにやたらでかいアイスコーヒー、メガアイスコーヒーというのがあって、コーヒーの量による力強さは体験済みだ。
居酒屋でジョッキで出てくるアイスコーヒーはそこからさらにもう一歩、なにかどこかへ踏み出した感じがする。
なにも見失ってはいないし、失ってもいない、けれどいつのまにか大切なものを忘れてしまったような、とりとめのない不安と喪失を感じる。
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ホットドッグの包みに空いた穴から串を抜く
この不安は、ホットドッグが出てきても不思議と埋まらなかった。
誰も悪くないし、どこにも問題はないのになんだろう、この不安は。
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おそらくそれは、ここがあまりにも鳥貴族だからではないか。独特にどの店舗にも共通する店内の雰囲気にのまれたまま、コーヒーを飲んでホットドッグを食べる。
これはけして「違和感」ではない。言うなれば「身に付かなさ」だ。
通って、練習しないと、と思わされる。
ちなみにホットドッグは串に刺さったままの貴族焼きが挟まっている。丁寧なことに包みの穴から串が出ており、穴から串だけ抜くことも可能だ。
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ぐっとホットドッグ全体を押さえ、ズッ、ズッと串を抜いていく。
……。
こんな新鮮味の無い初体験も、ちょっと珍しいんじゃないか。
焼いたさんまから骨を外すときに似ているなと思った。思ったところでどうにもならなすぎる。わたし今、感じたところで意味が無い感覚を存分に味わっている。
食べると紅しょうがが味のフックとして独特に主張しておりおいしい。
そうか、焼きそばパンの既視感からホットドッグに紅しょうがが乗っていることに違和感がないけど、焼き鳥に紅しょうがは本来ちょっと意外な取り合わせだ。
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それに、パンとねぎをせーので食べることもあまりない。結果的に、見た目以上にちゃんと変わった工夫のあるメニューだ。
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ホットコーヒーがあってえらい
コーヒーに対する鳥貴族の今回の取り組みとして、感心したのは展開にホットがあるところだ。
コーヒーを出そうとなったときに、居酒屋として考えるとやっぱりどうしてもアイスで止まるんじゃないか。そこをホットまで及ばせたのは偉い。
頼むとお湯割りで出てきそうなカップに入って登場した。
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ジョッキのアイスコーヒーのあとだからそれほど刺激的には感じないけれど、量が普通に多い。うれしい。コーヒーカップでないからか家っぽさがすごい。
ついでに、なんの違和感もなくデザートとして「鳥貴ドームアイス ~みたらし~」も頼んだのだけど、この追加オーダーへの障壁の低さ、自然さは明らかにここが居酒屋だからだろう。
カフェだとちょっとこうはいかない。
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なお、アイスについてきたスプーンが、私の好きな鳥貴族メニューである「ふんわり山芋の鉄板焼」についてくるスプーンと同じで興奮した。
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鳥貴族の小さいスプーンには今後も実家っぽいこのスプーンであり続けてほしい。
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そしてすぐそこにある酒
コーヒーを飲んでもまだ15時前、けれど次々お客はきた。多くの人が、普通にお酒を飲みにきているようだ。
この日、夜はすでに予約でいっぱいだそうで、来る人達に17時以降はご退店になってしまいます、と申し訳なさそうに店員さんが伝えるのを聞いた。
3時間いられりゃ十分じゃないかと思ったあとで、あっ、いや、そうか。居酒屋だったら4、5時間でも平気で飲み続けたりするものなと思いなおす。
気を抜くと酒がすぐそこにある。この感じは、アルコールをラインナップしたカフェに入るのとはちょっとわけが違う。
カフェっぽく使ってみようと、ちょっと本を出してみたのだけど、すぐそばにある酒メニューについ目くばせしてしまいそわそわ落ち着かなかった。
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ちょうど私にはこのあと打ち合わせがあり、コーヒーでなんとかしのいで退店した。
パーテーションを隔てた後ろの席で、たこわさびを注文する人の声が聞こえた。気が引き締まる。
鳥貴族でコーヒーを飲む。もう少し練習して身につけたい。