特集 2022年5月24日

いつもの買い物を可能な限り遠くのスーパーで

逃避行だけどいつもの買い物もします。

ある日突然どこかに行ってしまいたくなる。

毎日の買い物の時ふとそう思ったら、ガンガン行ってしまえばいい。なぜなら行ってしまった先にも多分スーパーはあるからだ。

1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

前の記事:土曜のお便り 〜家族の一員としての椅子


不満はないがトキメキもない

うちには4歳の子どもがいて、朝保育園に連れていき、そのあと家に帰って家事と仕事をして夕方迎えに行く、というスケジュールを繰り返している。

そして数日に一回、近所のスーパーに買い物に行くというルーティンがある。ご飯の材料と、歯磨き粉とかラップとかを買う。

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特別な予定が入らない限りはこの繰り返しである。いつものスーパーはいつ行ってもいつものスーパーである。不満はないがトキメキもない。

突然どこか遠くへ行ってしまいたい

ならば、通勤中に反対のホームに来た特急電車に飛び乗るように、突然どこか遠くに行ってしまえばいい。

会社だったらその特急の中で上司への言い訳を考えるのかもしれないが、いつもの買い物なら着いた先のスーパーでできる。

突然どこか遠くへ行ってしまいながらも、幸か不幸か日常は続いていくのだ。

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つまりこうすればいい。買い物以外を全て放棄することになる。

どうせなら可能な限り遠くへ行きたい。使える時間をギリギリまで移動に費やせばそういうことになるだろう。

今日だ、今日行こう!

ここまでのことを心で決め、何日かいつもの生活をした。

ある日、子どもを保育園に送って家に帰り、家の窓から空を見るとなんとなく憎たらしい晴れ方をしていた。

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曇りや雨が続く中、久しぶりの晴れ間だった。

「なんで出掛ける予定がないんだ…!」というぶつけどころのない怒りを自分の中に認めたらすぐに決まった。今日だ、今日行こう。

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近所のスーパーに行く装備(財布、スマホ、家の鍵、マイバッグ)で外に出た。

服も、Tシャツとワシャワシャしたジャージみたいなズボン。

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そんな格好でフラフラと駅に入る。

調べたら僕の住んでいる東京東部から千葉県の銚子まで、電車で2時間半ということが分かった。

特急に乗れば1時間40分だけど、衝動で家を出てちょうど特急に乗れるような都合のいいことは起きない。

2時間半、今行くなら2時間半だ。ちょうど時間ギリギリだし、水産都市で醤油の名産地、あの銚子のスーパーに行けるというのがいい。

大学生の時、友達の誰かが車の免許を取ったので、みんなで銚子に行ってお寿司を食べようという計画があった気がする。実際に行ったかどうかは忘れてしまった。

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乗り換えの駅。すれ違う人がビシッとしている。

傍から見るとほとんど分からないが、自分なりに「電車に乗る時の服」というのは決まっていて、今日はそれではない。周りがすごくちゃんとしていて、自分がすごく無防備に感じた。

みんな予定通り、行くべき場所に行く途中なんだろう。

車窓の風景にゾクゾクする

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景色が変わってきた。山と畑。

近所のスーパーに行く格好で電車に乗って1時間ほど、景色が変わってきた。

自分が向き合わなければいけないものからすごいスピードで離れていく不安と焦り、そして清々しさがあった。

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一応本を持ってきていたけどあまり集中できなくて窓の外ばかりを見ていた。
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知らない景色を見ながら買い物のことを考える。「牛乳と食パンと…なんかお惣菜と…」

観光ではない歯がゆさ

最初はやるべきことをやっていない後ろめたさがあったが、景色を見て「こんなに現実離れしているんだからもうしょうがない」と思うようになり、そのうち銚子駅に着いた。

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俺に言っているのか…?
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歓迎がすごい。
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銚子だ!

駆け出したくなった。日々の買い物ではあり得ない感情。

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気になるお店がたくさんある。

観光に来たんじゃない。日々の買い物なんだ。目的も違うし実際に時間もない。帰りの電車が一時間後なのだ。

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石材店に七福神がいた。
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ラーメンショップに植田まさし先生のイラストがあった。

ゆっくり歩きたい気持ちと戦いながらスーパーに向かう。「これはいつもの買い物、いつもの買い物…」と自分に言い聞かせる。

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着いた!
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タイヨー!

茨城と千葉に店舗のあるスーパーである。初めて来た。

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とんかつが大きかった!

いつもの買い物に、可能な限り遠くのスーパーに来た。色々見たいけど時間もあるので早足で行ったり来たりする。檻の中のトラみたいだった。気づいたことを画像にまとめました。

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通ったらしゃべれるようになると思う。 

「あーあ…」

買い物が終わった。

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大きめの袋二つ分。一つは保冷バッグ。

いつもの買い物ならまっすぐ帰るんだけど少しだけ銚子を感じさせてほしい。

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銚子で買ったヤマザキのパン。北海道産の練乳。
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海を見ながら食べた。海というか正確には利根川の河口なんだけどスケール感はほとんど海。

水面がすごく穏やかだった。これをずっと見たかったんだという感じがした。やっぱり全てを放り出して見るものと言えば海である。

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あーあ…

全てを放り出して遠くに来たがいつもの買い物はした。海を見て呆然ともした。満足したので電車に乗って帰った。

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銚子で買った食パン

帰りの電車で「今日いちにち、買い物しかしてないな」と気が付いて唖然としたが、しっかり体は疲れていて、背中で西日を感じながら寝た。

家に着いたらすぐ子どもを迎えに行き、帰ってご飯の支度をした。

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今日買ったもの。
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大人はお刺身。
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子どもにはしらす丼。

それからしばらくは「銚子で買った〇〇」という食事があってなんとなく楽しかった。

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銚子で買った豚肉のカレー(食べかけでごめんなさい)。
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エビフライ、大きくておいしかった。
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銚子で買った食パン。
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鮭は原稿を書いている今日、焼いて食べる予定です。

旅行と日常の両方の気持ちになる

移動中は旅行で、買い物中は知らない場所での日常で、家に帰って銚子の牛乳などを見ると旅行と日常の両方の気持ちになる。

楽しかったので、今度は知らないお弁当とか買って食べる時間を作ってまたやりたい。

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駅で見た、斜めの窓っぽい排気口っぽい何かです。
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