窓側じゃなくても凄く楽しかった!
車内販売は1934(昭和9)年に国鉄が試験的にはじめた。そこからおよそ90年。
撮影を手伝ってくれた伊藤さんと、今後消えてゆくのだろう車内ワゴン販売という文化を惜しみながら弁当を食べた。
それと共に、最近はこういったサービス終了のニュースをきっかけに初めて経験し、ありがたみや楽しさを知ることが多いのもちょっと寂しいなと気づいた。
もっと普段から色々経験していかねばと思った。
東京駅から新大阪駅までをつなぐ東海道新幹線。
その東海道新幹線の車内ワゴン販売が、2023年10月31日(火)をもって終了するそうだ。
見慣れた景色がまた1つなくなってしまう。
そこで最後に、可能な限り車内ワゴン販売を堪能することにした。
駅周辺店舗の品揃えの充実や、車内への飲食の持ち込みの増加などを理由に、東海道新幹線の車内ワゴン販売が終了する。
8月初旬にそんなニュースを見つけ、これまであまり車内ワゴン販売を利用してこなかった事を後悔していたところに、ちょうど愛知での仕事が入った。これはチャンス!
最後にできる限り堪能しようじゃないか。
この日の仕事の最終目的地は愛知県の東岡崎駅。
品川駅から豊橋駅まで「ひかり」で行き、名鉄に乗り換える(車内ワゴン販売は「のぞみ」と「ひかり」だけ)。
品川駅から豊橋駅までは約300km。最高時速285kmのひかりなら1時間13分でついてしまう。
いま思えば少しでも長く滞在するため始発の東京駅から乗れば良かったのだが、うっかり自分の家から便利な品川駅からスタートした。
荷物を置いたらすぐに、ワゴン車を探しに行く。
途中出会った乗務員さんの話によると、ワゴン車は30分に一回くらいのペースで巡回するそうだ。待ちの姿勢では堪能できないのである。
乗ったひかりは16両編成で、自分の座席は14号車。
となると、確率的に前方に向かって探した方が出会う可能性が高い。
もしこの読みが間違っていたらかなり時間をロスしてしまうが、賭けるしかないのだ。
勢いよく前方へ向かった。
ところでこの時、わたしは時速約290キロの早さで歩いていることになる。
え? それってすごくない? 本当だろうか?
予想は見事に的中し、無事ワゴン車を発見した。
ちょうど9号車と10号車の間のデッキでパーサーさんに声をかけ、一気に買い漁る。
ネットであらかじめ気になっていたものをピックアップしていた。
残念ながら狙っていたけれど無いものもあったが、あらかたゲットすることができた。
逆にこれだけの品ぞろえをこのワゴン車に詰め込んでいるのもすごいなと思った。(商品一覧はこちら)
席に戻り少し落ち着いたとき、撮影をしてくれているライター仲間の伊藤健史さんが「ワゴン車を追うという発想がなかった」と感心していた。
伊藤さんはこれまで、ワゴン車を利用することが苦手だったと言う。理由を聞けば「目的をもってどこかに向かっている人を止めることができない」とのこと。商売なのだから止めても問題はないし、むしろ売上に貢献するのだから止めていいはずだが、そうと分かっていても抵抗があったらしい。
だが今回、私がズンズンとワゴン車に向かう姿を見て「自分から買いにいくならアリかも」と腑に落ちたそうだ。私は欲望のままに動いたまでだが、いろいろな考え方があるんだな。
固くて有名なスジャータのアイスクリームからいこうか。
実は未経験。まずはその固さを楽しもう。
本当は熱伝導で溶かせるアルミアイスクリームスプーンも一緒に買う予定だったのだが、残念ながら今回のワゴン車には搭載していなかった。
東海道を移動しながら、東海道沿線の美味しいものが詰まったお弁当を食べる。
駅弁ってこんなに楽しいものだったんだ!
楽しいだけじゃなく、一つひとつの食材がしっかりおいしくて早くも満足感すごい。
旅をテーマとした雑誌「ひととき」も車内ワゴン販売で購入できる。
「ひととき」は書店やネットでも購入できるが、東海道・山陽新幹線のグリーン車のシートには最初から置かれているもののようだ。グリーン車にまったく乗らないから知らなかった!
ページをめくっていると旅のテンションがあがっていく。
東海道新幹線では、最初はハーフサイズ(375mL)のワインを販売していたのを「新幹線で1人で飲みきるには多い」という声があがりこの187mlの小ぶりサイズを取り入れたのだという。
せっかくの機会なので思い切って赤と白の両方買っておいたのが正解だった。それぞれコップ一杯分(グラスワインよりは多め)なのでほんとにちょうどいい量だ。
私が買った東海道新幹線弁当の場合、肉も魚も入っているので両方のワインがすこぶる合った。
アイスの溶け具合は正直、コーヒーを上に乗せたずんだ味も、なにもしていないバニラ味も両方おなじくらいの溶け具合だった気がする。お弁当を食べてる間には両方良い感じに溶けていた。
それにしても、なんだかコース料理を楽しんでいる気分だ。
ワインを取り入れたことが大きいだろう。
ものすごいスピードで目的地に移動しながら優雅にコース料理。最高だなあ。
白餡を使わない柿餡だけのもなかだそうだ。
たしかに、甘い柿そのもの!
でも遠くに柚子の香りもして上品かつほどよい甘味。
柔らかくて食べやすいからご年配にも嬉しいおやつだ。なお、凍らせてアイス最中としてもいただけるようだ。
さらにさらに、しょっぱい系の限定おやつもある。
チップスターに「極」があったことさえ知らなかった。
最後の締めにふさわしいではないか。
パーティ気分で広げ、交互に食べる贅沢をした。
こんな感じで、あっという間の約1時間強だった。
案外つつがなく堪能でき、もう思い残すことはない。
さて気になる今回使った金額は…しめて4,540円!
1人だと高く感じるかもしれないけど、仲間と分け合いながら楽しむのにいいかもしれないぞい。
ところで車内ワゴン販売が無くなったあとはどうなるんだろうか。
調べたところ、今後はホーム上等の自動販売機を拡充したり、駅の飲食の提供を強化するそうだ。そして11月からは「こだま」を除いたグリーン車の利用客向けに、座席に設置されたQRコードを読み取って注文し、パーサーが直接商品を届けるサービスを提供する予定とのこと。
時代の変化をとても感じた。
車内販売は1934(昭和9)年に国鉄が試験的にはじめた。そこからおよそ90年。
撮影を手伝ってくれた伊藤さんと、今後消えてゆくのだろう車内ワゴン販売という文化を惜しみながら弁当を食べた。
それと共に、最近はこういったサービス終了のニュースをきっかけに初めて経験し、ありがたみや楽しさを知ることが多いのもちょっと寂しいなと気づいた。
もっと普段から色々経験していかねばと思った。
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