大きいお金を見に行きたい
ミクロネシアのヤップ島には石貨がある。これは本当に石で出来た物理的にも大きなお金だ。大きなお金の素晴らしさに気が付いた僕としてはぜひヤップ島の石貨も見てみたい。しかし、ヤップ島に行くためには物理的ではなく、金額的に大きなお金を必要とする。お金を貯めようと思う。いや、聖神社のご利益を寝て待てばいいか。果報は寝て待てというから。
お金が好きだ。
それも大きければ大きいほど嬉しい。10円より100円がいいし、100円より1000円、1000円より10000円と大きければ大きいほど僕は好きだ。
さて、日本の最初の流通貨幣は「和同開珎」なのだそうだ。誰もが一度は写真などで見たことがあると思う。その和同開珎は埼玉県は秩父市黒谷の和銅遺跡でとれた和銅で作られた。だから名前も「和同開珎」というわけだ。
そんな秩父市黒谷に大きな和同開珎があるらしい。大きなお金が好きなので行ってみることにした。
※2010年7月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
日本で最初に流通した貨幣である「和同開珎」は708年に鋳造・発行された。大きさは直径24mm前後の円形で中心に穴があいている。アニメなどの石器時代のお金はやたらビックサイズだったが、和同開珎は今の貨幣と変わらない大きさだ。
和同開珎は埼玉県の秩父市黒谷で取れた和銅で作られた。その和銅を朝廷に献上したところ、年号までもが「和銅」に変わってしまったというのだから驚きだ。きっと今の日本では、アラブ並の石油が発見されても年号は「石油」に変わったりはしないはずだ。
秩父に向かう電車は晴れわたる空の下を気持ちよさそうに走った。冷房の効いた車内から見る、流れていくのどかな風景は平和で、いっそ目的地に着かなくてもいいかな、という気持ちになった。だって、外は暑いのだ。日焼けしてしまうのだ。白い肌が僕のウリなのだ。
僕の家から目的地の黒谷までは3時間もかかるので、もう旅行気分だ。新幹線ならば大阪あたりまで行けてしまう。しかし、今目指すのは東京の隣の埼玉だ。埼玉は遠い。
埼玉の人に「どこに住んでるの?」と聞くと「東京のほう」と答えると聞くが、東京と埼玉は全然違う。新幹線ベースで考えると埼玉は大阪だ。
大きなお金が好きだと冒頭に書いたが、それは金額的な大きさであって物理的な大きさではない。でも、物理的に大きなお金も目の前にすると好きになってしまうから不思議だ。やっぱり大きいことは素晴らしい。
黒谷駅に着いたら、ホームで大きな和同開珎が迎えてくれた。思わずテンションがあがり、顔ハメとしても和同開珎を利用してしまった。隣にも僕が立っているが、それは大きさが分かりやすいように合成したからだ。決して宗兄弟的なことではない。
ちなみにこの駅の正式名所は「和銅黒谷駅」という。2008年4月1日より黒谷駅から和銅黒谷駅に名前が変わったそうだ。エイプリルフールに名称を変えられるとなかなか信用できないが変わったのは本当だ。
和銅黒谷駅 埼玉県秩父市黒谷412-4 お金の大きさ:★★★ |
駅に着いたとたんに大きなお金を見ることができて、満足な気もするが、更なる大きなお金を目指し「聖神社」に行くことにした。大きなものへの欲求はとめることが出来ない。一度大きな物を体験するともう小さい物では満足できない体になるのだ。
目指す「聖神社」は和同開珎と深い関係がある神社でやっぱりここにも大きな和同開珎がある。男性に大きいのと小さいのどっちが好きかと聞けば大抵は「大きいの」と答えるだろう。女性に聞いてもきっと「大きいの」と答えるはずだ。みんな大きいのが好きなのだ。
鳥居をくぐった瞬間に見える大きな和同開珎。駅のホームで見た物より大きいのでやっぱりテンションがあがる。ご利益もお金に関する物だそうだ。これだけ大きければかなりのお願いを叶えてくれそうな気がする。
一人でどこかに行って写真を撮っても、帰ってきてから合成すると複数で行ったみたいになる。次からは着替えも持って行こう思う。今のままでは仲良し双子姉妹みたいだ。
境内に願いが叶ったことを書く紙があり、一部は貼ってあり読むことができる。その中には、ロト6で5コ数字が当たったや、実家の家業がうまく行き始めたなどがあった。やはり和同開珎が大きいだけのことがある。無駄に大きいわけではないのだ。
聖神社 埼玉県秩父市黒谷字菅仁田2191 お金の大きさ:★★★★ |
賽銭箱に15円を入れておそらく100万円くらい入れた人で無いと頼めないような数のお願い事をして、次なる大きなお金ポイントを目指した。ちなみに僕がしたお願いごとは何個もあるが、一言で言うと「金持ちになりたい」だ。
最後に向かうのは和同開珎を作った和銅を実際にとっていた場所だ。和銅を採掘していた露天掘の跡を今も見ることができるのだ。1300年以上前のものが見れるとはなんともロマンを感じる。ロマンは僕のような大きな男によく似合う。
ロマンへの道中には俳句が書かれいて迷わないようになっている。しかし、森の中は僕以外に人気は無く、セミもまだ鳴いておらずとても静かで恐怖だ。横溝正史の本に俳句通りに殺していくみたいなのがあったが、それを連想して怖い。僕の肝っ玉は大きくないのだ。
静かと書いたが、若干ウソだ。耳元だけ騒がしいのだ。ブ~ン、ブ~ンと虫が耳元でこれでもかと言うくらい飛んでいる。耳元でして嬉しい音は女性の寝息だけであり、虫の飛ぶ音は不快でしかない。それを我慢してロマンへと急ぐ。むしろ寝息の方がロマンだなと考えながら。
10分ほど木々が生い茂る中を歩き和同開珎の生まれた場所にやって来た。日本で最初の貨幣はここから始まったのだ。
それを記念してモニュメントが作られている。単体でみると小さく見えるがこれがかなり大きい。5メートルはあるだろう。そこそこ離れないとフレームに入らない。ただ迫力がありカッコよく感じる。大きいことは素晴らしい!
たとえば僕は「大きいね~」と言われると嬉しい。悪い気はしない。それと同じで多くの人が大きいのは素晴らしいと思い、こんなにも大きなモニュメントを作ってしまったのだろう。テンションが上がってしまった。大きすぎる。
このモニュメントの横に和銅を採掘した露天掘りの跡をみることができる。ロマンだ。ここから貨幣の第一歩が始まったのだ。
素晴らしい和銅の露天掘りの跡だ。
よくネットで知り合って実際に会ってみると想像と違っていてがっかりみたいな話を聞くがそれに近い感想を持った。正直な話、「露天掘り跡」と書いていなかったら気が付かないと思う。
大きなお金が目的だったので露天掘りはこれでよしとしよう。目的の大きなお金はかなり満足できる大きさだった。きっと全国を探してもこんなに大きな和同開珎を見ることはできないだろう。僕は小さいのと大きいのとだと、やっぱり大きいのが好きなのだ!
和銅遺跡 |
ミクロネシアのヤップ島には石貨がある。これは本当に石で出来た物理的にも大きなお金だ。大きなお金の素晴らしさに気が付いた僕としてはぜひヤップ島の石貨も見てみたい。しかし、ヤップ島に行くためには物理的ではなく、金額的に大きなお金を必要とする。お金を貯めようと思う。いや、聖神社のご利益を寝て待てばいいか。果報は寝て待てというから。
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