人んちだ
都心からひとつめの駅は
・路地があって植木がこんもりしている
・30年ぐらい変ってない
・静か
という共通点がある。それはかいつまんでいえばおばあちゃんちではないか。そうだ、おばあちゃんちだ。
しかしこれは僕のおばあちゃんが都心に住んでいたからそう思っただけで、まったく一般性のある話ではなかった。お読みの皆さんについては「おばあちゃん」の部分を「おじさん」「書道の先生」「アンドリュー」など納得できるものに置き換えていただければ幸いです。
ターミナル駅からひとつめの駅はどこも雰囲気が似ている。
都心とは思えない小さな駅で降りる人もほとんどいない。たいてい各駅停車しかとまらなくて、人に言うと「ああ、そういえばそんな駅あるねえ」といわれる駅だ。そんな駅を4ヶ所わざわざ降りてみた。
先に言っておこう。びっくりするぐらい地味な記事ですよ。
※2007年7月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
僕にとってのキングオブ「なんでこんな近いところに駅作っちゃったんだろう?」といえば南新宿だ。新宿から小田急に乗って1分でつく。
JR代々木駅から歩いて5分、新宿も歩いても10分という賃貸住宅だったら「駅近」と書かれる場所にある。しかしここも駅だ。
降りてしばらく歩いて振り返ったら駅を見失っていた。電車を降りてみても「なぜここに駅が?」と思った。
駅のすぐ横に「奥の湯」という銭湯があった。渋谷区の駅前に銭湯。それだけ聞くと都心に新しく作ったスパみたいだけど、そうじゃなくって本気(マジ)銭湯だ。少し歩いてみると、銭湯だけでなく、商店街や街の雰囲気が懐かしい。
・道が細い
・コンビニがない
・坂が多い
30年近く変ってないのではないかと思える景色だ。郊外の開発と都心の再開発のあいだで手つかずになっているのかもしれない。
ニュータウンまで行かなくても、練馬や板橋ぐらいの郊外もずいぶん街がきれいになっている。たまに訪れるとかっこいいマンションや「湘南かよ」と思うような店ができてたりする。もちろん新宿、六本木の超都心は再開発ラッシュだ。
ひとつめの駅があるような都心からちょっとだけ離れているところはどっちの開発からもぽっかり抜け落ちているのかもしれない。
と、関係ないやつが来てうんちく垂れてようが関係なく静かな街でした。
上板橋育ちの僕にとって都会だけど地味な駅といえば北池袋だ。イラストレーター安斎肇さんも北池袋育ちで、昔なにかで読んだプロフィールの出身地に「日本のメンフィス、北池袋」と書いてあった。
この駅から見える景色も僕が子どものころからほとんど変っていない。ホームから見える古い家も東武らしい独特なポスターも、東上線沿線で育ったものとしては嬉しいもっさり感だ。
ここも駅のまわりは小さな商店街。中華屋が地元の人のたまり場になっているのか、日曜日の昼だというのに大繁盛だった。うらやましい。
駅から大きな国道までは少し距離がある。
ここも南新宿も大きい道路に面してないからそのままなのかもしれない。同じひとつめの駅でも初台はビルがたくさん建っている。甲州街道沿いだから西新宿がそのまま延びているような気がする。
次は井の頭線で渋谷からひと駅、神泉。井の頭線は渋谷のホームが地上3階ぐらいのところにあるのにいつのまにか地下に入っていて、しばらくして地上に出る。そこが神泉だ。
神泉の駅から渋谷方面を望むとトンネルが口を開けている。
渋谷から神泉の断面図を見るとこうなっていた。
渋谷の駅が谷底にあり、ひと山を越えたところが神泉なのだ。
この日は日曜日だったのだが、神泉のまわりは日曜日の渋谷とは思えないほど静かだった。日曜日の渋谷といったら頭上にダイブしても大丈夫じゃないかと思うぐらい人がみっちりである。だけどここまでくると別世界だ。
渋谷からひと駅でこんなに景色が変るなんて、日本が狭いなんて言ったやつ誰だ、と思った。
日本までは言い過ぎた。
最後は北品川。これまでの駅とは少し雰囲気が違う。
・旧東海道の近く
・海が近い
ここまでの駅が昭和の雰囲気で懐かしいと言っていたのに対してここはそれどころではない古さである。
しかし女子校のポスターが新聞みたいになっていたり、商店街の店の看板に書いてある電話番号にことごとく3がついていなかったり(東京の電話番号に一斉に3がついたのってもう16年も前のことなのだ)、ひとつめの駅特有のゆるい空気が漂っている。
(女子校のポスターだから女子高生が書いていると思って写真撮ったけど、これ男の先生が書いていても面白いですね)
駅から少し歩くと屋形船や釣り船が係留してある舟溜まりがあった。その後ろには再開発された品川の巨大なビル群。
古い景色の後ろに新しいビル。面白がって写真撮ったけど、あとから見たらわりとありがちな構図だった。でも載せとこ。
都心からひとつめの駅は
・路地があって植木がこんもりしている
・30年ぐらい変ってない
・静か
という共通点がある。それはかいつまんでいえばおばあちゃんちではないか。そうだ、おばあちゃんちだ。
しかしこれは僕のおばあちゃんが都心に住んでいたからそう思っただけで、まったく一般性のある話ではなかった。お読みの皆さんについては「おばあちゃん」の部分を「おじさん」「書道の先生」「アンドリュー」など納得できるものに置き換えていただければ幸いです。
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