特集 2025年1月15日

鍋と焼肉が一緒になった!タイ料理「ムーガタ」は自分だけのおいしさを見つけるのが楽しい

鍋が育つよろこび

続いて鍋をいただこう。

先ほどの焼肉があれだけおいしかったのだ。
きっと鍋もタイならではのダシがきいていて、さぞかし五臓六腑にしみわたる、はぁ〜生きてて良かったという味がするのだろう。

そう期待しながら、まずはスープを一口すすってみると、

これは、お湯ですね…

のどにソムリエを降臨させれば、タイぐらい遠くにカツオだしを感じなくもないが、ただの食いしん坊の感覚ではシンプルなお湯。

そこで煮込まれていた野菜は、しゃぶしゃぶチェーンの名前ではない本当の温野菜。でもさっきのナムチムをつければしっかりおいしく、よせ鍋をぽん酢につけて食べるような楽しみ方なのかもしれない。

ただ、ここで気づいた。
これ、育てるやつだ。

今いちどこのムーガタ鍋に注目すると、鉄板で焼いた肉からあふれたうまみや脂が、ドームをつたって鍋ゾーンに流れこんでいた。

まるで源流の雪どけで川の水量が増すように、肉を焼けば焼くほど鍋のおいしさが増していくのだ。

僕と石川さんのギアが上がる音がした。
ここからしばらくは、とにかく焼いて食べることに集中だ。たくさん食べてうまみを出して、鍋のスープを一人前にするのだ。

気づけば我々は、これを努力と呼んでいた。

もう見映えなんて気にしない。ごった煮ならぬごった焼き。
肉を食う努力
エビを食べる努力
合ってるか分からないけど、鉄板の上からスープをかけてエキスを流しこんだりもした。

そんな爆食モードで、鉄板いっぱいに焼いては食べてを2回転ほどやった結果、

スープが茶色くなってきた!
味が、染みてる…

野菜に味がしみこみ、口のなかでうまさがジュワッとあふれるようになった。

正直に言えば、これでもまだナムチムはかけた方がおいしい。でも確実に成長している。上手くはなくてもよくここまで頑張ったと、子どものピアノの発表会を見る親のような喜びがある。

今回は2人で育てたが、もっと大人数で焼肉をすれば、より仕上げることができるのだろう。

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自分だけのおいしさをさがす

ここまで見ていただいた通り、このムーガタは、食材・調理方法・ナムチムなど、自分で選べる要素がとても多い。

ナムチムは緑と赤を混ぜてもおいしいらしい。

そのため、次どうしようとか、これどうしたらいいんだとか迷うこともあった。

育てて味がついた鍋スープが干上がってしまったとき、ヤカンのダシ(ほぼお湯)をどれぐらい足すかも迷った。

その一方、これだけ選択肢があるからこそ、あるものは何でも使って自分だけのおいしさを見つけたいという気持ちにもなってくる。

そんな中で1つ気づいたのが、

そういえばここにパクチーあるじゃん!
これを肉と一緒に焼いてみると、
これこれ、これですよ!
これは間違いない味!

この日いちばんのタイらしいおいしさを味わうことができた。

結果だけ見れば、タイ料理屋で肉とパクチーを一緒に焼いて食べたらそりゃうまいだろうと思うかもしれない。

でも、この「あらゆる手段を使っておいしい食べ方を見つけるぞ」モードになっていなければ、飲み物に入っているパクチーを焼こうとは思わなかったと思う。

それぐらい、ムーガタはおいしさに対する探求心を引き出してくれる焼肉だった。

サイドメニューにあったソムタム(青パパイヤのサラダ)もおいしかった。甘酸っぱさが口の中をまろやかにしてくれて、合間にはさむと次の肉への活力にもなる。

「もっとやれるはず」というリピート理由

はじめてのスタイルと選択肢の多さに、ムーガタの99分間はあっという間に過ぎていった。

帰りの電車のなか「今度はもっと肉や海鮮を煮て食べたい」「ナムチムを混ぜるのもやってみよう」など、僕は次に行くときのことばかり考えていた。口コミを見たら、しめにインスタント麺を入れることもできたらしい。

すごくおいしかった。でももっとやれるはず。
ムーガタは、そんな次への意欲が自然とわいてくる焼肉でもあった。

【取材協力】
MOOKATA湯島店

 

ささやかなおまけ
記事で使わなかった写真

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