特集 2026年5月8日

山の中にある日本一小さい砂丘? 館山砂丘

砂山と呼んでいる 

さて、この館山砂丘。まったくぼく個人の私見で「日本一小さい砂丘」と言ってしまうが、なんでこんなところに砂丘ができているのだろうか。

気になるところだが、実は、館山砂丘に向かう前に館山市立図書館に立ち寄り、この館山砂丘に関する資料を調べていた。砂丘への到着に時間がかかったのはそのせいだった。

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館山市立図書館

館山砂丘に関しては、事前に問い合わせをしておいたので、司書さんが集めてくれた資料を調べてコピーをとった。

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館山砂丘に関する資料

司書さんに館山砂丘について話を聞いてみたところ「砂山のことですか?」という。どうやら、地元の人は館山砂丘などとは言わず、みんな砂山と呼んでいるらしい。

司書さんによると、砂山は小学生の頃に遠足で行ったことがあるが、それ以降は行ったことがない。とのこと。また、別の司書さんの話によると、砂山の砂地は年々小さくなってきているという。

1960年代の航空写真と見比べると、確かに小さくなっているのはわかる。

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モノクロの方が1960年代の館山砂丘(地理院地図)
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平砂浦海岸の砂防の歴史

グーグルマップに「館山砂丘」と呼ばれている場所は、平砂浦(へいさうら)海岸とよばれている場所のすぐ隣だ。

平砂浦を含む館山の南側の神戸(かんべ)地区周辺は、かつて阿波国(今の徳島県)から海を伝って渡ってきた忌部(いんべ)氏が住み着き、開拓を行ったという伝承が伝わる場所だ。
房総の房の部分の由来となっている昔の国名、安房国(あわのくに)の「あわ」は、徳島県の阿波がルーツだと言われている。

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神戸地区と平砂浦の様子。上に書いてある「砂山」が今の館山砂丘(安房博物館『館山市の生活』昭和52年より)

時代がグーッと進んで、江戸時代の1703年(元禄16)年11月23日、南関東を大地震と大津波が襲う。この時、平砂浦を含む房総半島の先は地面が隆起し、大きな砂浜が突如出現したという。

この砂浜が大変な厄介者で、秋から冬にかけて吹き付けるものすごい西風の季節風が砂をもうもうと吹き上げ、一晩で田んぼや畑を砂に埋めてしまう、飛砂の害が出始めた。

地元の人達は大変困り、垣根を作るなどの防御策もおこなうものの、効果は限定的だった。

垣根を作るだけでは間に合わないため、田んぼや畑に溜まった砂はいちいち掻き出し、川に流しこんでいたという。この砂流しといわれる作業は、昭和20年代まで200年以上も続けられていた。

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海の底だった砂地が陸となったため、風で砂が飛ばされてくるようになった(安房博物館『館山市の生活』昭和52年より)

1921(大正10)年、島田万吉という村人たちが、他の村人に笑われつつも、竹垣を作って松を見事に育てることに5年かけて成功する。松を植林すれば、砂の飛散は劇的に押さえられる。これで、畑を開墾することができると意気込んだ矢先、2年後の1923(大正12)年の関東大震災で砂浜がさらに広がるという想定外の事態に遭い、開墾が失敗してしまう。

その後、太平洋戦争中は平砂浦は軍用地として田畑もろとも買収されたりしたが、戦後は住民の人たちの手に土地は戻り、再び防砂垣の設置や植林が始まった。

平砂浦の植林事業は、戦後に県の主導になり、防砂林は昭和33年には完成。以降、飛砂の害は減り、レタスやスイカなどの野菜や花の栽培などが行われるようになったという。

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道路の脇に広がる松林

と、平砂浦の砂防の歴史を紐解いたが、おそらく、砂山と呼ばれている館山砂丘は、江戸時代に砂の害がひどくなったおり、風で飛ばされた砂が山の窪みとなっているところに溜まり、砂丘のようになった場所⋯⋯なのではないだろうか。

飛砂の害が押さえられるようになった最近は、砂山の砂の面積が減っているという情報とも辻褄が合う。

さらに、砂山の砂をよく見ると、貝殻が砕けたような粒もたくさん見られる。

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白い粒は、貝殻が砕けたような粒

山の中にある、日本一小さいと思われる館山砂丘は、江戸時代から続く、砂との戦いの痕跡と言えるかもしれない。

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結局、館山砂丘は日本一小さい砂丘なのか? 

さて、この砂山だけれども、果たして日本一小さい砂丘と言えるのだろうか?

まず、地元の人に館山砂丘と呼ばれていないという事はある。とはいえ、館山砂丘や館山の砂丘と表記する例もなくもないので、とりあえず、館山砂丘=砂山ということにしておきたい。

砂が風に飛ばされてできた小高い丘。というのもまあ、条件としては十分ではないだろうか。風で飛んできた砂が積もれば砂丘と言えるので、山の中にある砂山でも砂丘と言える。

面積もざっと目視で測ってみたところ、約2.37ヘクタールほどと出た。

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館山砂丘の大まかな面積。砂地だけをざっと見積もってみた。もう少し大きく見積もっても3ヘクタールぐらいだろう

定義が曖昧だと言われているのを承知の上であえて鳥取砂丘の面積をネットで調べたところ、545ヘクタールという数字が出てきた。

「砂丘」と呼ばれている場所で、2.37ヘクタールより小さいところが他になければ、この館山砂丘が日本一小さい砂丘ということでも良いのではないか? と思うがどうだろう。


意外とすごい館山砂丘

とても小さい砂丘だったが、実際に行くと意外とデカい。なんだか小兵力士のような頼もしさがある館山砂丘。

「小さい」という先入観をしっかり頭に入れてから実際に行くと「え、意外とデカいじゃん」という感じになっておもしろいのでぜひ試してみてほしい。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
館山砂丘、全然知らない場所でしたが読んだら一気に詳しくなれました。「砂山」って呼ばれてるの良いですね。呼称が無機質すぎる。 序盤からわりとしっかりその小ささをインプットされたうえで、写真はしっかり迫力があるので、記事中にもある「え、意外とデカいじゃん」の気持ちがしっかり追体験できる記事だったと思います。余談ですがコンビニ弁当を前にした西村さんの表情が完全に昇天してるの笑いました。見落とした人は絶対に一回戻って見返してください。(石川)

ささやかなおまけ
記事に使わなかった写真

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