特集 2026年6月9日

続・建物の汚れカタログ

植物の営みによる汚れ

 

ここでは植物の営みによる汚れが二つ見える。

一つは「植物ワイパー」 だ。

かつてはこの白い部分に枝が垂れており、風で左右に揺れて壁をこすったのだろう。その部分だけが白く削れて、円弧状の跡を残している。赤瀬川原平が植物ワイパーと名付けている。

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もう一つは、植物の下の塀が黒く汚れていること自体だ。植物は、自分自身を保護するなどいろいろな理由で粘液を分泌する。つまり若干ペタペタしている。それが雨などで塀に移りホコリがつきやすくなるのだ。

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エフロレッセンス

壁に滝が流れているように見える白い部分は、すべてエフロレッセンスという現象による汚れである。

コンクリートの中の石灰分が表面に出てきて、炭酸カルシウムとして析出したものだ。表面に出てくるということは、コンクリートにひび割れがあって、雨が石灰分を中から引っ張りだしたということなので、壁がもろくなっているシグナルである。

この壁だと作品の一部かというくらい一見きれいだけれども、実際の建物なら補修のサインである。

この左側の白い筋もそう。古くなった塀などでよく見られる。日本語では白華(はっか)。こっちの響きも素敵。

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理由を推測したくなる汚れ

どうしてそこだけが突然汚れているのか、と思うときがある。その理由を考えるのも少し楽しい。

黄色い装飾テントの真ん中が突然汚れている。

こういうときは上を見るといい。真上にあたる場所に庇と雨樋がある。庇にたまった汚れが雨でここに着地したのだろう。

矢印のところに、バーコードみたいな複雑な汚れがある。これは何か。 

正面に回るとこんな感じだ。ATHENEE のように書かれた文字(箱文字)の場所と汚れの筋が対応しているように見える。

文字にそって雨水の動きを想定すると、ちょうど水が落ちたところに筋があるようにも見える。Ç の下がにょろっとしてるやつも、にょろ部分から水が落ちている。あれって水の通り道にもなるのか。

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見事な汚れ

なかには目を見張るような美しい汚れもある。

庇の裏が曲面になっていると、汚れの筋がこんなふうになる。装飾みたいだ。

これも曲面タイプ。水戸駅前の百貨店だったと思う。

 

千葉工業大学の八馬さんが見つけた汚れ。もはや汚れではない。


まとめ

ぼくが汚れを好きなのは、そこに理由があるからだ。思いがけない理由で汚れていたり、新しいパターンで汚れていたりすると嬉しくなる。汚れの棚に一つずつ入れていく。

もう一つは、きれいだからだ。壁の汚れは、近づいて一部だけを切り出すと絵画のようでもある。そういう趣旨で撮られた「壁の本」という本すらある。汚れの奥は深い。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
すごい。めちゃめちゃ面白い記事でした。個人的には特に「ATHENEE」の文字からの汚れが良かったです。汚れの理由としても考えたことのない理由だったし、またビジュアル的にもかっこいいですよね。文字が手前に飛び出してきてるみたいな感じで(もともと物理的に飛び出してはいるのですが…)。
三土さん、街中の「物」にも詳しいのですが、こういう「現象」に注目していろいろ集めているのはさらに面白い。もっと読みたいので編集として三土さんにどんどんお願いしていこうと思います。(石川)

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