まとめ
ぼくが汚れを好きなのは、そこに理由があるからだ。思いがけない理由で汚れていたり、新しいパターンで汚れていたりすると嬉しくなる。汚れの棚に一つずつ入れていく。
もう一つは、きれいだからだ。壁の汚れは、近づいて一部だけを切り出すと絵画のようでもある。そういう趣旨で撮られた「壁の本」という本すらある。汚れの奥は深い。

ここでは植物の営みによる汚れが二つ見える。
一つは「植物ワイパー」 だ。

かつてはこの白い部分に枝が垂れており、風で左右に揺れて壁をこすったのだろう。その部分だけが白く削れて、円弧状の跡を残している。赤瀬川原平が植物ワイパーと名付けている。

もう一つは、植物の下の塀が黒く汚れていること自体だ。植物は、自分自身を保護するなどいろいろな理由で粘液を分泌する。つまり若干ペタペタしている。それが雨などで塀に移りホコリがつきやすくなるのだ。

壁に滝が流れているように見える白い部分は、すべてエフロレッセンスという現象による汚れである。
コンクリートの中の石灰分が表面に出てきて、炭酸カルシウムとして析出したものだ。表面に出てくるということは、コンクリートにひび割れがあって、雨が石灰分を中から引っ張りだしたということなので、壁がもろくなっているシグナルである。
この壁だと作品の一部かというくらい一見きれいだけれども、実際の建物なら補修のサインである。

この左側の白い筋もそう。古くなった塀などでよく見られる。日本語では白華(はっか)。こっちの響きも素敵。
どうしてそこだけが突然汚れているのか、と思うときがある。その理由を考えるのも少し楽しい。

黄色い装飾テントの真ん中が突然汚れている。
こういうときは上を見るといい。真上にあたる場所に庇と雨樋がある。庇にたまった汚れが雨でここに着地したのだろう。

矢印のところに、バーコードみたいな複雑な汚れがある。これは何か。

正面に回るとこんな感じだ。ATHENEE のように書かれた文字(箱文字)の場所と汚れの筋が対応しているように見える。

文字にそって雨水の動きを想定すると、ちょうど水が落ちたところに筋があるようにも見える。Ç の下がにょろっとしてるやつも、にょろ部分から水が落ちている。あれって水の通り道にもなるのか。
なかには目を見張るような美しい汚れもある。

庇の裏が曲面になっていると、汚れの筋がこんなふうになる。装飾みたいだ。

これも曲面タイプ。水戸駅前の百貨店だったと思う。
千葉工業大学の八馬さんが見つけた汚れ。もはや汚れではない。
ぼくが汚れを好きなのは、そこに理由があるからだ。思いがけない理由で汚れていたり、新しいパターンで汚れていたりすると嬉しくなる。汚れの棚に一つずつ入れていく。
もう一つは、きれいだからだ。壁の汚れは、近づいて一部だけを切り出すと絵画のようでもある。そういう趣旨で撮られた「壁の本」という本すらある。汚れの奥は深い。
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