特集 2025年12月17日

21世紀、もう四半世紀たってしまったのか ~建物で振り返る25年~

【2006年~2019年】その1…ゾクゾクと建てられる超高層、そしてヒルズ的なもの

2006年以降は、皆さんご存じの通り、現在に至るまでヒルズ的なものが次々と建てられている。

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2007年オープンの東京ミッドタウンは、六本木ヒルズのフォーマットをさらに洗練させた。周りの公園部分もふくめて、とにかく良く出来ているなと思う。中にあるサントリー美術館もおすすめ
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2014年オープンの虎ノ門ヒルズ。このあたりから見わけがつかなくなってきた
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2018年オープンの東京ミッドタウン日比谷。隣の日比谷シャンテの曲線美や、元々建っていた戦前のビルのデザインを活かしてつくられている
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最新は2023年オープンの麻布台ヒルズだろう。10年ぶりに、東京があべのハルカスから日本一の高さのビルの座を奪った

たくさんありすぎて、素人には区別がつかないのは東京ならではの贅沢な悩みなんだろうか。詳しい方に、どこをどう使い分けているのか聞いてみたい。 

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縦型の再開発といえば今「100年に一度」の再開発真っ只中の渋谷も

自分が10代の頃は渋谷に超高層のイメージってなかったけど、今見ると超高層ビルだらけ。2013年の渋谷ヒカリエを皮切りに、渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエア、渋谷フクラス、渋谷サクラステージ、渋谷アクシュなどの超高層複合ビルが続々とできている。

2009年頃の浪人生活の1年間、渋谷に逃避行のように服を買いに行っていたが、今はなんだか見知らぬ街になってしまった。

2019年、六本木ヒルズにあったGoogle日本本社が渋谷ストリームに移転したことも、街の役割の変化として話題となった。

このヒルズ的ビルは、2026年以降も変わらず作られ続けていくのか、それともガラッとまた流れが変わる時が来るのだろうか。

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2006年オープンの表参道ヒルズは名前で同一視されがちだけど、低層かつ地形を生かしたスロープ構造となっており毛色が違う

では、関西の方はどうか。

筆者は2009年から2016年まで京都にいたため、遊びや就活(関西の人は就↑活↓というイントネーションで読む)は大阪の梅田に行くことが多かった。

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2013年オープンのグランフロント大阪。駅直結にして、東京でも見ないレベルの巨大な複合ビルで、内部もゆとりがある。高くて何も買えないけど就活の時に暇つぶしで寄っていた
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同じく2013年に当時日本一の高さとなった、あべのハルカス

2010年代といえば、どうしても避けて通れないのが、2011年の東日本大震災だ。

起きた当日は春休み中で、京都のアパートにいた。テレビのニュースをみても、にわかには現実感がわかなかった覚えがある。LINEもない時代だった。いつもなら「便りがないのはいい便り」くらいの感覚で過ごしていたけれど、さすがにこのときは、神奈川の実家に電話をかけた。

4月になると、大学のゼミを担当していたカナダ人の教授が、「一身上の都合」により帰国していた。

そんな時代だったけど、2012年には東京スカイツリーが、2013年にはあべのハルカスが完成する。

震災復興がなかなか進まない中、大都市だけニョキニョキとビルが建つ。当時は、「もう成熟した日本で、高さを競う必要はないんじゃないの?」といった議論も、けっこうあったように思う。

けれど今は、そうした疑問を挟む余地もないくらい、東京も大阪も超高層だらけになっている。

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2024年には長らく活用が望まれていた旧梅田貨物駅跡地に、グラングリーン大阪が一部開業。最新の再開発らしく、公園部分も広い

 

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【2006年~2019年】その2…壊すだけでなく、保存したり、復元したり、面影を残したり

2000年代、特に後半以降になると、ただ新しいものを作ればいいわけじゃないよね…という機運も高まってきた。

古くて良いものを、さまざまな形で残そうとする動きがあらわれ始める。

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たとえば大正時代に建てられ、当時としては貴重な存在だった旧国立駅舎。2006年に一度は解体されたものの、部材は保存され、2020年に再建された

当時、筆者は国立の学校に通っていたため、毎日のように使っていた旧駅舎。だが当時は駅の向かいにある100円マックを食べながら、ガラケーで都市伝説を読むことに夢中で、特に思い入れがないままに解体された。

あらためて今見ると素敵な駅舎だったんだな、と思う。

また、この時代から、地域の過疎化やコミュニティの高齢化と呼応するかたちで、「コミュニティ・デザイン」と呼ばれる動きが盛んに語られるようになった。人が集う場所や、人と人とのつながりを生み出す場を、意識的につくろうという考え方である。

古い建物を活用したリノベーションや、カフェやイベントができる図書館なども話題になった。旧国立駅舎も、いまではイベントスペースとして使われている。

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旧奈良駅舎は2010年にリノベーションして観光案内所になる。イベントも積極的に行われている
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丸の内の三菱一号館は明治27年(1894年)築だが、1968年に取り壊したものを2009年に復元

今では「ずっとここにありました」という顔で立っているが、その直前までここがどうなっていたのか、もう思い出せない。

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2012年に東京駅も竣工当時の形に復原。建物の「容積率」を周りのビルに売ることで、復原費用をまかなったことが話題となった
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東京駅に向かい合う、KITTE丸ノ内は2013年にオープン

KITTE丸ノ内(JPタワー)は、超高層ビルの低層部に、かつての建物の外壁を保存する、いわゆる「腰巻ビル」だが、ここに至るまでには、かなりの紆余曲折があった。

もともとこの場所には、戦前の名建築として知られた東京中央郵便局が建っていた。それをどこまで保存するのかをめぐっては、2009年頃、当時の総務大臣だった鳩山邦夫氏までが意見する、という一幕もあった。結果として、当初の計画よりも大きな部分が保存されることになった。

なお、大阪にも大阪中央郵便局という、同じく戦前の名建築があった。こちらはごく一部を残して2012年に解体され、再利用を待つ間、長らくファンシーなイラストの覆いをかぶせられていた姿は、けっこう不憫だった。2024年になって、ようやくKITTE大阪のエントランス部分として活かされたようだ。

保存の形も、徐々に洗練されていく。 

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1960年につくられた名建築である京都会館は、2016年にロームシアターとして外見はできるだけそのままに内部を現代的にアップデートし、リニューアルオープンした
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2013年に建て替えらえた銀座の歌舞伎座も、出来る限り昔のイメージを継承している

後ろの超高層ビル部分が目立たないように工夫されているため、違和感のない外見をしている。いわゆる「腰巻ビル」に比べて、時代が新しい分だけ工夫されているのだ。2000年代以降、保存・継承の方法は多様化し、また洗練されている。

このビルの設計は、あの隈研吾だ。

隈研吾、2010年代くらいまではまだ有名建築家のひとりといった感じだったと思うけど、東京オリンピック前後で、お茶の間にまで名を知られる建築家になったと思う。

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歌舞伎座と同じ2013年につくられたサニーヒルズ南青山は、コンピューター上でアルゴリズムを利用してデザインされている
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2019年にオープンした新国立競技場。その経緯も含めて、国民全体を巻き込むほどのニュースになった

東京オリンピックに向けて、不安と期待が高まった時代だ。

それが、2020年早々に世界は一変することとなる。

 

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