テーマが大きすぎた
21世紀を代表する建物なんて、まだまだいくらでもある。
……というか、正直に言うと、ほとんど取り上げられていない気もしている。
でも、そこはそれぞれに、それぞれの25年があるということで、
このあたりで、ちょっと許してもらえたらうれしい。
たぶん、同じように建物を振り返ってみても、人によってまったく違う25年になるはずだ。
2020年以降の話を始めるなら、やはりコロナ禍に触れないわけにはいかない。
人が集まるためにつくられてきた建物が、急に「集まらないでください」と言われる時代になった。東日本大震災以降、大がかりなハコモノより、小規模でもコミュニティを育む建築が尊ばれてきたが、そこに唐突な「三密回避」がやってきた。
特に大変だったのは、新しくオープンするはずだった施設だろう。
たとえば、2020年3月に竣工した複合商業施設、羽田エアポートガーデン。コロナの影響で、全面開業は2023年1月までずれ込んでしまった。
コロナ禍の数年間は、記憶としてはまだ新しいはずなのに、5年たった今、思い出そうとすると、ずいぶん昔のことのようにも感じる。
どこにも行かなかった分、記憶も薄くなりがちなのかもしれない。写真を撮るなんて意識も薄かった。
でも、あの時期に活躍した小さな仮設の建物たちは、かなり大きな役割を果たしていたと思う。忘れないでおきたい。
また、コロナ以降は都心のオフィス需要も頭打ちになり、ビルは建つけどテナントが埋まらない、という話もよく聞くようになった。今後は、六本木ヒルズ的な建物が延々と建ち続ける時代ではなくなるのかもしれない。
さらに建設費の上昇で、これまで無限に続くかのように見えた都市部の再開発が、いったん止まる、という事態も起きている。
とはいえ、新宿西口では今も工事が続いているし、地元の橋本駅も、リニアが来ることを信じて、新駅の工事が進んでいる。
あれだけ工事が間に合わないと言われていた大阪・関西万博も、万博リングなど、建築史に残るものをちゃんと残した。
現在進行形の出来事というのは、先行きがわからないぶん、どうしても不安になりがちだ。
でもそれ以上に、25年後、50年後、欲を言えば75年後、この風景がどうなっているのかを知りたい、という気持ちのほうがずっと強い。楽しみだ。
その頃、いま当たり前に見ている建物も、「そんな時代があったんだ」と懐かしく振り返られているはずだ。
まあ、そのためにも、健康に生きることが一番ですね。
21世紀を代表する建物なんて、まだまだいくらでもある。
……というか、正直に言うと、ほとんど取り上げられていない気もしている。
でも、そこはそれぞれに、それぞれの25年があるということで、
このあたりで、ちょっと許してもらえたらうれしい。
たぶん、同じように建物を振り返ってみても、人によってまったく違う25年になるはずだ。
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