デジタルリマスター 2023年7月15日

タルタルカツ丼とオランダコロッケの街・群馬へ(デジタルリマスター)

揚げ物が好きだ。

という書き出し、自分でもどうかと思うが、揚げ物が好きだ。カツとかコロッケなんて言うに及ばず、1日中、口の中をそれで満たして移動したい。

そんな風に揚げ物へ想いを寄せていたある日、わが故郷群馬にこれまた魅力的な揚げ物を発見してしまった。そしてそれらは偶然にも、庶民的な中にヨーロッパの香り漂うものだった。名づけて「群馬ヨーロピアン揚げ物の旅」だ。

2008年10月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

前の記事:家具転倒防止邪鬼(デジタルリマスター)

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絶対うまい

「~の旅」と銘打ったが、実は当サイト6周年記念で「磯部温泉」を訪れた際、ついでに取材させてもらった。恐縮です。前日はJR信越本線の磯部駅近辺でコネタを集めまわり、翌日すぐ隣の安中駅に足を伸ばした。

自分は群馬出身、といってもこの地域は不案内に等しい。駅でタクシーを拾い、10分ほどで旧中仙道沿いの「板鼻館」に到着した。この、一見ふつうの食堂に、パンチの聞いたカツ丼があるという。

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このあたりは江戸時代「板鼻宿」として栄えた。風情ある家並みの一角にでんと建つ老舗「板鼻館」。

遅めの昼にお邪魔したら、おじさんが1人、2人、テレビのほうを向いて黙々と丼物を食べていた。私も頼むしかない。あれを目当てに来たのだ。

「タルタルカツ丼くださいー」

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卵なしカツ丼再び

「タルタルソース+カツ丼」。ありそうでなかったこの組み合わせ。ミスマッチに聞こえるだろうか、それとも「そりゃやられた!」となるか。

ここで言って置きたいのは、このあたりのカツ丼は「卵でとじたカツ丼」ではなく、以前桐生のカツ丼記事で触れたような「卵で閉じないカツ丼」が主流なのだ。「ソースカツ丼」と言わず、このように「卵で閉じないカツ丼」と文字数2倍で回りくどく表現したのにはわけがある。

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レトロで落ち着いた、小綺麗な店内。お隣・高崎市名物のダルマが全員こっちを見てた。

そうだよそうだよソースだよ(古い)じゃなくて「ソースじゃないよ」、醤油ベースのタレなのだ。メニューにも「甘辛醤油味です。ソースは入っていません。」と断り書きがしてあり、近県・新潟の「タレカツ」を思い出させる。ここ群馬の西毛地区は、「卵とじカツ丼」「ソースカツ丼」に続く第3のカツ丼「醤油系タレ」の地域なのだ(ご主人・談)。

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メニューには「カツ丼」の下に「卵とじカツ丼」とわざわざ分けられており、「卵でとじない」方が主流だということを物語る。

「タルタルカツ丼」は、その甘辛醤油味の「卵なしカツ丼」にタルタルソースをかけた一品なのである。 

と、ながなが話してきたがもうだめだ。早くそのタルタルカツ丼、見せびらかしたい。お待たせしました。

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ドンドンドーン!タルタルカツ丼ー!

ここでページレイアウトを切り替えますので、実際食べているかのごとく、じっくりスクロールしてお楽しみください。

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右下に濃い一画が。タルタルソースとゆで卵とあたり鉢・あたり棒がついてくる。
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タルタルソースとゆで卵を自分で混ぜる喜び、ってあるよね。
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そしてそれを、カツ丼の上に惜しげもなく。
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あわてて撮りましたので、噛みかけですみません、失礼します。

ロースカツに、ソースカツ丼のよりも若干甘辛いタレが絡んで、そこにマヨネーズ味のほっこりしたソースが合わさって、「今私はうまいものを食べてる」という実感が沸きに沸く。だが女性なら、たぶんやっと食べ終えるくらいの、なかなかの量だ。

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カツをめくると、タレ味のやわらか玉ねぎが。汚れていくご飯がまたうれしい風景。

このタルタルカツ丼は3年前からメニューに加えられたそうだ。なぜタルタルなんですか?とご主人にキッカケを聞くと、「若いお客さんが、カツ丼にマヨネーズかけて食べてたんだよ。で、それじゃ芸がねえなあと思って」

いわば老舗食堂の意地でもあるタルタルカツ丼。おかげで、わざわざ遠方からもこれを食べに、若い人らが来店するそうだ。

私の「タレ系カツ丼」名鑑に、またひとつマスターピースが加わった。

板鼻館

住所:群馬県安中市板鼻2-4-36
TEL:027-381-0305
営業時間:11時~14時30分 16時30分~20時
定休日:月曜

さて、今日のうちにもう一つ、揚げ物探しの旅を続けねばならない。高崎名物のダルマ並にパンパンのお腹をかかえて、再び信越本線に乗る―。

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地元民も知らなかった「名物」

信越本線で高崎方面に引き返すこと2駅、北高崎駅へ。このあたりに「オランダコロッケ」という高崎名物があるという。

「高崎名物・オランダコロッケ」?

高崎出身(現在東京在住)の友人に聞いてみたところ、「知らない」という答えが帰ってきた。大丈夫だろうか。

実はこの名物、今から8年前の2000年に、日本とオランダの国交400周年関連イベントが高崎で行われた際にできた、新名物なのだ。それより以前に東京に出てきた友人が知らないのも、無理はなかった。

そして、オランダコロッケを出す店は数店あるということで、事前にグーグルのマイマップ機能で地図に数箇所お店の印をつけ、プリントしておいた。その紙を、出発時に家に忘れた。

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こんな風にマイマップを設定したのに・・・(マップ名は「オランダコロッケ」) 。
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ハイテクをローテクで

地図に印をつけたときに、だいたいの店は北高崎周辺にあることを薄っすら覚えていたので、駅を誤らずに降りることはできた。でもそこから先はどうしようか。

そうだ、まったく問題ないのだった。グーグルのマイマップ上にその地図は存在しているのだから。持参のパソコンをネットにつなぎ、ハイテクを駆使して問題解決にあたる(でもつないでる場所はどこか銭湯の駐車場の地べた)。

しかしこの地図を見ながら、ということはパソコン開きながら店探し回るのか。このカンカン照りの下を。いや、そうだ、この画面をデジカメで写真に撮って、デジカメのモニタ見ればいい。

という要らん苦労があったことを記しておきたい。結局、なんと地図は、後日カバンの底から発見された。

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高崎中オランダコロッケだらけ、なわけじゃない

苦労は、実はその他にもあった。この日は水曜で、お店が定休日だったり。郊外なので次の店までとんでもなく歩かされたり。そもそもオランダコロッケの取り扱い自体辞めていたり。

そんなわけで5時間ほど歩き回って、やっと2軒の店でオランダコロッケを捕捉することができた。そのうち1軒をここで紹介させていただきたい。

長い前書きがやっと終わり、いよいよオランダコロッケとの出会いの時である。どうもお待たせしました。

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中は普通のお肉屋さんのようだが。
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入ってみるといたるところにオラコロフィーチャーぶりがうかがえる。

オラオラオラ!オランダコロッケー!

カウンター越しに注文し、待つこと数分。揚げたてのコロッケ、店外に出て割ってみる。
ここはページレイアウトを切り替えますので、実際食べているかのごとく、じっくりスクロールしてお楽しみください。

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俵型のコロッケ、というより本場オランダで言うところの「クロケット」ですね。

いまいち光線の具合がよろしくないので、結局お持ち帰り用を買って、帰宅後家で揚げてみた。

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あひひひ!ほれは、おらんは、ほろっへれふ!(あちちち!これがオランダコロッケです!)

中身はじゃがいもにチーズ、ベーコン、パセリ、玉ねぎを混ぜてある。これはもう、うまいに決まってる!というとお店に失礼かもしれないが、噛んでほろりと崩れる中身がたまらないんである。

オランダの味を参考にしたのかと思いきや、「味はこの店独自で調合」したそうだ。他の店では小判型だったりするのだが、ここでは試行錯誤の末、俵型がベストだという結果に落ち着いたという。

結局この日は2軒しか見つけられなかった「高崎名物・オランダコロッケ」。この名物の動向に、今後も注目していきたい(=また買いに行きたい)。

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持ち帰り用の生コロッケも同じ値段で。当然持ち帰らせていただきました。

平井精肉店

住所:群馬県高崎市大橋町7-18
TEL:027-322-3625
営業時間:10時~19時
定休日:日曜・祝日


昼にタルタルカツ丼、夕方にオランダコロッケと、オイル補給に忙しかった今回。強引に「群馬ヨーロピアン揚げ物旅」を敢行したが、いずれは福井のソースカツ丼の老舗「ヨーロッパ軒」を足して、「日本ヨーロピアン揚げ物旅」への足がかりにしたい。夢は世界制覇、と締めくくりたい。

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