魚チューブを食べ比べ
今回はスウェーデンの食べ方にならって試食するために、スウェーデン産の「クネッケブロード」と言うかた焼きパンも用意した。
クネッケブロードとは、ライ麦粉、水、塩のシンプルな材料で作られるクラッカーのような薄くて硬いパンである。スウェーデンではたらこチューブはもちろん、いろいろなトッピングと共に食べられる。
ドイツでも買えるクネッケブロード。パッケージのクリームチーズ、きゅうり、ミント、ざくろの盛り付けは日本人には思い付かないコンビネーションだ
クネッケブロードのお味は、硬くてボリボリでなんだか味気ない。失礼だが歯応えのある段ボールを食べてるんじゃないかと錯覚するぐらい面白味がない。
食べると「無」の顔になる、クネッケブロード
とても体に良さそうだが、これだけで食べるのはちょっと無理がある。
ちなみに、これはデカすぎて買えなかったスウェーデンのクネッケブロード。小さいものも売ってるがこれが伝統的なサイズで、真ん中に穴が空いてるそう
とにかく、このパンに6種類のチューブを塗って食べてみよう。
左上から時計回りに、カレスのオリジナルたらこチューブ、カレスのたらこ&卵クリームチーズペースト、カレスのヴィーガン版、サバのトマトソース、ニシンペースト、別ブランドのたらこチューブ
まずは定番中の定番、カレスのオリジナルから行ってみよう。
青いパッケージに黄色いフォントと、スウェーデンの国旗を思わせるデザイン。笑顔のカレ坊が目印だ
材料を見てみると、スモークたらこ(52%)に加え、なたね油、砂糖、塩、ポテトフレーク、トマトピュレーなどが入っている
やっぱりおいしい!
ちょっとスモークされた魚臭さと、甘さと猛烈なしょっぱさが口に広がる。プチプチ感はあまりなく、なめらかなペーストだ。日本のたらことは全く別物だが、これはこれで好きだ。
そして何より驚いたのが、たらことクネッケブロードとの相性が素晴らしいこと。
カレスのしょっぱさとパンのあっさりさでバランスがばっちり取れているのだ。自己主張しないクネッケブロードがしょっぱいたらこの味を引き立ててくれる。味気ないなんて失礼なことを言ってごめんなさい。
間髪入れず、次に行ってみよう。
次は同じくたらこペーストだが、値段は先ほどのカレスより少しだけ高め。
パッケージが違うから別のメーカーかと思ったら、カレスと同じ会社だった。材料もカレスとほぼ同じだ。
高級感漂う上品なパッケージ
色はカレス(上)と比べて少し濃いピンクだ
果たして味はどう違うのか。
うーん……違いがわからない
カレスと同じくめちゃくちゃしょっぱくて甘くてスモーキーな味がするが、どう違うんだろう。
何度かカレスと食べ比べてみたが、私には違いがあまりわからなく、ただただ喉が渇いただけだった。
パッケージがおしゃれなのでお土産には良いかもしれないが、自分用だったらカレスで十分かなと思った。
カレスのオルタナティブ商品を食べてみよう
次は同じくカレスブランドだけど、卵とクリームチーズ入りバージョンを食べてみよう。
しましまのパッケージがとてもかわいい
先ほどのたらこチューブと違って生臭さはしないな……
うわ、めっちゃおいしい!
食べると卵の味が口の中にふわっと広がる。あとクリームチーズのおかげでたらこの味がさらにマイルドになって食べやすい。というか、たらこ感があんまり無い。
後日日本人の友人に食べてもらったら「ウィンナーコッペパンの上にかかってるマヨネーズっぽいソースの味がする!」と言っていた。わかる、わかる!
たらこチューブとはちょっと別物だけど、すごくおいしい。今度これでサンドイッチを作ってみよう。
お次はカレスのヴィーガン版。
「オリジナルと同じくらいおいしくて、100%ヴィーガン!」って言ってる
裏の材料を見ると「Tångcaviar (Seaweed caviar)」と書いてある。海藻キャビア?つぶつぶした海藻といえば海ぶどうが思い浮かぶが、海ぶどうだったら絶対おいしいのでは。ちょっと期待が高まる。
チューブから出してみるとピンク色だった。やっぱり海ぶどうではないのかな?海藻なので魚の生臭さはない
なんだかモサモサしてる……
食べてみると海藻っぽさがなく、どちらかというとポテトサラダを思わせるモサモサ感。うーん、あんまり好きじゃないかも……
オリジナルのたらこペーストに近づけたくて頑張ったのは認めるけど、残念ながら私の口にはあまり合わなかった。
あとで「海藻キャビア」というものを詳しく調べてみたら、昆布パウダーに味付けをしたペーストを、シャワーヘッドのような機械を通して魚卵のようなプチプチを再現したものだそう。ちょっと思っていたのと違ったが、それはそれでものすごい頑張りようだ。
ニシンとサバのチューブが普通においしい
次は別の会社のニシンペーストを食べてみよう。
ジャケ買いしたニシンのチューブ。さすがスウェーデン、デザインが素敵だ
色はグレーで、匂いはあまり強くない
おお、ちゃんと魚の味がしておいしい!
このチューブは魚の身メインのペーストなようだが、数の子が少しだけ入っていてたまにプチっとするのが良い。味はたらこチューブほどしょっぱくなく、シンプルな味付けで魚っぽくてうまい。
強いていえばペーストがちょっとベチャッとするので、少し硬めに作ってくれるとよりおいしい気がする。
そして最後はサバとトマトソースのチューブ。
サバとウロコのデザインがおもしろい
これは普通においしい!
口に入れた途端、トマト!まさにサバのトマト煮をペーストにしたものだ。普通にとてもおいしいので、日本人の口にも合うと思う。
後日、ゆで上がったパスタに絡めたら本当においしかった。冷蔵庫に一本あったら重宝するチューブだ。ドイツにはサバトマトの缶詰だったら売ってるので、今度買ってみよう。
ゆで卵&魚卵のコンビネーションがめちゃめちゃいい
そして最後はせっかくなので、たらこチューブの王道の食べ方を試してみた。
パンにゆで卵を乗せてその上にたらこチューブを出して食べるのだが、ゆで卵の上にたらこって、ダブルたまごでやりすぎじゃないかと思うのだが、どうなんだろう。
ゆで卵とたらこの色がマッチしてる。見た目はとてもかわいい
なんだこれ、めちゃめちゃ合う!
ぱっと見、不思議なコンビネーションだが、卵の蛋白さとたらこの甘塩っぱさが猛烈に合うのだ。
クネッケブロードと同じく、たらこチューブはあまり自己主張しないものと合わせるととてもおいしいのだな。じゃがいもとたらこも良く合うもんね。
やっぱりスウェーデン人はたらこチューブを最もおいしく食べる方法をちゃんと考え出していたことが分かった。
たらこチューブはスウェーデンの国宝
スウェーデン人の友人に、スウェーデン人にとってたらこチューブってどんな存在?と聞いてみたらこんな答えが返ってきた。


ちょっと大げさなジョークかもしれないが、「スウェーデンの国宝」と言う力強いコメントをもらえた。スウェーデンでは大体どこの家の冷蔵庫にも常備してあるものだそうで、生活になくてはならない存在らしい。す、すごいぞ、たらこチューブ。
またネットで見つけたスウェーデンのチューブ入り食品に関する論文には、頻度的には月に数回、または週に一度は食べる人が多く、主に朝ごはんやおやつとして食べられるそうだ。そしてやはり茹で卵スライスを乗せたパン(または茹で卵にダイレクト)に塗って食べられることが多いと書いてあった。
またその論文によると、ナイフやスプーンを使わずパンに塗れるので手が汚れず楽ちんなのがチューブの魅力だそう。あとは模様や字を書いたりできるので子供に人気で、学校や幼稚園などでも食べられているとのこと。
とにかく、たらこチューブはスウェーデン人の生活には無くてはならないもの食べ物なのだ。
スウェーデンのふりかけ的存在
友人から「スウェーデンの国宝」というパワーワードが出た、スウェーデンのたらこチューブ。冷蔵庫に常備してある、手頃に食べれて生活に欠かせないおかず的な存在。
何もない時に炭水化物と一緒にパッと食べれるものと言えば、日本食だとふりかけみたいなものだろうか。日本人がふりかけご飯を食べるとほっこりするように、きっとスウェーデン人はこれを食べるとホッとするのだろう。
日本では手に入りにくいようだが、チャンスがあればぜひスウェーデンの国民食をお試しあれ。
ちなみに、日本でカレスを試食してもらったけど日本人の口には合わなかった、みたいなカレスのコマーシャルを見つけた。スウェーデンらしい自虐的ユーモアだ
編集部からのみどころを読む
編集部からのみどころ
最後のCMが不思議ですよね(商品のアピールになってない!)
ほりべさんに「スウェーデンらしい自虐的ユーモア 」について聞いたところ、 「スウェーデン人は謙虚で見栄を張るのが苦手みたいで、自分を笑いの対象にする感じのユーモアが多い気がします」だそうです。もちろんそうじゃない人もいるとのこと。
ほりべさんの記事を読むとヨーロッパの解像度がどんどんあがっていくのが快感です。あと1ページ目のABBAがかわいいのでもういちど見てね。(林)