ウィルキンソンに残された謎
今回さまざまな炭酸飲料の炭酸を抜いて飲んでみたが、一つだけ挫折したものがある。炭酸水のウィルキンソンだ。
ウィルキンソンは最後まで炭酸を抜き切ることができなかったのだ。他の炭酸同様それなりに振ることで炭酸を抜き、それなりに放置し日数を経たのだが、飲んでみると口の中にぷちぷちとした炭酸の刺激が残ってしまったのだ。
なぜウィルキンソンの炭酸は抜け切らないのか。
もしご存じの方がいれば教えてください。何卒よろしくお願いいたします。
炭酸飲料が大好きだ。愛しているといってもいい。あの口の中に広がるシュワっとした爽やかな刺激は幼少期の頃から私を虜にし続けてきた。
しかし、ふと気になってしまった。雨がいつかは止むように、炭酸もほうっておくといつかは抜けていく。炭酸飲料はあのシュワシュワがなくなった時、一体どんな味で私をむかえてくれるのだろうか。
炭酸、抜いてみよう。
今年もこれから夏が来る。しかも今年は猛暑らしい。
あの炭酸飲料が手放せぬ季節が来る前に、このふと湧いて出た疑問にどうしても答えを得たくなってしまったのだ。
実は炭酸飲料から炭酸を抜くことに関しては先行研究がある。鈴木さくらさんの「炭酸飲料の炭酸を抜いてから飲む」だ。鈴木さくらさんは研究の中で、「炭酸が苦手だけど炭酸が飲みたい人は、3日目の炭酸がベストである」(鈴木さくら 2020、最終文)と結論づけている。
今回はほどよい炭酸も残さない。全て抜く。全て抜いた上で清涼飲料水となった君たちと向き合いたい。
一本一本、キャップを開けて炭酸を抜いていく。
この写真は歴史的に貴重な一枚である。なぜなら炭酸飲料のキャップを開けっぱなしにしてほうっておく人間など存在しないためだ。
しかしこれでは炭酸を抜くには十分ではなかった。翌日確認したところまだまだ炭酸が抜けきっていなかったため、さらなる強硬手段に出ることにした。
振る。キャップを開けて炭酸を抜く。閉める。振る。当たり前だが、キャップを開ける際は中身が吹き出さないように気をつけなければならない。今回はいくら振っても中身が吹き出さなくなるまでこの工程を繰り返した。
そして再び冷蔵庫にしまい込んで数日放置した。キャップを開けてはしまわれ、取り出されたと思ったら振られてはしまわれ、この炭酸たちは何を思っているのだろう。
なんとか炭酸を抜き切ったところで、まずは炭酸界の帝王、コカ・コーラの炭酸抜きを飲んでみる。
コカ・コーラ、どっかいった。
すごく甘ったるい液体になるのかなと勝手に思っていたのだが、そこまで甘くはない。かと言って甘みが全くないわけではない。なんとなく甘い。なんとなく甘い液体だ。そう思っている内に口の中からいなくなってしまう。なんだこれは。
いわゆるガムなどの「コーラ味」になるというわけでもない。信じられないくらいのっぺりとした飲み物だ。
ひょっとして、炭酸飲料って炭酸がないといまいちなのか......?
コカ・コーラがこの有様だとすると、気になるのはコカ・コーラ ゼロの存在である。
私は炭酸好きとして常々コカ・コーラとコカ・コーラ ゼロは明確に味が違うと主張してきた(そしてコカ・コーラの方が好きだと主張してきた)。炭酸を抜いたとき、その違いはどうなるのか。同じようにのっぺりとした飲み物になってしまうのか。
コカ・コーラ ゼロ特有の後味がスッと消える感覚が残されている。これは炭酸抜きのコカ・コーラにはなかった風味だ。
甘みもコカ・コーラより薄くこざっぱりしており、よりコーラ風味の水といった趣が増している。しかし、炭酸抜きコカ・コーラの「なんだかよく分からない微妙に甘い液体」より潔い味わいなので、炭酸抜きの場合はコカ・コーラ ゼロの方が好きかもしれない。
意外な発見だ。コカ・コーラ ゼロは炭酸を抜いてもいただけます。
続いてはカルピスソーダ。カルピスソーダは名前の通り「カルピス+ソーダ」であり、炭酸を抜いてもカルピスとしておいしく味わえるのではないだろうか。期待したい。
カルピスだ!思い描いていたままのカルピスがここに爆誕した。
あの乳酸菌の甘みがそのまま残されており、このままカルピスとして販売しても遜色のない味である。先のコカ・コーラ兄弟で迷子になっていた私を「おかえり!」と迎えてくれる飲み物だ。ただいま、飲料水の街角に今帰ったよ。
これもカルピスの味だ。そりゃそうだ。この乳酸菌の甘み、甘みが......
いや、先ほどの炭酸抜きカルピスソーダと少し味が違う気がするぞ?
どちらもカルピス味であることには違いないのだが、本物のカルピスの方がより丸みのある舌触りだ。本当にわずかな違いなのだが、カルピスソーダの方は少し尖りがある気がする。どちらが良いとかではなく好みの範疇なのだが、なんだこれ?
よくよく成分を見てみると、カルピスソーダには炭酸に加え、甘味料が追加されていた。この違いが味の違いに直結しているのかは分からないが、ともかくカルピスソーダはカルピスに単に炭酸を足した飲み物ではなかったのだ。
ただどっちもおいしかった。今はそれで十分である。
それでは今度は炭酸水の炭酸抜きだ。カルピスソーダ同様炭酸水も「水+炭酸」の計算式が成り立つ気がするが、どうだろう。
水っぽいが、なんだろう。甘いとか、苦いとかではないが、なんだか変わった飲み心地の水である。
考えてみれば水にだって色々ある。硬水もあれば軟水もあり、それぞれで舌触りや味わいが微妙に異なる。コンビニで売られているミネラルウォーターだって種類ごとに味が微妙に違うだろう。
きっとこれも同様で、水は水なのだが「ペリエの元になっている水」になったのだ。そしてそれは飲んだことのない水の味であった。
うーん......。
おいしくなくはないが、炭酸入りの方がおすすめかもしれない。でも水だ。水にはなった。
カルピスソーダは炭酸が抜けてもほぼカルピスとして楽しむことができた。炭酸水も少し変わった味だったがまあ水だった。
元の飲み物がなんとなく透けて見えるものは比較的素直にいただけるのかもしれない。他のものも試してみよう。
C.C.レモンはすっぱくありつつもベースは甘めのレモンジュースとして残り続けていた。君、ひょっとしてレモネードとして昔販売されてた?というくらい自然なジュースっぷりである。
要するにおいしい。汗をかいた日にコンビニでこういう飲み物を買いたい時、あります。
一方キリンレモンはすっぱさや甘みといった味わいがなりをひそめ、さっぱりとしたレモン風味の水に着地した。
山の向こうから「デトックス」という言葉が聞こえてくる。スーパー銭湯の休憩室とかにあるとなんとなく嬉しくて、ついつい飲みすぎてしまうタイプの飲み物である。
甘さと生姜の辛さがちょうどいい。風邪を引いたときに生姜湯を飲んだりするが、それに砂糖を加えて冷やした飲み物である。炭酸抜きのキリンレモンに続き、意図せず健康飲料二連発になってしまった。
生姜湯よりも飲みやすいので、生姜湯が少し苦手だよという人はこれを飲むといいと思う。万病に効きます(うそです)。
最後に思い切って今まで飲んだことのない炭酸飲料を炭酸抜きで飲んでみた。
結論を言えばどちらもおいしかった。どちらもやや癖のある味であったが、そういうジュースだなと思えば素直に楽しめる味なのだ。
きっとこれに炭酸が入ったらよりすっきりしたおいしさになるんだろうな。いいな。これの炭酸入りを飲みたいな。
なんだか炭酸が恋しくなってきた。今日はこの辺にしておこう。
今回さまざまな炭酸飲料の炭酸を抜いて飲んでみたが、一つだけ挫折したものがある。炭酸水のウィルキンソンだ。
ウィルキンソンは最後まで炭酸を抜き切ることができなかったのだ。他の炭酸同様それなりに振ることで炭酸を抜き、それなりに放置し日数を経たのだが、飲んでみると口の中にぷちぷちとした炭酸の刺激が残ってしまったのだ。
なぜウィルキンソンの炭酸は抜け切らないのか。
もしご存じの方がいれば教えてください。何卒よろしくお願いいたします。
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