偵察気分で散歩する
単眼鏡を手に入れた。
倍率は7倍、双眼鏡と違って軽くて小さく、ポケットにころっと忍ばせておけるサイズ。
むぎこさんは展示されている絵画や工芸品をじっくり観察するのに使っているそうだ。
こういう小さくて便利なものほど、肝心なときに持ってくるのを忘れてしまう。
いざという時のために、しばらくカバンのポケットに入れっぱなしにしていたところ、ある使い方を思いついた。
単にズームアップして撮ったのとは、また一味違う写真だ。
丸く切り取られた風景はぼんやりと揺らいでいて、まるでわたしの知らない場所を、宇宙船かどこかから覗き見ているような気分を味わえるのだ。
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東京のビル群が古代遺跡ツアーに
これはいいぞと、早速単眼鏡を片手に散歩することにした。
東京駅からスタートして、有楽町や銀座方面へと歩く。目にするのはビル、ビル、ビル、ビルの群れだ。
とりわけ味わい深いのはビルの屋上だ。今までちっとも気づかなかったが、まるで失われた古代文明、どこかの世界の遺跡のようなのだ。
都会を散歩していると、あまりの情報量の多さにくらくらしてしまうこともしばしばある。そこであえて、単眼鏡でピンポイントにのぞいてみるというのがいい。埋もれて気がつかなかった景色が次々に見えてくる。