絵本、アニメの第一話がタマが帰ってくるストーリーだった
松井:
最初にタマは見つかりますとお伝えしましたが、それが1988年の絵本とビデオ作品の1話目のストーリーなんです。アニメもご覧になってみますか。
古賀:
ぜひお願いします!
松井:
ストーリーとしては、タマがタマのお母さんであるミーコによく似た猫を見かけ、その姿を追いかけていって、迷子になってしまうんです。

佐々木:
怪我をしたタマを見つけて保護していた男性が貼紙を見て、たけしくんの家までスクーターにのせて連れて行ってあげるという。
松井:
きゅうりの箱に入れてね。




松井:
このタマを拾って届けてくれる男性なんですが、部屋の中に猫を抱いた家族の古い写真が飾ってあるんです。猫がお好きなご家族がいらしたんでしょうね。
古賀:
なんと……。ストーリーが奥深いですね。
安藤:
めちゃくちゃに泣かせてくる。
松井:
物語の最後にたけしくんは、家の塀にタマが帰ってきたことを知らせる貼紙をだすんです。


古賀:
1話目ですでに「うちのタマ知りませんか?」「帰ってきました、みなさんありがとう」という世界観ができていたですね。
松井:
その後は、3丁目でタマや仲間たちが暮らす話が続くんです。

安藤:
エピソード0が、いなくなって、戻ってくる、そこまでなんだ。すごい。
松井:
古賀さんがさっき、「子どもなのにすでに懐かしい」とおっしゃってましたが、当時のアニメの制作スタッフにとっての子どものころ、30年代の街並みや生活が背景の表現として出てくるんですよね。

古賀:
ああっ、だから昭和としてリアルで切実なんだ。ハリボテの昭和じゃないんですね。
松井:
「ちょっと切なくて懐かしい」というのは、狙ったところもあるかもしれませんが、どちらかというと結果的にそうなった、ということなんじゃないかとも思います。
古賀:
天才だ……。
ネットで「トラウマ三部作」とよばれる回のある、90年代アニメ版
古賀:
それが88年制作のビデオ作品で、94年には地上波でまたアニメが放送されているんですよね。このシリーズには今でも語り継がれる、深いテーマがある作品が多いですよね。ネットでもことあるごとに話題です。

88年のアニメでは猫たちはしゃべらなかったが、このシリーズでは猫たちにも声優さんが声を当てしゃべっている
佐々木:
そうなんです。半年間の放送期間で全26話ありまして、前半は猫たちの日常が描かれたほのぼのしたストーリーが続きますが、後半に重い話が入ってきます。
飼い主さんが亡くなる思い出と子猫のいのちの行方がいきかう「まつりばやし」と、戦争で爆撃を受けてワンちゃんと一緒に亡くなってしまった子どもの幽霊がポチの体に乗り移る「さまよえる首輪」。もうひとつは飼い主が亡くなったことで深刻な問題が起こる「パラダイス・オブ・カニカン」。
松井:
ネットでは「トラウマ三部作」なんて呼ばれてますね。
古賀:
重い作品が登場したわけ、というのはなにかあるのでしょうか。
佐々木:
かつては夏になったら戦争の話は必ず教育の現場で取り上げられましたよね。みんなで映画の『火垂るの墓』を観たり。そういう教育的な意味合いがあったと思うんですよね。
松井:
いま社会問題になっているペットの問題にふれているのもそうですね。文化庁優秀映画部門でこども向けテレビ用映画部門の最優秀TVシリーズという賞もいただいているんです。
古賀:
ひとと暮らす猫がメインキャラクターだからこそ、テーマとしていのちに踏み込もうという気概があったんですね。
佐々木:
そこは確実に意識していたと思います。
