写真がフイルムだからか
写真がフイルムだと1枚のコストは高いし、フイルム1本で24枚しか撮れない。観光地でカメラの正面でポーズを決めているのはそのせいかもしれない。一回勝負の緊張感。
しかし今回の昭和写真は顔に力を入れて撮ってみたのだが、本当のむかしの写真のように大人っぽくならない。同い年ぐらいだと思うのだけど。

最近とった写真がものすごく父親に似ていた。
若い頃の父親の写真にそっくりだった。服をむかし風にして写真が色あせたらどっちがいまの写真か分からないかもしれない。
どっちが親でどっちが子供か。どっちが21世紀でどっちが20世紀か。ちょっとした細工で写真が一気に昭和の雰囲気になるのは興味深い。
むかしの父親コスプレを通じて昭和の写真をとってきました。けっこうどこの家のお父さんにも当てはまる雰囲気だと思いますよ。
注) 茶色の文字で書かれたキャプションは創作です。
※2007年9月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載しました。
当サイトにもときどき古い写真が載っている。古くなったカラー写真の特徴として以下の点があげられると思う。
・赤が鈍い色に
・全体に青かったり黄色かったり
・フチ+日付がある
・ざらついている
全体に彩度が低い。これらを参考に画像加工ソフトで写真を加工してみた。
けっこう昔っぽい写真になったと思う。あとはポーズと服装だ。
むかしの人はみなポーズを決めているのだ。
ポケットに手を突っ込んだり腰に手を当てたり。ピースではなく、全身でポーズ。石原裕次郎の影響だろうか。カメラに正面から向き合っていてカジュアルな表情を撮ろうなんて意識はゼロだ。
今回、記事を書くにあたって僕の周りの30代に聞いてみたがどこの家も両親のむかしの写真はかっこつけていると言っていた。よかった、うちの両親だけじゃなくて。
ポーズを変えてみよう。
ついでに服装も変えた。
むかしの父親風の服を古着屋で買ってきたのだ。細くてぴったりしてる。ズボンはすそが広がっていてかっこいい。左のいまの僕がはいているような破れたジーンズなんてはくわけがない。ましてやニットキャップなんて、である。
白シャツのほか、茶色でコーディネートした服も用意した。秋の父である。
肩にジャケットをかけた堂々としたポーズ。これだけでじゅうぶん昭和な雰囲気だが、写真を加工すると………
ポケットにウイスキーを忍ばせてそうな写真になった。
髪型もぴっちり。きっちりしていることがかっこいいのだ。そういえば父は僕の髪が長いと「なんだその病人みたいな頭は!」と言っていた。
当時を意識してタレ目サングラスをかけたところ、むかしの人というかちょっと変態っぽくなってしまったのが気になるところだ。
タレサンは浜崎あゆみさんも愛用して流行りのアイテムになっているはずなのだが僕がかけるとアブノーマルな匂いがしてくる。
ファッションもエッジが立ちすぎると30年後には変態っぽくなるということだろうか。
では、30年前にタイムスリップして写真を撮ってこよう。
ここで30年戻る
古いファッションでポーズを決めればお台場だろうがどこでも昭和である。お台場には派手な色のオブジェも大阪万博に見えるし、車のショールームはモーターショーだ。
だんだん興じてきてノリノリでポーズをとっていたら「デイリーポータルZのひとですよね」と声をかけられた。サイトを見てくれているそうだ。ありがたい。
「林、ふだんはへんな服」って思ってる人がひとり増えた。
写真を撮っていたらたまたま走り回っている子どもが写っていた。なんの変哲もないいまの子どもなのだが、昭和が横に現れるとその子も昭和の子どもになった。おそるべし昭和の引力。
コーラやタバコもそれだけならなんてこともないアイテムだが、この雰囲気だと昭和っぽさを引き立たせている。
僕は全く煙草が吸えないのでこの写真のためにはじめて煙草をくわえた。30年前にも煙草を吸わない大人はいたのだろうか。
写真がフイルムだと1枚のコストは高いし、フイルム1本で24枚しか撮れない。観光地でカメラの正面でポーズを決めているのはそのせいかもしれない。一回勝負の緊張感。
しかし今回の昭和写真は顔に力を入れて撮ってみたのだが、本当のむかしの写真のように大人っぽくならない。同い年ぐらいだと思うのだけど。
2020年から追記
この記事を書いたのは2007年、平成19年でした。途中の「2007年の僕」の写真のニットキャップとジーンズがなんとも平成っぽい。
昭和を懐かしがっている平成の人もまた懐かしいという複雑な記事になってしまいました。
いまなら「平成の写真を撮る」って記事ができるかもしれないですね。プリクラかな。
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