特集 2019年2月12日

あの「たべられません」っぽいパッケージで不安を与える

「たべられません」の中に「たべられます」を混入し、それを人に食べさせる実験です

お菓子の袋なんかによく入ってる「たべられません」の小袋。当然食べられないものとして、みんなの脳にインプットされまくってるはずだ。

あれと同じデザインの「たべられます」の小袋を作って、食べ物を仕込んでみたい。

島根県生まれ。毛糸を自在に操れる人になりたい。地元に戻ったり上京したりを繰り返してるため、一体どこにいるのか分からないと言われることが多い。プログラマーっぽい仕事が本業。(動画インタビュー

前の記事:大事なところを抜くオーダー~キャラメルマキアートのコーヒー抜き

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小袋のデザインを変えてみた

もしも納豆についてた「たれ」や「からし」がこんなパッケージだったらどうだろう。

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開けたら出てくる「たれ」と「からし」

買ってこれが出てきたら、納豆にかけるものとは思わず多分捨てる。

もしも赤飯の「ごま塩」がこのパッケージだったら……

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ほんと大丈夫なのかこの黒いのや白いの

ケミカルな印象だろう、塩とゴマなのに。

袋には「たべられます」と書いてあるので問題ないはずだが、どちらもパッと見「食べるな」と言われてるように見える。

「食べられます」を作ってみよう

この「たべられます」小袋を作る流れをざっと説明しよう。まず見本にするための「食べられません」をまとめ買いした。

お菓子に気軽に入ってるぐらいだし、多分安いんだろうと思ってはいたが、20袋320円だった。1袋16円ぐらいなもんだったのか。

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200袋のまとめ買いだと1600円ぐらいだったので約半額だが、今回そんなには要らない

この小袋を参考にしつつ、同じようなデザインを描いてみた。元は「DO NOT EAT」だった部分は「YOU CAN EAT」とかでいいか。

「Oxygen Absorber」は日本語にすると「脱酸素剤」……ってことは、ここは内容物の英語訳か。「Safe and delicious food」にでもしとこう。

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文字数の関係で「たべられますよ」にした

これをフィルムのシール用紙にプリントする。A4用紙にプリントしたらこのサイズ感。ロゴ自体はかなり小さい。

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フィルムのシール用紙にプリントする

このシールを食べ物が入ってる未開封の小袋に貼る。そして、本物の「たべられません」に紛れさせてみると……

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未開封の小袋。この上からシールを貼る
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そこそこ紛れるが、もうちょっと色や素材感を合わせればよかったかなとも思う

この流れを知っていれば抵抗がないかもしれないが、これをなにも知らない人に渡したらどうなるだろう。

お土産として渡したい

作った小袋を、普段お世話になってる当サイトの編集部のみなさんにお土産として持って行ってみた。

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いつもお世話になってます ザザザ……
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……リアクションが、ない…………!!

し、しまった。編集部の藤原さん、リアクションを求めちゃいけないタイプの人だった。

人選改め、気を取り直して……

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橋田さん、お土産ですーー
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おっ、不安がってくれてる?

疑い深く心配性の橋田さんは、「食べられる」と書いてあっても、最後に「ほんとは乾燥剤でしたァァァ!!」とネタばらしがあるような気がしてならないらしい。かなり警戒している。

開封して中を見てもらった。

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よりによって色がケミカル

「色が危険な感じがする!」と一同抵抗を感じるようだ。

この中身は何かというと、パチパチ弾けるキャンディ(昔売られてた「ドンパッチ」的なやつ)だ。

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みんなで試食
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パッケージはアレですけど、開けてみると匂いが分かりやすく甘いから安心感ありません?
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安心はするけど、バチバチするのはだいぶやばく感じない?
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食べられないとしたらこんなにバチバチする必要ないじゃないですか。だから「これは食べ物だな」って感じが逆にしますね。
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(食べつつ)まあ……普通ですね。
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普通……

ここでもう一つ用意してた別のお土産を出してみる。今までの袋よりもちょっと大きい。

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こないだ北海道に行ったお土産なんですけど
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あ、この大きさなら不安を感じない!

袋が大きい場合、不安感はなくなったようだ。こんなに大きい「たべられません」は存在しないから、まったく別物に感じるらしい。

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大きさ的に保冷剤っぽさあるけど、こんな保冷剤存在しないし、「作り物っぽさ」を強く感じるらしい

そして開封したら明らかにお菓子なので、これなら不安感もゼロ。

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どっからどう見ても食べ物という安心感……!!
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この見た目で食べられないって言われたら逆に怒りますよね。
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これはもう……食べるよね。
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なんの抵抗もないですね。
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安心感のかたまりを疑いもなく食す
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見た目で判断する難しさ

ここで袋の中身を出してみよう。食べられない「脱酸素剤」、納豆に入ってた「からし」、「パチパチキャンディ」を開封し、見比べてみた。

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「からし」の見た目に一番ギョッとする

ここにいる全員が脱酸素剤を開けてみるのは初めてだったが……

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えっ、黒なんだ! 茶色いつぶつぶも入ってる。これが食べ物のすごい近くに入ってんだねー。
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この流れで、これ(脱酸素剤)食べられるって言われたら、コショウかなにかだと思って食べますよ……。
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もっとラムネみたいな白くて細かい粒だと思ってました。イメージと違う。
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牛丼の横とかにあったらかけちゃいそうですよね。
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香辛料っぽいですね。
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疑いを持たず食べられそうランキングトップに躍り出た「脱酸素剤」

「パチパチキャンディ」の色もちょっと警戒してしまうという話になってたが、「からし」の色にもみんなギョッとした。

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「からし」って知ってるから大丈夫ですけど、有害っぽさありますよね。
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あ、知らせず出すべきだった……。
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これ使いたくないですね。
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電池の液漏れっぽさありますね。
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あーー、そう言われると触りたくない。原色に近いものほど、妙なヤバさ感じません? モノトーンのほうが安心……というか。
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最も拒否反応があった「からし」

この中で一番普通に食べられてる自然な食品のはずの「からし」にみんな抵抗感を感じてる。

確かになにも知らない状態で「どれ食べる?」と聞かれたら、迷わず「脱酸素剤」だろう。

不安感をあおる見た目って?

袋の見た目は、やっぱり本物に近い方が不安感が増す。大きすぎても小さすぎても、嘘っぽさがあるので、ほどほどが良いようだ。

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大きさも形も本物に近いほうが、それっぽく見える

中身の見た目については、カラフルだと危険に見えるという意見もあったが、単色でも中身を知らされてなかったら怖いもんは怖い。

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実際は塩だが、知らなかったら触りたくもない

とにかく「得体の知れなさ」=「不安感」ということなんだろう。

……ということは、不安感を与える「食べられます」を作りたい場合、こうすればいい。

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「(袋が)本物と似てる」「(中身が)得体が知れない」この条件を満たしていれば、そこそこびびらせることができるのだ。

今後似たようなものを作りたいみなさんは、この条件を満たすようにしてみてください。


ところでみなさん、ヨーグルトに砂糖が付いてこなくなってたのを知ってただろうか。

糖の袋にシールを貼ろうと購入したら付いてなくて、なぜ……?? と思ってたら、5年も前に添付が終了になってたと初めて知った……。そんなにも長期間気づかなかったくせに、時間差でちょっとショックを受けた。

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蓋を開けたとき、何も入ってなかった衝撃たるや(今更)
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