特集 2021年8月5日

本棚にある本の出版社をめぐる

東京には出版社がいっぱいあるということをふと思い出した。本を読んでも、その出版社がどこにどんなふうにあるのか、ほとんど知らない。いろいろ巡ってみようと思った。

1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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東京には自分が読んでいる本の出版社がある

東京に来たばかりの頃、有名な会社を見かけるたびに「おお、こんなところに・・」という気持ちになっていた。東京には大きな会社の本社が集中しているから、そういうことはよくある。

先日、近所を散歩していてそれを思い出す出来事があった。ふだんは通らない脇道を歩いていたときのこと。

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目の前の看板に「日本評論社」と書いてある。脇をみるとこんな建物だった。

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どっかで聞いたことあるな、なんだっけ、と調べてみたところ、「数学セミナー」という雑誌で有名な出版社だと分かった。

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「数学セミナー」、通称「数セミ」

書店の理系の雑誌の棚でよく見かける。「エレガントな解答をもとむ」という読者投稿コーナーが唯一かろうじて意味の分かる部分で、他の部分はぼくにはよく分からないのだが、その分からなさになんとなく憧れを抱いていた。

そうか、あの数セミの出版社が、近所の、しかもあまり目立たない一角にあったのか・・と思った。

出版社をめぐる

東京には自分の親しんだ本の出版社がおそらくたいていはあるだろう。でも、それがどこにどんなふうに佇んでいるかは、ほとんど知らない。

じゃあ巡ってみよう。ぜんぶは絶対無理だから、本棚にある本から巡ってみようじゃないかと思ったのだ。お遍路のように。

それによってどんなご利益があるかというと、もちろんない。「おお、こんなところに・・」が続くだけだろう。それがしたい。

先に旅の全貌を示しておく。数がそこそこあるのでさくさく回ります。

神保町

まずは神保町からめぐっていく。

小学館

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最初は小学館にしよう。第一番札所だ。

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小学館は神保町駅のすぐそばにある。大きいなあ。

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このオーバーハングした壁をよじ登ったものだけが、マンガの原稿を持ち込みできるとの噂。

集英社

週刊少年ジャンプや「りぼん」で有名な集英社は小学館のすぐ隣にあった。

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こんな巨大な出版社どうしが真隣にあるなんてどういうこと?と思ったら、もともと小学館の子会社だったらしい。まじか。

有斐閣

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法学系に強い有斐閣はまたそのすぐ近くだ。

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なるほどこんなビルだったのか。いい感じ。イメージにあってる。

岩波書店

広辞苑の岩波書店。

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集英社の裏だ。雰囲気のあるビル。

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帝国書院

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地図帳といえば帝国書院だ。なにせ表紙に書いてあるので自然と刷り込まれる。

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帝国書院は一ツ橋のあたり。でかい。立派。調べてみると大正初期の創業。10年後には地図帳で業界一となったそうだ。そんなに古くからあるのか。

オーム社

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理工書で有名なオーム社。「マンガでわかるシリーズ」の充実ぶりもすごい。

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本社は竹橋だった。建物はイメージ通り重厚。調べてみると創業は大正初期、ビルの竣工は1978年だそうだ。

以前、60年代のビルは直線的でシュッとしていて、70年代は曲線的で遊びがある、というざっくりしたイメージを聞いたことがある。そこへ行くとここは80年代間近であっても直線的でうわついてない。

数研出版

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高校時代の数学の問題集といえば数研出版の「赤チャート」「青チャート」というシリーズだった。といいつつ写真は家にあった別の本。

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真ん中の建物です

数研出版は神保町にあった。最寄りは小川町駅だ。

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一階はスポーツ用品店にしか見えない。たしかにここらへんこういうお店多いが、ここにあの数研出版があるのか。イメージと違って驚く。

つづいて護国寺に飛ぶ。

講談社

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進撃の巨人の大きな垂れ幕がかかる講談社。

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そして会社の前には自社の本のディスプレイがある。出版社の前ってこうなってるよなーというイメージだったが、神保町ではそうでもなかった。やる派とやらない派があるのか。

光文社

すぐ近くには光文社があった。女性自身とかJJとかの出版社だ。

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シュッとしてる。

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ここも本のディスプレイがあった。ここは講談社の傘下だそうで、ディスプレイ置くべしの文化なのかもしれない。パンダ自身が気になる。

福音館書店

だいぶ歩いて巣鴨の福音館書店へ。

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かっこいい

残念ながら工事中なのでこの写真だと外観はよく分からない。まあこの姿がレアだと思っておきたい。

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福音館書店にもディスプレイがある。クリハラタカシさんの本(ぱたぱたするするがしーん)が飾られていたのを以前撮っておいたやつなのでちょっと古い。

CQ出版

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そして近くには「トランジスタ技術」のCQ出版があった。巣鴨の住宅街。

ラムダノート

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ラムダノートは2015年創業の、コンピューター系の出版社だ。少人数でやっているようで、どんな出版社なのかなと気になっていた。日暮里の駅前だったのか。

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こんな本を作っている。

改めて調べてみると、創業者はもともとオーム社で「マスタリングTCP/IP」(とても有名な本)などを編集した方のようだ。なるほど。

ここから南へ、最終的に五反田まで下っていく。お遍路みたいになってきた。

 朝倉書店

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農学から医学まで、幅広く理工系の本を出版している朝倉書店。

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朝倉書店は飯田橋の首都高の脇にあった。でかい。こんな大出版社だったのか。ビルの大きさで判断するのもおかしいが。

音楽之友社

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神楽坂を通るたびに、音楽之友社があるなと思っていた。音楽の教科書で名前をずっと見ていたから。

配られるはしから全部読んでしまう教科書というのがあったと思う。ぼくは国語と音楽がそうだった。

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新潮社

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神楽坂の出版社といえば新潮社だと思う。一度だけ中に入ったことがある。立派な本棚に本がずらっと並んだ壮観な部屋があって、出版社とはすごいところだと思った。

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ベレ出版

少し南へ行くとベレ出版がある。

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最近だと地理系の本に力を入れている印象。

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ここもディスプレイがあった。出版社の前にこれがあるとやっぱりうれしいな。見ちゃう。

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KADOKAWA

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飯田橋の先の富士見というところまで行くとKADOKAWAがある。写真のこの建物だけじゃなくて、大学みたいにこの周りにいくつも関連のビルがある。

坂の上だ。昔は富士山も見えただろうし、東京湾も見えただろうなと関係ないことを思う。

技術評論社

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コンピュータ系に強い出版社。

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こういう本を出している。市ヶ谷の駅前だったのか。

イカロス出版

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この真ん中の建物です

乗り物系に強いところ。

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「〇〇をゆく」シリーズが有名。寄稿したりして編集の方にもお世話になった。

オライリー・ジャパン

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真ん中のシュッとした建物

市ヶ谷、防衛省前のオライリー・ジャパンへ。

書店のコンピューター系の置き場に行くと、専用の棚にずらっと並んでいたりするオライリーの本。表紙には動物が描かれているので、タイトルの代わりに動物の名前で呼ばれたりする(例:ラクダ本)。

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こういう表紙

なんというか、オライリーはオライリーの棚にあるものであって、現実世界にそのオフィスがあるというのが、当たり前なのに不思議な感じがした。

彰国社

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曙橋の彰国社へ。建築系に強いところ。

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超合法建築図鑑

曙橋はふだんあんまり行かない場所だけど、東京はどこにでも出版社があるんだなあと思う。

文藝春秋

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麹町の文藝春秋。有名な出版社なので寄ってみたが、ガードが硬い。向こうに入り口が見えてるけれど、近づくことはできなさそうだ。いつか入りたい。

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サイエンス社

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いっきに千駄ヶ谷へ。サイエンス社は理工系の歴史ある出版社で、建物にも風格がある。

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こういう本を出している。

エクスナレッジ

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どんどん歩いて乃木坂へ。エクスナレッジは建築系に強いところ。

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ほかに「建築デザインの解剖図鑑」など。建物はイメージよりもかわいい感じだった。

実業之日本社

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実業之日本社はここ数年本当にお世話になっているところ。

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知人が書いたドローン空撮の本が素晴らしく面白かった。

東京出版

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「大学への数学」、通称「大数」で知られる東京出版。じつは「中学への数学」という雑誌も出している。調べてみると所在地は広尾だった。

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東京出版

広尾の閑静な住宅街になじむ感じの建物だ。こんなところにあったのか。

大学時代、アルバイトをしていた塾で、赤本のない大学の入試問題集の薄い本を作ったことがあった。そのための解答をぼくを含むアルバイト講師たちで作ったのだが、その組版と印刷をなんと東京出版に依頼したのだ。

原稿を送るとしばらくしてゲラが返ってきた。見ると、自分がいつもの調子で書いた式や図が、「大学への数学」で見慣れた美しいフォーマットで刷られていて、なぜだか申し訳ない気持ちになった。

徳間書店

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目黒までやってきた。徳間書店は目黒駅の駅ビルに入っていた。ですよねーという立地。

学研

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そして五反田。学研はこんなビルだった。さすがに立派。

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足元には保育園。すごいなー。いままでで一番高層な自社ビルなのではないか。

電波新聞社

五反田には電波新聞社がある。

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「マイコン BASIC Magazine」という雑誌。パソコンや読者投稿ゲームなどが掲載された月刊誌で、「ベーマガ」と呼ばれていた。子どもの頃は毎月読んでいた。

ベーマガでは、パソコンやプログラムの仕組みをマンガ形式で紹介することがあった。登場人物は編集部のスタッフやライターで、出版社である電波新聞社の外観とともに描かれることが多かった。

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電波新聞社

なので、初めて五反田で電波新聞社を見たときはひとしきり興奮した。これがあの・・、と思いながら遠巻きにしたり近づいたりした。

確か、中学生のころに電車を乗り継いで五反田までわざわざ来て、外観を一人で眺めて興奮して帰ったんだと思う。

というようなことを思い出した。


立地や外観がどんなふうでもおもしろい

ふだん読んでいる本の出版社は心理的に大きな存在なので、建物が意外にこぢんまりしていたりするとそれはそれで面白い。

もちろん、想像どおり聳え立っていたとしても、やはりな・・という感じになっていい。

そういえば竹書房っていまどんな建物なんだろうか。行けばよかった。

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