ひとり葬式の気分
そんなこんなで無事注文を完了し、30分ほどでお寿司が届いた。
桶にかかったラップを取る瞬間がなんともなつかしい。こんな大きくて伸縮性のあるラップ、どこで買えるんだ。
これを全部食べていいのだ。大人って最高だ。
筆者の中で桶のお寿司を食べるチャンス=葬式か法事なので2割くらい厳かな雰囲気も入り混じる。喪服もっていないけど平気かな。案ずることはない。自分しかいない葬式なので、だれも変な目で見てくることはないのだ。わたしが死んだら各自バヤリースを飲みながら桶寿司を食べるという儀式を以って式に変えてもらおうかな。
役者は揃った。あとは心ゆくまでひとりじめ寿司を堪能するのみだ。
当たり前においしい。カッパとか鉄火とか、子供の頃はなぜかお母さんが好んで食べるありがたみのないもの、として認識していた。でも今は違う。このあっさりした赤身と海苔がおいしいのだ。
全部おいしい。いい寿司をたくさん食べて舌が肥えているわけでも何でもないが、家にいるだけでこんなにちゃんとしたおいしいお寿司を届けてもらえるってすごいことだ。銀のさらありがとう。
ネタを一周したところで「あ、これはまずいな」と思った。大人になったのにいまだに自分の食べきれる量の検討がつかない。手を付ける前の寿司をみて完全に食べきれるものだとばかり考えていた。大誤算だ。
みんなで食べるお寿司だったら、桶に余っているお寿司を見てときめいていたのに、今はもうしんどいという気持ちが勝っている。
時間はまたたっぷりあるということで休憩をすることにした。